韓国は輸出で食べている国なので、輸出が減少し貿易でもうからなくなってきた現在は非常にピンチです。韓国政府が自分で「経済の複合的危機」と認めていますが、その根幹にあるのはやはり「貿易でもうからない」です。
朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が輸出立国だと決めて邁進し、成功した歴史があるので、そう簡単にこれを軌道修正することはできません。貿易収支に依存する構造自体が問われているわけです。
韓国政府が「緊急」と銘打って何度も会議を開催しているのは、「どうするよ?」に回答が出ないからでもあります。
Money1でも先にご紹介したとおり、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は「とにかく輸出を増やそう」と発破をかけ、「原発と防衛産業だー!」と連呼しています。
このように大統領が必死なのは既存の主力輸出品目が危なくなっているからです。
前文在寅政権下で縮小を余儀なくされた原発産業(『斗山重工業』は会社が傾いた)にリブートをかけ、防衛産業の輸出に躍起になっているのは伸びしろが他に見当たらないからに他なりません。
――というような先が見えず真っ暗況なわけで、韓国メディア『毎日経済』の記事タイトルに「暗黒輸出期」なる言葉が登場しました。
記事の一部を以下に引用します。
来年の輸出が大きく鈍化する見通しが相次いでいる中、国内経済専門家らは「企業に自由と活力を与えてこのような状況を突破しなければならない」と注文した。
景気後退期に企業が自由に投資できる環境を作らなければ、景気好況期に市場を先取りできる能力を備えることができない、ということだ。
(後略)
「将来に備えて今こそ投資を行え」という提言を行っているのですが、「どこにそんなお金が?」が企業の現状です。
『韓国レゴランド』のABCP(Asset-Backed Commercial Paper:資産担保コマーシャルペーパー)の不渡り事案、『興国生命』の外貨建て永久債のコールスキップに端を発して資金調達市場の金利は急騰、銀行圏の貸出金利も上昇しているというのに、どうやって投資資金を集めろというのでしょうか。
同記事は、『毎日経済』が主催して「経済危機克服大討論会」を開催した、という記事なのですが、産業通商資源部の第1次官の発言を報じています。
以下に引いてみます。
チャン・ヨンジン産業通商資源部1次官は19日、『毎日経済新聞』がソウル汝矣島韓国取引所で主催した「経済危機克服大討論会」に参加し、「来年の景気鈍化に対応するためには投資活性化と輸出(受注)支援政策が必須」と明らかにした。
チャン次官は「設備投資の80%を大企業が担っており、大企業が投資しないなら中小企業が引き続き投資をする」とし「先進国に比べて大幅に低い大企業に対する設備投資税額控除率を高めなければならない」と話した。
(後略)
チャン第1次官は、設備投資を行うべきだと強調しています。おっしゃるとおりなのですが、上記のとおり「お金が調達できないぜ」なのです。
設備投資の80%を担う大企業ができないなら中小企業が行うべし、とも述べていますが、大企業が資金調達に困難を感じていますので、中小企業はもっと無理です。
先進国と低すぎる設備投資に対する税額控除を拡大すべき、とも述べています。もっともですが、今から?という感じです。
先に少しだけご紹介したことがありますが、前文在寅政権下で世界の趨勢に逆らって韓国は法人税を上げました。そんなことを行った国は他にありません。
韓国は呆れられたのです。
なにせ、財閥・大企業は目の敵でしたから、文在寅政権は企業が嫌がることを率先して行いました。やらないよりやった方がいいですが、今から行っても遅きに失した感があります。自分の考えは正しいと信じ込んでいる学生運動上がりの人間をTopにつけるとこういうことになります。
注目は、産業通商資源部が2023年の主力輸出品目について以下のように読んでいることです。
主力輸出品目の対2022年比増減
半導体:-10.5%
鉄鋼:-10.0%
石油化学:-13.0%
自動車:+7.5%
造船:+23.6%
二次電池:+17.0%
自動車はアメリカ合衆国のIRAに大きな影響を受けそうなので「+7.5%」とプラスになるかどうかは怪しいですし、造船は「+23.6%」となっていますがそれで造船企業が黒字になるかが疑問です。また、二次電池の方もIRAが影響し、中国企業の追撃が著しいので目論見どおりになるかどうか……。
というわけで、やはり来年は記事タイトルどおり「輸出暗黒期」になる可能性が低くありません。
産業通商資源部
(吉田ハンチング@dcp)