理念重視で現実を見ない韓国のエネルギー政策
韓国のエネルギーインフラ政策は、何度もご紹介するとおり支離滅裂です。
文在寅大統領の宣言した「2050カーボンニュートラル」「脱原発」を達成するために、実現不可能なロードマップを作り、コスト計算もせず「これは我々が必ず行かなければならない道」などと理念のみを語ることに終始しています。
しかも、「COP26」において、先に文大統領は炭素のNDC(Nationally Determined Contributionsの略:国別削減目標)を上方修正しました。「2030年には2018年比で炭素の排出量を40%以上削減する」と言ってしまったのです。
先にご紹介したとおり、韓国は太陽光発電・風力発電施設を乱造していますが、それらの全てを送電網に接続することができていません。変電所、送電設備の増設が全く追いついていないのです。
太陽光発電施設の約3割は送電網に接続されておらず、ただ発電しているだけという世にもあほらしい事態となっています。この間にも発電施設はただただ劣化していくのです。
で、さすがにこの状況を座視しているわけにはいかず、韓国政府は大規模な送電網のインフラ投資・整備計画を公表しました。
「電力網の整備が急務である」「78兆突っ込む!」
2021年12月29日、産業通商資源部が「安定した電力系統運営のための『電力系統革新案』発表」というプレスリリースを出しました(以下)。
注目すべきは、プレスリリース内の以下の指摘です。
(前略)
この日の懇談会でパク・ギヨン次官は「2030年のNDCおよび2050炭素中立実現の過程で太陽光、風力など新再生エネルギー発電施設は、さらに急速に拡大する見通し」だが、「わが国の電力系統は今後拡大される再生エネルギーを受け入れるには多くの挑戦課題に直面」していると述べ、特に送電網・変電所の建設が遅れている状況であり、それを何よりも緊急に解決する措置をとるべきだと強調しました。
(後略)
「いや、だからぁ」という話です。そんなことは2020年の初頭から言われていたことです。今になって「送電網の整備が焦眉の急」みたいな話をしています。
『ダウンタウン』の浜田さんなら「オレはずっとそれを言うてるやん。最初から言うてたやん」と怒るでしょう。
で、投入するお金は以下です。
(前略)
ㅇ現在策定されている電力網計画である第9次長期送‧変電設備計画(‘21.9月)にNDC上方修正を反映した「電力網補強ロードマップ」を次期電力需給基本計画樹立前に先制的に作成し、積極的に反映する。(先電力網後発電)(中略)
2030年までに計画された送電設備投資(23.4兆ウォン)および配電設備投資(24.1兆ウォン)にNDC上方修正分を勘案した追加必要投資の約30兆ウォンを暫定推算。
(後略)
上記のとおり、文大統領が炭素削減量を上方修正したため、余計に30兆ウォンかかることになりました。
配電設備投資:24.1兆ウォン(約2.3兆円)
NDC上方修正分の追加費用:約30兆ウォン(約2.9兆円)
小計:77.5兆ウォン(約7.5兆円)
『韓国電力公社』が追加出費を負担し負債が拡大する!
このお金は誰が出すのでしょうか。
『韓国電力公社』です。
それまでは「23.4兆ウォン + 24.1兆ウォン」の出費だったのですが、「さらに30兆ウォン積め」という話になったのです。
出費は「63.2%増し」です。無茶苦茶という他ありません。
何度かご紹介しておりますが、『韓国電力公社』は赤字企業です。石油・石炭などの資源価格の高騰を電気料金に反映させることを政府が許さないからです。
2021年第3四半期の結果を見ると以下のようになっています。
2021年第3四半期
総売上:45.6兆ウォン
営業利益:-1.1兆ウォン
当期純利益:-1.6兆ウォン⇒データ引用元:『韓国金融監督院DART』公式サイト
文大統領のNDC上方修正によって、『韓国電力公社』の負債はさらに増えるでしょう。公社なのでその赤字は政府が負担します。つまり、国民の血税によって賄(まかな)われるのです。
いかがでしょうか。韓国のエネルギーインフラ政策にまた支離滅裂な1ページが加わりました。
(吉田ハンチング@dcp)