2024年06月05日、『韓国銀行』が「国民アカウントの統計基準」の変更を行うこと――を公表しました。
統計基準となる年を2015年から2020年に変更しました。なぜ基準年を変更するかというと、簡単にいえば統計データの信頼性を上げるためで、背景について『韓国銀行』は以下のように説明しています。
国民経済の構造変化などに対応し、国民経済統計の現実反映度を高めるため、ある程度高い基礎資料の作成周期に応じて5年ごとに基準年改編を実施している。
今回の改編(第13回)は、基準年を2015年から2020年に変更するもので、従来どおり2回※に分けて実施。
※1次改編(2024.6.5公表):2000~2023年時系列
2次改編(2024.12.18公表):1953~1999年時系列
まず、2000~2023年のデータを今回の改変に併せて再計算して公表。第2次改編については「1953~1999年」分のデータに適用します。
データが改編される最重要ポイントは、以下です。
2020年の名目GDP(新系列)規模は2,058兆ウォンで、旧系列(1,941兆ウォン)に比べ118兆ウォン拡大(ベースアップ率6.1%)
ㅇこれは、行政資料の活用度が大幅に拡大された基礎資料(経済総調査、実測投入産出表など)が反映されたことに主に起因する。
基準年が変更されることで、基準となるGDPが2020年の「2,058兆ウォン」となります。
これでどうなるかというと、対GDP比などを計算するときの「分母」が拡大します。
実際の金額は変わりませんが「分母が大きくなった」ので、これまでの計算とは異なり「対GDP比の数字は小さくなる」のです。
さっそく企画財政部が以下のような、対GDP比で負債が減ったとプレスリリースを出しています。
家計負債比率は2023年末時点で、従来の「100.4%」から「93.5%」に下がりますよ!――としていますが、上掲のとおり分子の金額は変わりません。
↑政府負債や家計負債の対GDP比率が「このように下がりますよ」と企画財政部が公表した表組(データ出典は上掲の『韓国 企画財政部』資料)。
また、その「家計負債:対GDP比率93.5%」が低いのかというと、全然そんなことはありません。
『IIF』(Institute of International Financeの略:国際金融協会)のデータによると、主要34カ国の中で、家計負債対GDP比率が最悪なのは、韓国です。
第2位は「香港」で「93.3%」なので、僅差ではありますが、韓国がワーストだという事実に変わりはありません。
なにせ主要33カ国での平均値は「34.2%」。
第3位のイギリス「78.5%」、第4位のアメリカ合衆国「72.8%」ですから、韓国の家計負債が異常に多いというのが事実なのです。残念でした。
ともあれ、今回の国民アカウント統計基準年の変更によって、尹錫悦(ユン・ソギョル)政権が2024年初めに「2027年までにGDPに対する家計負債比率を100%未満に下げる」とした公約は実現しやすくなったのではないでしょうか。
そのために基準年を変更したとはいいませんが、ずいぶん現政権にとっては都合のいい変更ではあります。「物差し」を変えようが、「その物」の実際の長さが変わるわけではないのです。
(吉田ハンチング@dcp)