韓国では現文在寅政権側と尹錫悦(ユン・ソギョル)新大統領側の対立が激しさを増しています。
文政権側は文在寅大統領の任期が終わっても影響力を残そうと最後の最後まで人事権を行使し続けるつもりです。一方の新政権側はそうはさせじと「人事については相談すべき」と引きません。
普通に考えれば、文政権側の動きが異常です。
新大統領が仕事をしやすいように協力するのがスジであって、自分の退任後を見据えて影響力を行使できる人事など行うべきではないからです。
先にご紹介していたように、2022年03月末日で任期の切れる『韓国銀行』李柱烈(イ・ジュヨル)総裁の後を誰にするのかが新旧対決の焦点の一つとなっていました。
しかし、2022年03月23日、青瓦台・大統領府は急きょ「イ・チャンヨンさん」を候補として指名したと発表したのです。
なんと『IMF』アジア太平洋局長を指名!
以下はそのプレスリリースです。
文在寅大統領は本日、『韓国銀行』総裁候補として李昌鏞(イ・チャンヨン) 『国際通貨基金(IMF)』アジア太平洋担当局長を指名しました。
イ・チャンヨン候補者は『ソウル大経』済学部教授、金融委員会副委員長、『アジア開発銀行(ADB)』首席エコノミストなどを経て『国際通貨基金(IMF)』アジア太平洋担当局長として在職中の経済・金融専門家で、国内・国際経済及び金融・通話分野に対する理論と政策、実務を兼ね備えており、周辺から信頼が厚いという評価を受けています。
経済・財政および金融全般に対する豊かな見識と経験、グローバルネットワークと感覚を基に、国内・外経済・金融状況に対応する効率的で安定的な通貨信用政策を通じて物価と金融市場の安定に寄与できると期待します。
⇒参照・引用元:『韓国 大統領府』公式サイト「韓国銀行総裁指名関連パク・スヒョン国民疎通首席ブリーフィング」
韓国では時に「死神」と呼ばれる『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)の現役局長を次期『韓国銀行』総裁に指名するとは、なかなか思い切った人事です。
『IMF』アジア太平洋局長の李昌鏞(イ・チャンヨン)さんは、Money1でも数回ご紹介しております。
近々では以下の記事で、企画財政部のイ・オクウォン第一次官と面談を行ったのが李局長でした。
また、「韓国の政府債務は先進国と比べて対GDP比でまだ低い状態にあるから大丈夫」という言説に対して、「大丈夫かどうかは市場が決めることである」と非常に的確な指摘を行ったのも、李局長です(以下の過去記事を参照してください)。
ですので、韓国経済の状況を熟知しており、またマクロ経済についても識見をもった方であることは間違いありません。
李局長が受けてくれるか、まだ不明ですが、文政権にしてはなかなかいい人選といえるのではないでしょうか。韓国経済に何かあったときには『IMF』の人脈が生きそうですし。
ただ、これは尹錫悦(ユン・ソギョル)新政権側にとっては完全な不意打ちになりました。
さっそく尹陣営側から「大統領府と協議したり、推薦したことがない」という愚痴のようなコメントが出ています(真相は不明)。05月09日に文大統領の任期が終わるまで、まだまだ人事についてのゴタゴタは続きそうです。
(吉田ハンチング@dcp)