2022年10月13日、韓国の企画財政部から「月刊財政動向 10月号」が公表されました。定点観測ですが、韓国政府の財政の現状を確認してみます。
2022年08月
総収入:44.6兆ウォン
総支出:38.9兆ウォン
統合財政収支:5.7兆ウォン
管理財政収支:1.5兆ウォン2022年01~08月累計
総収入:438.6兆ウォン
総支出:489.3兆ウォン
統合財政収支:-50.6兆ウォン
管理財政収支:-85.3兆ウォン※統合財政収支は単純に総収入から総支出を引いたもの。管理財政収支は国民年金基金などの収支も足しこんだもの。国の財政の健全性を判断する場合には、管理財政収支の方を見なければなりません。
先月に引き続いて薄い黒字になりましたが、01~08月累計では「-85.3兆ウォン」の赤字です。
ご注目いただきたいのは、対前年同期比で「+41.1兆ウォン」も収入が増えている点です。
ところが、支出が「+62.0兆ウォン」も増え、そのため収支が「-15.1兆ウォン」と赤字増となっています。
税収が増えて総収入が増えるというのは、企画財政部の読みどおりで「なかなかやる」なのですが、総支出の増加が予測どおりに収まっているかどうかです。
支出は企画財政部の予測より膨らみます。なぜなら、例の「徳政令」絡みの支出がこれから始まります。
また、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は企業・家計負債爆発の懸念に対して、新たな策を講じることを表明しています。この支出も政府財政を圧迫することになるからです。
ここまでの「統合財政収支」「管理財政収支」の推移を見ると以下のようになります。
韓国メディアが「双子の赤字」という言葉を使う場合、一つは「財政赤字」を指しています。
上掲のとおり、財政赤字はそもそも予算段階からそうでしたので、これを覆すことはできません。つまり、一つの赤字は確定です。
もう一つは「経常収支」の赤字を指すことが多いのですが、恐らく2022年は黒字で回るでしょう。ただ、だからといって韓国経済が大丈夫というわけではありません。
韓国の金融当局は、恐らく薄氷を踏む思いで日々の対応を続けています。これには敬服するしかありません。
韓国経済が危なくなってきたのを韓国ネットでは「尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領になったとたんこれだ」「大統領を選び損なった」などの声が出ていますが、政権を取ってからここまで、筆者などは尹錫悦(ユン・ソギョル)政権が経済政策を失敗したとは考えません。
むしろ、日々悪化する状況をなんとかクリアすべく、考えられる合理的な手を打っていると思われます。
ですから、『韓国銀行』李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁や秋慶鎬(チュ・ギョンホ)副首相兼企画財政部長官を決して嫌いにはなれません。
最悪の戦況の中で最善を尽くす現場指揮官をなぜ誹謗中傷できるでしょうか。
「所得主導経済」「政府が雇用を作る」などという妄想にとりつかれた前文在寅政権の無知蒙昧な遺産と無責任極まりない次政権への丸投げが、尹錫悦(ユン・ソギョル)政権を苦しめているのです。
「頭の悪い働き者」をTopに据えるといかなることになるのか、そのリカバリーのためにいかに苦労することになるのか、韓国は今それを体現しているのです。
(吉田ハンチング@dcp)