2023年03月21日、貿易赤字が連続していますので、韓国政府が緊急会議を開催しました。
尹錫悦(ユン・ソギョル)政権になってから、韓国政府は緊急会議ばっかり開いていますが、今回の議題はそのものズバリの「貿易収支を改善するために」です。
※貿易収支は「輸出 – 輸入」で求めます。
以下が韓国の産業通商資源部が出したプレスリリースの全文和訳です。面倒くさい方は飛ばしても大丈夫です。
産業通商資源部(長官:李昌洋)は03月21日、安徳根(アン・ドックン)通商交渉本部長の主宰で、大韓貿易投資振興公社(以下『KOTRA』)、『韓国貿易保険公社』、『韓国貿易協会』など輸出支援機関と半導体、自動車、石油、鉄鋼、石油化学など業種別協会、『韓国ガス公社』などと一緒に「輸出入動向点検会議」を開催した。
ㅇ今回の会議では、地域別・業種別の輸出環境とグローバルエネルギー市場の動向を点検すると共に、最近のアメリカ合衆国『シリコンバレー銀行』(SVB)の破綻と欧州の『クレディ・スイス』(CS)の流動性危機の発生による業種別の輸出影響を確認した。
ㅇ参加者らは、最近の輸出減少と貿易赤字が持続している厳しい状況下、輸出活力を早期に回復するためにあらゆる手段を総動員しなければならないという認識を共有し、輸出拡大策を集中的に議論した。
安徳根(アン・ドックン)通商交渉本部長は、「主要国の高金利基調と需要減速の流れの中で、3月20日基準で輸出が前年比17.4%減少し、63億ドル規模の貿易赤字が発生した」と言及した、
ㅇ「グローバル経済状況と半導体価格の下落傾向の継続などの影響で、私たちが直面している輸出環境は当分の間、困難が続くだろう」と診断した。
安本部長は、「政府は最近、合衆国の『シリコンバレー銀行』の破綻、欧州の投資銀行である『クレディ・スイス』の流動性危機など、グローバル金融市場の変動性拡大状況を注視している」と述べた、
ㅇ輸出環境の不確実性が続く状況で緊張感を緩めることなく、今年の輸出が必ずプラス成長に転換できるよう、すべての輸出支援能力を結集して最善の努力を尽くすことを強調した。
この日、会議に出席した業種別協会では、上半期までは輸出不振が続くとみられるが、中国のリオープニング効果が現れ、半導体市況が改善される今年下半期には輸出が徐々に改善されると予想した、
ㅇ物流、税制、金融、マーケティングなど業種別オーダーメイドの支援と共に、ウクライナ-ロシア戦争の長期化、CBAM(炭素国境調整制度)-GSSA(持続可能なグローバル鉄鋼協定)などの輸出リスク要因に対する積極的な対応を政府に要請した。
*半導体設備投資税額控除率の引き上げ案の国会通過、自動車専用線の船腹確保、低金利政策資金の拡大、鉄鋼通商規制情報の迅速な共有、繊維中小企業の販路開拓・金融支援などを提案した。
ㅇまた、輸出拡大のため、展示会・商談会参加支援など輸出機会の発掘に重点を置き、海外認証及びFTA活用支援などを推進する計画であることを明らかにした。
ㅇ一方、『シリコンバレー銀行』(SVB)の破産による直接的な輸出影響はまだ現れていないが、金融市場発の不確実性の拡大に備え、市場動向を精査し、輸出業界と緊密に連携していくと明らかにした。
『KOTRA』、『貿易保険公社』など関係機関は、企業の円滑な輸出活動のため、貿易金融、マーケティング、認証など3大苦労の解消に積極的に取り組むと述べた、
ㅇ『KOTRA』の海外マーケティング予算の70%を上半期に早期執行し、海外展示会の成果向上のため、統合韓国館を30カ所以上に拡大する一方、
ㅇ原子力発電、防衛産業などの戦略受注産業プロジェクトに参加する企業に一括保証、コンサルティングまで網羅する貿易保険パッケージを支援し、半導体、バッテリーなど先端戦略産業に工程別オーダーメイドの金融支援を拡大すると明らかにした。
ㅇこれと共に「汎省庁輸出現場支援団」、「ワンストップ輸出・受注支援団」などを通じて発掘される輸出現場の悩みも迅速に解消されるよう総力を挙げて支援すると強調した。
一方、『KOTRA』は「今年は自動車を中心に合衆国、EU、中東など3大市場への輸出が好調に推移する見通し」と述べた、
ㅇグローバル消費トレンドの変化の中で、電気自動車を含む自動車部品、化粧品、食品、重機など市場拡大が予想される有望品目も積極的に発掘し、海外マーケティングなど輸出商品化を集中的に支援していくと明らかにした。
*(自動車部品) EU、中国、インドの環境政策による電気自動車の販売増加、中東地域の気候影響による部品需要の増加など
(化粧品・食品) ASEANの経済成長による消費の変化、K-ライフスタイルの普及など韓国製品を選好
(重機)合衆国のインフラ投資の増加、ASEANの新型コロナウイルスの影響で延期された建設プロジェクトの推進
ㅇ『大韓石油協会』と『韓国ガス公社』は、「エネルギー市場において、ウクライナ・ロシア戦争の長期化と金融部門のショックによる不確実性が拡大している状況」とし、「ただし、最近、原油、天然ガス、石炭など主要エネルギー源の価格が前年に比べて安定したため、前年高値水準まで上昇する可能性は低い」と展望した。
安本部長は「高金利などの複合危機を突破するためには、何よりも輸出活性化が重要なため、大統領主宰の「輸出戦略会議」を中心に全ての省庁と支援機関が協力して強力な輸出ドライブを持続していく計画」と述べた。
ㅇ早急に輸出活力を回復できるよう、業界にも非常な覚悟で臨むよう要請し、今年の輸出プラス達成に向けて、官民が一心同体で力を合わせ、現在の危機的状況を克服していくことを強調した。
⇒参照・引用元:『韓国 産業通商資源部』公式サイト「貿易収支を改善するために -通商交渉本部長、『輸出入動向点検会議』開催-」
なんという中身のなさ!
もう何度だっていいますが、韓国は貿易黒字が十分に大きくないと経常収支が黒字にならず、国が傾きます。ですので、もう傾いているわけです。
この緊急会議に「貿易収支改善のために」というタイトルが付いているとおり、その点を政府も十二分に理解していることを表しています。
しかしです、上掲のとおり、貿易収支改善のために「何をするか」の部分で驚くほど中身がありません。
貿易振興予算を使って展示会を行おう、新たな輸出品目の発掘を行おう――というのが提言で、しかもその輸出品目というのが、「自動車部品」「化粧品・食品」「重機」「原発」「防衛産業」と全く新味がないのです。
新味もないですが、そもそも勝算があるのか、という話です。
ASEANの経済成長による消費の変化によって、「K-ライフスタイル」なるものが普及し、韓国製品が選好され、化粧品・食品が売れる(はず)――などと述べています。
そもそも「K-ライフスタイル」ってなんだ?――なのですが、それでASEAN諸国において韓国製の化粧品・食品が売れると本当に考えているのでしょうか。恐るべき自信という他はありません。
この会議の中身のなさこそ、「打つ手がないこと」を示しています。
貿易収支を改善するには、輸入を減らすという手もありますが、輸入は「海外からする消費」に他なりません。それが減る、衰えるということは、たとえそれで黒字になったとしても「不況型黒字」でしょう。
韓国は袋小路にハマっているのです。
このような状況だからこそ、日本企業は「技術をよこせ」などという韓国の要望を一蹴する必要があります。韓国は困ったら日本に「金と技術をよこせ」と強訴をかけますから。
(吉田ハンチング@dcp)