韓国の文在寅政権も末期であるため、あちこちで「この5年間の総括」が行われています。韓国メディア『韓国経済』が「文政権の脱原発のおかげで……」という記事を出しています。
合理的なエネルギー政策を追究する教授の皆さんとは?
2022年02月07日、『エネルギー政策合理化を追求する教授協議会』という団体が「エネルギー転換政策がもたらした『韓国電力』の危機と電気料金引き上げの圧迫」というテーマで討論会を開きました。
この『エネルギー政策合理化を追求する教授協議会』は、2018年03月23日に発足した団体で、以下が発足時のプレスリリースですが、
「国家百年の大計にならなければならないエネルギー政策が、政権が変わるたびに朝令暮改式に変わり、経済主体が大きな混乱を経験することはもちろん、経済的非効率性と浪費、環境破壊などさまざまな副作用を起こしている。
この現実をこれ以上座視することできない。そのような判断で教授らが協議会を発足した」
と述べています。
現在62の大学、260人余りのエネルギー関連を専門とする教授が会員となっているとのこと。
↑『エネルギー政策合理化を追求する教授協議会』発足のプレスリリース
上記の発足趣旨からも分かるとおり、発足以降、文政権のエネルギーインフラ政策を批判してきたのですが、全く効果はなく、文政権は批判などどこ吹く風と非合理な政策を推進しました。
もう政権末期なのでいよいよメディアも教授の皆さんも遠慮会釈がなくなり、文政権を罵倒するような内容の発表を行い、『韓国経済』がそれを記事にしたというわけです。
10兆の負債増は文政権のせい!
以下に『韓国経済』の記事から注目ポイントを引用します。
(前略)
この日発表を引き受けたシム・ヒョンジ『ンソウル大学』原子核工学科教授は、過去5年間、『韓国電力』の負債増加分34兆4,000億ウォンのうち、「脱原発」政策要因が10兆ウォンを超えると分析した。文在寅政府が新ハヌル原発3・4号機の建設を中断させて原発利用率を下げ、相対的に発電単価が高いLNG発電が増えたためだ。
(中略)
シム教授は、原子力発電比重を2016年のように30%に維持したら、『韓国電力』は過去5年間で10兆2,000億ウォンの損失を出さなかったと分析した。
(後略)
Money1でもご紹介しているとおり、『韓国電力』は赤字経営に転落しており、それというのも再生可能エネルギーへの無茶な転換を行っているためです。
しかし、シム教授の試算によれば、原発を止めて単価の高いLNG発電に切り替えたためだ、としています。少なくとも、この5年間で増加した負債「34兆4,000億ウォン」のうち「10兆2,000億ウォン」はそのせいだと。
電気代は「2.76倍」になるだろう
また、次の「電気料金の値上がり」についての推算も衝撃的です。
(前略)シム教授は、現在の脱原発政策を推進し続ける場合、2050年の電気料金は2020年比で2.76倍に上昇すると予測した。
電気生産が間欠的に行われる再生エネルギー発電方式の限界を補完するために必要なESS(Energy Storage Systemの略:電力貯蔵システム/筆者注)の準備費用が1,440兆ウォンに達するためだ。
反面、脱原発政策を撤回して2020年の原発発電比重を30.3%に維持すれば、2050年の電気料金は2020年比で57%引き上げにとどまる、とシム教授は見通した。
(後略)
このまま、文政権の引いたレールに沿って脱原発を推進すると、2050年には電気料金が2.76倍になると警告しています。
Money1でもご紹介しましたが、文政権はロジスティクスの部分を全く考えていません。送電網・変電所・ESSなどの増設を考慮せず、太陽光・風力発電施設を増設すればOKという愚かな考えできたのです。
しかし、太陽光・風力発電ではピーク時にでつくった電力をためておく施設が必須です。冬や風の吹かないときはどうしようもないからです。シム教授は、この蓄電システムのために1,440兆ウォンかかるので、これを反映すれば電気料金は跳ね上がると推算しています。
(恐らくそれでも足らないでしょうが)真っ当な考えでしょう。
――というわけで、『エネルギー政策合理化を追求する教授協議会』脱原発政策は見直すべきと提言しています。
文大統領は悔しがるかもしれませんが、もし次期大統領が尹錫悦(ユン・ソギョル)さんになったら、すぐに脱原発政策は「やめだー!」になるでしょう。すでに尹錫悦(ユン・ソギョル)さんはその旨を述べていますので。
(吉田ハンチング@dcp)