韓国の最大手造船会社でTop3の一つ『大宇造船海洋』が正式に『ハンファグループ』に買収されることとなりました。
Money1でもしつこくご紹介しているとおり、『大宇造船海洋』は赤字の会社です(事実上破綻しているといっても過言ではない)。公的にデフォルト確定とならないよう国策銀行『産業銀行』が支援を続けてきたのですが、「もう限界」となり売却先を結局、『ハンファグループ』に決めました。
『産業銀行』はもう限界で売却!
『産業銀行』が「もう限界」としたのは、同行が描いた救済プラン「『現代重工業』との合併」が水泡に帰したからです。
このような世界市場に影響を与えるM&Aの場合、関係各国当局の承認を得なければならないのですが、EUが見事に「駄目!」と判断。そのため、せっかく描いた絵図は反故となりました。
EUがNGを出したのは至極当然で、例えばLNG運搬船の2021年11月のシェア状況です(データ出典『Clarksons Research』)。
『現代重工業』と『大宇造船海洋』の合併なので、上掲でいうと2社のシェアを足すと「60%」になります。これで公正取引委員会が「OK」を出すわけがありません。
合併が雲散霧消したので、仕方なく「どっか韓国企業に売却だ」となりました。
韓国企業限定なのは、『大宇造船海洋』は潜水艦など国防産業に関わっているため、機密事項のことを考慮すると外国企業に売却するわけにはいかないのです。部門ごとなどにばらして売却といった選択肢もあったのですが、軍需部門だけ残ってももうからないので無理なのです。
そのため、結局『ハンファグループ』が買収することになりました。
しかし、これはこれであるべき道に戻ったといえます。
――というのは、そもそも14年前に『大宇造船海洋』が傾いていたとき、『ハンファグループ』は買収すると手を挙げていたからです。
『ハンファグループ』は『ハンファエアロスペース』などの国防関連企業を傘下に持ちますので、『大宇造船海洋』を引き受けるのに最適ともいえます。
総額2兆ウォン規模の有償増資!
ただし、それでも結合審査がなくなるわけではありません。再度、競争国の結合審査があり、また国内外の許認可手続きを経なければなりません。国内の方はどうとでもなるでしょうが、外国の方が問題です。今度は大丈夫と目されていますが、どこで足をとられるか分かりませんので油断は禁物です。
それが終わったら、『大宇造船海洋』が融資増資を行い、これに『ハンファグループ』傘下の企業が応じてお金を入れます。
『ハンファシステム』:5,000億ウォン
『ハンファインファクトパートナーズ』:4,000億ウォン
『ハンファエネルギー』など計3社:1,000億ウォン
が予定されており、総額2兆ウォン規模です。
2022年12月16日、さっそく下掲のように有償増資を行う旨の公示が出ました。
問題は、『大宇造船海洋』は大赤字の会社なので、たとえ『ハンファグループ』がお金を入れたとしても業績が良くなるわけではないという点です。
これまで底なし沼のように資金を飲み込んできたわけですから、2兆ウォンで済むのか――という懸念があるのです。
とりあえず、14年前にあったかもしれないルートに分岐した『大宇造船海洋』の行く末にご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)