2026年07月20日、韓国外交部が興味深いプレスリリースを出しました。
韓国外交部の直属機関(所属機関)である「国立外交院」の教育システムがハッキングされていました。しかも10カ月も気が付きませんでした。

↑韓国国立外交院の外観。
一応、以下にプレスリリースを全文和訳します。
面倒くさい方は(別に全部読む必要はないので)次の小見出しまで飛ばしてください。
国立外交院オンライン教育システムへのサイバー攻撃について
外交部は今年02月初め、国立外交院オンライン教育システムへの異常なアクセスの兆候について関係機関から通報を受けた後、当該システムを緊急遮断し、関係機関とともに調査を行ってきた。
調査によると、正体不明の攻撃者は、サーバーソフトウエアの未公表のセキュリティー脆弱性(Zero-day vulnerability:ゼロデイ脆弱性)とシステムのセキュリティー設定の不備を悪用し、昨年04月から05月にかけてサーバーを掌握した後、これを足掛かりとして今年2月まで接続していたことが把握された。
※今回の攻撃は、ソフトウエアメーカーも当時認識していなかったゼロデイ脆弱性を悪用して接続した後、正規のソフトウェア権限を利用したため、通常の方法では探知が困難であり、当該時点ではこれを補完するためのセキュリティーアップデートが提供されていなかったことから、対応には限界があったものと分析される。
当該システムはオンライン教育システムであり、教育動画と、教育対象者の氏名、IDなど、教育運営に必要な情報が保存されている。ただし、現時点では流出した内容を特定することが困難な状況である。
外交部は、サイバー攻撃が日増しに高度化し、全方位に拡大していることを深刻な懸念材料とみており、関係機関との緊密な協力の下、内部セキュリティー体制の改善および管理措置を引き続き強化していく計画である。以上。
※「Zero-day vulnerability」というのは「メーカーが修正を始めるまでの猶予日数が0日」という意味の呼称です。
何が起こったのか?
まず국립외교원(国立外交院)とは、日本でいえば外務省の研修所に相当する機関です。
外交官の養成や現職外交官の研修を担当しており、
・新任外交官の教育
・在外公館赴任前の研修
・外交部職員の継続教育
・他省庁から海外へ派遣される駐在官の研修
etc.
――を実施しています。そのためのeラーニング(オンライン研修)システムが、今回「ハッキングされていましたテヘペロ」が発覚した「国立外交院オンライン教育システム」です。
韓国外交部は、
1.ソフトウェア自体の未知の欠陥(ゼロデイ脆弱性)で最初の侵入口を作られた。
2.システムのセキュリティー設定の不備を突かれて権限を拡大された。
3.正規の管理機能を悪用されたため、通常の監視では不審な動作として検知できず、約10カ月間にわたり攻撃者がサーバーへアクセスを続けることを許した。
――と三段階で進行したと説明しています。
外交部は、サーバーに保存されていた教育対象者の個人情報が流出した可能性があるとしています。保存されていたのは約1万件で、対象には次のような人員が含まれました。
・外交部本部の外交公務員
・在外公館勤務の外交官
・在外公館の行政職員
・他省庁から派遣された駐在官
・退職した外交部職員
外交部当局者は、「外交部本部の人員はほぼ全員含まれていると想定している」と説明しました。
ただし、同一人物の重複登録もあり得るため、約1万件がそのまま1万人を意味するわけではありません。また、サーバー内の全データが実際に持ち出されたと確定したわけでもありません。
外交部は、02月初めに異常アクセスを検知していました。02~04月に技術調査を行い、04月には情報流出の兆候を確認。同月には外交部の部長(=長官)である趙顕(チョ・ヒョン)さんに報告が上がっていたとのこと。
ところが、個人情報保護委員会に届け出たのは、それから3カ月もたった2026年07月19日のことです。なぜ報告がこれほど遅れたのか――が問題視されています。
また非常に面白いことに、犯人についての言及がまったくありません。
「미상의 공격자(正体不明の攻撃者)」として、攻撃主体を特定していません。
現時点では攻撃者を特定できるだけの技術的分析が不足している。
海外ハッカー集団の関与を含め、あらゆる可能性を排除していない。
――となっています。

↑文在寅時代に『人民日報』の取材を受けた際の国立外交院の写真。
外交部も国家情報院も「北朝鮮」とは一言も述べていません。中国への言及もありません。中国政府、中国系APTへの言及も確認できません。
(吉田ハンチング@dcp)






