医療保険は国民が健康的な生活を送るための非常に重要な社会的インフラです。日本では税金のように少なくない金額が徴収されますが、そのおかげで国民皆保険制度が成立し、高度な医療を安価に受けられるシステムが整っています。
対して韓国です。
低福祉を覆す「ムン・ジェインケア」
Money1でも何度かご紹介しているとおり、韓国は「低負担・低福祉」の国です。
保険料の徴収が小さくて済む(低負担)代わりに、保健が適用される範囲を絞り(低福祉)、提供する医療保険のバランスをとってきました。
これを果敢(無謀)にも崩したのが文在寅大統領です。
いわゆる「文在寅(ムン・ジェイン)ケア」を導入しました。
例えば、それまで保険適用外だった「MRI検査」「入院費用」などに保険適用を拡大しました。つまり、国庫からの支出を増やしたのです。
「文在寅ケア」は国民の負担を減らそうという意図だったでしょうが、これは「低負担」のままで「高福祉」を目指したものです。
当たり前の話ですが、国庫負担が急増しました。
医療保険の支出が「160兆」に膨らむぞ!
現在、韓国では国政監査シーズンですが、医療保険についての調査結果が出ています。
2017年: 55兆5,000億ウォン
2021年: 79兆5,000億ウォン
2030年:160兆5,000億ウォン
文大統領が就任した2017年には、医療保険関連の支出は「55兆5,000億ウォン」(約5.4兆円)だったのですが、2021年には「79兆5,000億ウォン」(約7.7兆円)になりました。
これが2030年には160兆5,000億ウォン(約15.6兆円)に膨らむと予測されているのです。2030年の急拡大の理由は、高齢化が進む韓国の人口動態もありますが、2018年07月に導入された「ムン・ジェインケア」が一役買っています。
健康保険基金の積立金が間もなく枯渇する
その証拠に、健康保険基金の財政収支は、2011~2017年と黒字で回っていたのに、2018年に赤字に転落。
2018年:-1,778億ウォン(約-172億円)
2019年:-2兆8,243億ウォン(約2,740億円)
2020年:-3,531億ウォン(約-343億円)
となっており、2018~2020年は赤字が続いているのです。
この影響は大きなもので、健康保険基金の積立金が減少しています。
2017年末:20兆7,733億ウォン(約2.0兆円)
2020年末:17兆4,181億ウォン(約1.7兆円)
上掲のとおり、4年間で3兆ウォン以上がなくなりました。ムン・ジェインケアのおかげで減少速度は上がっており、早ければ2024年には枯渇するかも――と見られるのです。
これに対抗するには、健康保険料率を上げるしかありません。健康保険加入者を増加させてもいいのですが、韓国は人口減少フェーズに入っていますので、料率を上げずに済ませるのは不可能でしょう。
お金をじゃぶじゃぶ使って、財源も考えず高福祉に舵を切った結果がこれです。文大統領の手腕は見事です。
(吉田ハンチング@dcp)