『大韓航空』と『アシアナ航空』が合併しても全然大丈夫じゃないとご紹介してきましたが、それを裏付けるような動きが出てきました。
合併はスジのいい絵図でしたが……
そもそも『アシアナ航空』が2019年に事実上の破綻に陥ったのが原因ですが、とりあえず韓国政府、国策銀行『産業銀行』の指導によって『大韓航空』と合併する絵図が描かれました(以下はこの動きが完成した際の支配構造)。
※『韓進KAL』が大株主でその下に『大韓航空』と『アシアナ航空』の合併会社があり、そのまた下にLCC3社の合併会社が入る予定。ただしLCCについては決定ではありません
最もスジのいい絵図でしたが、『アシアナ航空』は(事実上)破綻しており、コロナ禍によって経営が傾いていた『大韓航空』との合併ですから財務状況がさして好転するわけはないのです(ただし有償増資によってましにはなりました)。韓国メディアでは「世界第7位の規模の航空会社が誕生する」などと報じられましたが、そんなにうまく運ぶはずはありません。
先にMoney1でもご紹介したとおり「合併が承認されるかどうか」も問題で、ここにきてこれが(やっと)クローズアップされているのです。
承認を得ないと合併できない!
このような大規模な合併(なにせフラッグキャリアの航空会社が韓国第2位の航空会社と合併する)の場合には、「独占禁止法」に触れないか、各国の承認を得なければならないのです。
で、『大韓航空』と『アシアナ航空』の場合には、9つの必須承認国と5つの任意承認国に承認申請を出しています。特に問題なのは必須承認国で、これら9つの国の承認が得られなければ合併は雲散霧消します。
必須承認国では、韓国、アメリカ合衆国、EU、日本、中国の審査(公正取引委員会管轄)がまだ決していません。
自分の国でも承認が得られていないというのも「なんだそりゃ」なのですが、特に難物なのは合衆国とEUです。
2021年01月15日には、立法調査処が合衆国、EUの当局共に以下のように確認しています。
新型コロナウイルス感染症(コロナ19)の状況とは無関係に、基準を従来と同様に維持する
EU執行委員会
コロナ19拡散に関係なく、企業結合審査において回生不可例外の判断基準の緩和を考慮しない
つまり「コロナ禍のため」などの言い訳は聞かないし、容赦しないよと言っています。
合併できるかどうか分からないので資金を集められない
ここでお金の話になります。
『大韓航空』は『アシアナ航空』との合併のために、2021年03月、有償増資で3兆3,000億ウォン(約3兆3,000億円)を確保。すでに1兆ウォン(約970億円)ほどを『アシアナ航空』に投じています。
しかし、もし合併が承認されなかったらどうなるでしょうか?
この点が明確にならないので、『アシアナ航空』側は得られた資金による「5兆ウォンに達する負債」の一部返済、また有償増資に踏み切れません(年末まで延期)。
有償増資ができなければ、予定していた資金が入手できません。そのため、また資金がショートするのではないか――という懸念が出ているというわけです。
(吉田ハンチング@dcp)