「早いなオイ」というお話です。
韓国の文在寅大統領が「韓国の次世代主力産業と雇用を創出する」とぶち上げた「韓国版ニューディール」がもう消滅の危機に直面しています。
文政権は政府支出を1.5倍に増やした
韓国の場合、政権が交代すると前政権の引いた路線は往々にして全否定されます。それは右派・左派といった政治志向の転換に根ざすものだったりするわけですが、しかし、今回の「韓国版ニューディールの否定」は「お金」の問題が根幹にあります。
率直にいって政府の支出が無茶苦茶に増加して、全く余力がないのです。
文大統領の下、韓国政府支出は以下のように増加してきました(本予算ベース)。
↑赤字が文政権下でのもの。2022年は607.7兆ウォン。ただし、これに第1次補正の16兆9,000億ウォン(すでに決定)。尹新政権になってから50兆ウォンが加わる
上掲のとおり、2017年の支出は「400.7兆ウォン」であったのに、2022年には「607.7兆ウォン」です。本予算だけで比較しても、文政権は政府の支出を「1.52倍」に増やしました。
税収が増えたわけではないので、その分赤字が拡大し、赤字国債に頼ることになって……政府負債が異常に増加したわけです。
また、何度もご紹介しているとおり、次の大統領の尹錫悦(ユン・ソギョル)さんは「大統領になったら小商工人・個人事業主に対して50兆ウォンの支援を行う」と公約しました。
この支出は上掲の本予算には当然入っていません。どこかから財源を見つけないと公約を果たせないわけですが、赤字国債の発行しか方法はありません。
しかし、赤字国債の発行にも限度があります。
先にご紹介したとおり、韓国政府負債の異常な増加は『IMF』はじめ国際機関から注視されており、「韓国は危ない」と目されないように負債増を管理しなければならないからです。
ですので、韓国政府の財政余力は全くない状況と見なければなりません。文政権はある意味、これまで歴代政権が積み上げてきた貯金を蕩尽したともいえるのです。
「ニューディール」が消えた!
で、「韓国版ニューディール」です。
財政的な余力を作りだそうとすれば、現在の予算の無駄な部分を削るのが第一です。当然、新政権もそう考えるでしょう。
削減のターゲットになるのが「韓国版ニューディール」というわけです。
2022年03月29日、政府は来年度予算案編成作成指針を議決しました。これは、「大統領職引き継ぎ委員会」の意向が反映されており、これまでの指針とは異なります。
文政権がぶち上げた「活力・革新・包容を裏付ける積極的財政運用」というようなトーンは消えました。韓国メディア『中央日報』は以下のように言及しています。
(前略)
05月10日から尹錫悦大統領の任期が始まるので、今回の予算編成指針は「大統領職引き継ぎ委員会」と協議して設けられた。支出構造調整を巡って「大統領職引き継ぎ委員会」とやり取りがあったという意味だ。
尹錫悦(ユン・ソギョル)次期大統領が赤字国債の発行最小化を何度も述べただけに、文政府で増えた支出が減るのは予想された手順でもあった。
このため予算編成指針は昨年と比較したときに大きな差があった。
積極的な財政運用という言葉は、必要な財政役割の遂行に変わった。
「ニューディール」という言葉は消えた。
(後略)
この財政指針に基づいて政府省庁から要求が出されるわけですが(05月31日〆切)、文政権がぶち上げた「韓国版ニューディール」関連予算が削られること必至です。
韓国はなにかというと「○○ファンド」を作る国ですが、歴代政権が作ってきた「○○ファンド」がスグ廃れるのは、政権交替が起こると前政権が成したことを全否定するからです。
――というわけで「韓国版ニューディール」はもう消滅しそうです。
(吉田ハンチング@dcp)