2022年03月28日、韓国では時に死神と呼ばれることもある『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)から「2022年年次協議結果報告書」が出ました。
これは、韓国政府と『IMF』の協議を基に、『IMF』が韓国経済の現状をどう見ているかを示すものです。先にご紹介したとおり、協議では韓国企画財政部の洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官自身が説明に当たりました。
また、なぜか企画財政部のイ・オクウォン第一次官が渡米して『IMF』本部で「ひとつよしなに」と交渉した結果のリポートでもあります(以下の過去記事を参照ください)。
『IMF』にネゴネゴした効果が出たのか?
以下が『IMF』が出した2022年年次協議結果報告書です。
概要:
韓国はCOVID-19の大流行から見事に回復しましたが、これは経済のファンダメンタルズの強さと当局の適切な政策対応の証といえる。COVIDが何度も流行しているにもかかわらず、活動は流行の前のレベルを超えた。
この回復は、2021年の迅速なワクチン接種を含むパンデミックの効果的な封じ込めと、積極的な経済政策支援の追求により、経済の傷跡を最小限に抑え、所得成長を維持し、金融安定を維持したことに支えられている。
韓国の高度なグローバル統合を考えると、強い外需も回復を支えた。今度の大統領選挙は、構造改革を再活性化するための好機である。
概要だけ読むと、韓国経済はいかにも好調のように読めます(というか韓国政府の主張を代弁しているかのようです)。「ひとつよしなに」の効果があったのでしょうか。
現在のところパンデミックの効果的な封じ込めはできていませんし、積極的な経済政策支援の追求によって経済の傷跡を最小限に抑えられたのかも疑問です。
しかし、『IMF』は韓国経済、政府による舵取りを褒めそやしているだけではありません。
韓国はスタグフレーションに注意しよう!
韓国経済の下方リスクについて以下のように述べています。
(前略)
韓国の成長に対する主な下方リスクは、オミクロンの世界的な影響、地政学的な不確実性、先進国の金融正常化に関連するものである。韓国の世界経済への高い統合性を考えると、主要先進国での金融正常化や世界的なリスク回避志向の高まりにより、主要貿易相手国の急激な減速、サプライチェーンの混乱の長期化、無秩序な市場調整は、成長に大きな影響を与える可能性がある。
-国内の主な下振れリスクは経済活動の弱体化である。
(中略)
インフレ見通しに対するリスクは上向きである。
世界的な物価上昇圧力の継続、国内供給のさらなる途絶、国内サービスに対するペントアップ需要(消費者の需要が景気回復期に一気に回復すること:筆者注)の高まりは、インフレ圧力を悪化させる可能性がある。
グローバルなサプライチェーンや国内サービスの供給が途絶えた場合、これらのショックは経済活動の足かせとなり、スタグフレーションのリスクを高めるだろう。
(後略)
「
韓国はグローバル経済と密接に結び付いているので、主要先進国の「金融正常化」「リスクオフ志向」によって、貿易の急激な減速、サプライチェーンの混乱の長期化が起こった場合、韓国経済を下振れささるだろうと述べています。
『IMF』の指摘するリスクの発現ですが、すでに一部はもう始まっており、ウクライナ戦争によってそれが加速されている面があります。
つまり、サプライチェーンの寸断とその回復の遅れ(あるいは回復不可)です。
韓国にとっての焦点は中国です。中国の景気減速は輸出を滞らせ、中国からワイヤーハーネスが入荷しなくなることによって自動車工場が止まる、ロシアからの石炭が入手できなくなることによってセメントが製造できないといったことがすでに起こっているのです。
景気の減速は開始されている可能性があります(墜落が始まっていてもそれがいつ始まったのか落ちている時は分かりません)。
また、韓国が尋常でないインフレに襲われていることは、読者の皆さまもご存じのとおりです。
ですので結論としてはこうなります。「韓国はスタグフレーション突入に気を付けよう」。
(吉田ハンチング@dcp)