通関ベースとはいえ、2022年上半期の貿易収支が「103億ドル」という大きな赤字で締まり(以下記事参照)、さすがに韓国メディアも大騒ぎになっております。
このところ土日になると悲観した記事が出ています。土日は官公庁が動いていないのでネタが少ないのかもしれません。どのメディアも主旨はほぼ同じで、
(通関ベース)
・経常収支の赤字化の懸念
・双子の赤字の懸念
(財政赤字と経常収支赤字)
・ウォン安進行への懸念
です。『韓国経済』が「貿易収支悪化⇒為替相場上昇⇒物価急上昇……悪循環の環に閉じ込めらた韓国経済」という記事を出しているのですが、記事内のどこにも「環」についての説明がありません。
各パラメーターは密接に関係していますが、「悪循環の環」が回っているというよりは、連鎖爆発が起こっているというような状況です。『ぷよぷよ』のような連鎖があちこちで起こって、大事なものが画面からすっかり消えていく、そんな感じではないでしょうか。
●ウォン安進行
これは基本的に止められません。アメリカ合衆国がドルの流動性を絞るのをやめない限り止まりません。
為替レートは、基本的に通貨量の比で決まるので、韓国が単独で止めることなどできません。また、合衆国と韓国の金利差が拡大すれば、さらにウォン安は進行します。ドルに換えて、金利の高い合衆国に資金を突っ込んだ方が「お金を増やすことができる」からです。
また、韓国ではなぜか「米韓通貨スワップを締結すればウォン安を止められる」という識者がいらっしゃいますが、本当にそうでしょうか。
合衆国連銀とドル流動性スワップを締結している、5つの中央銀行の国のハードカレンシーは対ドルで安くなっています。日本円など激安になっています。
そもそもが、合衆国の流動性絞りによって、また金利差がブーストさせているドル高なので、その通貨の信用を担保するのに「ドルが調達できるよ」という話は、基本関係ないからです。
●貿易収支の赤字
韓国をいつもドボン騒動に追い込むのは、この貿易収支の赤字に端を発するシナリオです。
しかし、これは当たり前の話で、韓国が輸出1本に頼った国で、貿易のもうけが十分でないと国からお金が出ていくばかりになるので仕方ありません。この構造を今からすぐに変えるのは不可能です。
幸いなことに、国際収支統計の方では貿易収支が赤字にはなっておりません。
注目すべきは輸出金額の伸びが止まってきたことです。輸入金額はいまだに高止まり、また前年同期比で急騰を続けています。そのため、どこかで本当に危機的な赤字を記録する可能性が高まっています。
●経常収支の赤字
何度もご紹介しているとおり、(国際収支統計で)貿易収支が赤字になると、韓国はほぼ確実に経常収支は赤字になります。で、問題になるのは、この経常収支の赤字をどうやってファイナンス(穴埋め)するかです。外国からお金を調達し過ぎて、これを償還できなくなり、ドボン騒動を起こすというがいつものパターンです。
ウォン安自体が資金の流出を意味していますが、資金流出は通貨安をさらに加速させます。それだけで「2連鎖」。貿易収支の赤字は経常収支の赤字につながって、それが投資家を忌避させ、これがまた資金流出につながって――「3連鎖」みたいな話です。
インフレを抑え込むために基準金利を上げると、家計負債が増加、借金が返せない家計が増え、金融機関の不良債権が増えて「4連鎖」。それが金融機関の信用喪失につながって……などと連鎖が拡大すると、本当に画面から何もかも消えてしまうかもしれません。
韓国経済の傾きをなんとかするのは、かなり難しいと思われます。
(吉田ハンチング@dcp)