2021年12月22日、韓国『全国経済人連合会』が興味深いリポートを公表しました。
Money1では何度もご紹介していますが『全国経済人連合会』はとても有益なリポートを出してくれるシンクタンクですが、本当にお気の毒なことに、現在の文在寅政権はその内容を政策に反映する素振りも見せません。現政権は大企業を目の敵にしているからです。
それはともかく、このリポートは「中国に進出した韓国企業が、10年前と比較して事業環境をどのように感じているのか」を調査した結果です。
『KOTRA』(韓国貿易投資振興公社)のデータベースを基に中国進出企業(金融業を除く)512社に調査しています(131社から回答:回答率25.6%)。
中国の事業環境は悪化した「85.5%」
まず、韓国企業が中国の投資環境が10年間でどのように変化したのかについての回答です。
10年前と比較して投資環境は?
大きく悪化した:22.1%
悪化した:63.4%
改善した:6.9%
「大きく悪化した」と「悪化した」を足すと「85.5%」になります。
次に悪化した理由についての回答です。
投資環境が悪化した理由は?
中国政府リスク:38.1%
国内外の企業間差別:20.5%
米中貿易紛争の深化:18.2%
環境規制の強化:15.2%
中国内の生産コストの上昇:8.0%
中国では法律の上に中国共産党があり、思うようにされてしまいます。習近平総書記が「共同富裕」などと言い出していますし、たとえ中国でもうけても利益が吸い上げられる可能性があります。進出しても利益を持ち出すことができません。ようやく世界が中国の政治リスクに気づいたようで、韓国企業が「政府リスク」を第1位に挙げるのも当然でしょう。
興味深いのは、中国に進出した韓国企業の「81.7%」が中国企業と比較して差別的扱いを受けていると回答している点です。
どのような点で差別的扱いを受けているかというと、
許認可の手続き:49.6%
消防・安全点検など各種営業規制:21.5%
環境規制:14.0%
税制・金融支援:12.1%
となっています。もし、本当に韓国企業と中国内企業との間でこのような待遇に差があるのだとすれば、これは『WTO』(World Trade Organizationの略:世界貿易機関)に提訴すべきです。WTO加盟国はこのような自国企業と外国企業に待遇面での差を設けることを許していないからです。
中国も『WTO』に加盟していますので、韓国政府は自国企業を保護するために中国に対して強くでるべきでしょう。
もちろん「できれば」ですが。また、中国は国際機関に加盟する際にした役割を一切守らない国ですから、韓国が自国企業の保護を要求しても鼻で笑って終わりかもしれません。
中国から逃げられない韓国
というわけで、韓国企業も中国に投資するリスクを感じてはいるようです。しかし……です。
行かなきゃいいのに・早く撤退すればいいのに――と言うのは簡単ですが、韓国にとって中国は最大のお得意様。引くに引けない「どこまで続くぬかるみぞ」みたいなことになっているのです。おまけに大統領が中国におもねっていますので、企業としてはどうにもなりません。
もう何度だっていいますが、『SKハイニックス』の無錫にあるファウンドリー(よせばいいのにDRAMを製造している)など中国にカタに取られたようなものです。
(吉田ハンチング@dcp)