韓国「光州事件」のドキュメンタリー映画『キム君』。彼は誰だったのか、どこへ行ってしまったのか

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ドキュメンタリー映画をご紹介します。『キム君』という作品です。


PHOTO(C)『キム君』

1980年05月18日、韓国の光州市で全斗煥(チョン・ドファン)独裁政権を批判する大規模なデモが起きました。制圧しようと投入された韓国軍との間で衝突が発生。韓国軍が発砲し、市民に多数の死者が出ました。

韓国で「5.18」と呼ばれる光州事件です。

光州事件は、今でも韓国の皆さんのトラウマとなっています。一方で、独裁政権に対して市民が勇敢に立ち向かった記憶でもあるのです。

この光州事件に対して「市民の蜂起ではなく北朝鮮が指導して起こしたものである」という陰謀論があります。

池萬元(チ・マンウォン)という元陸軍大佐は「北朝鮮の人間が光州に入り、暴動事件を起こしたのだ」と主張しました。

その証拠として、光州事件の際に撮影された写真と北朝鮮で撮影された写真を比較して顔を識別。

上掲の写真は、光州事件の際に多くの人に目撃された「市民軍の青年」です。軍用トラックに乗って武器を携帯した姿が印象的です。

この青年を池萬元さんは「第1光殊」(北朝鮮からやってきた人間の第1号という意味)と名付け、彼は後に北朝鮮に戻って要職に就いたと主張。

他にも「第○光殊」と呼ぶ人間を次々と特定したとし、光州事件は約600人の北朝鮮の人間が関与、主導した事件であるとしたのです。

彼は誰だったのか? どこへ行ってしまったのか?

このドキュメンタリー映画は、池萬元さんが「第1光殊」とした人物の正体を5年間に渡って追跡した作品です。


PHOTO(C)『キム君』/スクリーンショット

本作品では、光州事件に参加したかつての市民を取材し、いったいこの人物は誰なのかを丹念に追いかけています。

その中で、池萬元さんが「第○光殊」と呼んだ人物が次々と「北朝鮮から来た人間ではなかった」ことが明らかになっていきます。

彼らは今も韓国の市民であり、「軍が市民を殺害するに至り、我慢できなくなって立ち上がったのだ」と語るのです。


PHOTO(C)『キム君』/スクリーンショット

しかし、池萬元さんが「光殊1号」と名付けた彼は、探されたにもかかわらず「35年間名乗りでることはなかった」のです。

では、彼はいったい誰で、どこへ行ってしまったのでしょうか。

淡々と証言者にインタビューを行い、静かに進行する映画ですが、事実を追う迫力に満ちた作品です。2022年07月25日までですが『JAIHO』で配信されています。

以下は予告編です。この予告編だけでも作品が持つ力をひしひしと感じることができます。

陰謀論で全てが説明できるような気になったとしても、安易に信じたり、それに加担したりしてはいけないことを私たちに教えてくれる非常に優れた作品です。

一見をお薦めします。

⇒参照:『JAIHO』

(吉田ハンチング@dcp)

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