韓国の文在寅大統領はとにかく南北首脳会談をもう一度行い、「朝鮮戦争の終戦宣言」を出させることに全力投球してきました。
「首脳会談の舞台は北京冬季五輪!」を目指してきたのですが、希望はポッキリ折れました。
「北京五輪で南北首脳会談実現だ!」と頑張ったが……
韓国青瓦台・大統領府は、2021年12月には「韓国は北京冬季五輪を政治的ボイコットはしない」としていました。
このときはまだ北朝鮮の金正恩総書記が訪中するのではないか、それなら南北首脳会談が実現できるのでは――と一縷(る)の望みをかけていました。
そもそも『IOC』(International Olympic Committeeの略:国際オリンピック委員会)が北朝鮮オリンピック委員会の資格を剥奪しましたので(2021年09月08日公表)、北朝鮮が冬季五輪に北朝鮮は参加できないのは分かっていたのですが。
⇒データ引用元:『韓国 大統領府』公式サイト「王毅・中国国務委員兼外交部長と会見関連 書面ブリーフィング 2021-09-15」
それでも中国の王毅外相との会談で中国に協力を要請していたので、「なんとかなるんじゃないか」と希望をつないでいたのでしょう。
なにせ王毅外相が「北京オリンピックが南北関係の改善のきっかけになるように努力する」「積極的な態度と政治的意志があれば、1日で歴史的な仕事を成し遂げることができるだろう」などとリップサービスをしたものですから。
しかし、肝心の北朝鮮・金正恩総書記の方が文大統領の願いを全くスルーしました。「恋い焦がれても袖にされる」を地でいくような展開です。
その上、アメリカ合衆国、中国にあれほど熱心に働きかけた「朝鮮戦争の終戦宣言」についても全く動きませんでした。
ついに2022年年初の文大統領のあいさつからも終戦宣言の文言が消え、外交部の動きも後退。
2022年01月07日、北朝鮮が国営メディアを通じて北京冬季五輪・パラリンピックには参加しない旨を発表。「参加しない」も何も、先述のとおり『IOC』の措置によって「参加できない」のですが。
2022年01月12日、韓国青瓦台・大統領府は、「現在、文大統領のオリンピック参加問題は検討していない」「慣例を参考に適切な代表団が派遣されるように検討中」と公表。
「金正恩総書記も来る可能性がないし、行ってもしゃあないな」と判断したものと思われます。
ただ、中国は先に「政治的ボイコットをした国には報復する」などと物騒なことを述べていますので、韓国は合衆国はじめ自由主義陣営国にならうことができません。昨年09月に「北京冬季五輪の成功を祈る」などと述べて言質を取られていますし。
ノーベル平和賞が唯一の出口戦略だった
これで、文大統領の「朝鮮戦争の終戦宣言を出させた偉大な大統領」となって、自身のレガシーとするという希望は見事に打ち砕かれたようです。
北朝鮮はミサイルを打ちまくっており、合衆国は終戦宣言などという世迷い言に付き合っているヒマはなくなっています※。
偉大な大統領になりそこなったため、金大中(キム・デジュン)大統領のようにノーベル平和賞をもらって、自身の拘禁を避けようというプランも駄目になりました。
Money1でも先にご紹介していますが、政府与党『共に民主党』の李在明(イ・ジェミョン)さんは文大統領とは遺恨があって、本来仲は悪いのです。和解を演出したりしていましたが、なにせ「恨」の国ですから、同党の李在明(イ・ジェミョン)さんが大統領になっても文さんが安全というわけではないのです。
李在明(イ・ジェミョン)さんが昔の仇を取ってやろうと考えても全く不思議ではありません。
さらにいえば、国民からの非難をかわすために、前政権のアラを探すでしょう。「こんな事態になったのは文政権のせいで……ほらこんなに悪いことをしていましたよ」と生け贄になることがあり得ます。
また、尹錫悦(ユン・ソギョル)さんが大統領になったら確実に文さんは仕留められます。すでに尹錫悦(ユン・ソギョル)さんは自分が大統領になったら文政権の失政を追究するとはっきり述べています。
つまり、どちらが大統領になっても文在寅さんは恐らくロクなことになりません。
金大中大統領の例にならってノーベル平和賞を取ることが、唯一の出口戦略(?)だったのですが、これが駄目になりました。現時点ではそう見えます。
というわけで、文在寅大統領が退任後を見据えて、これからどのような動きをするのかに注目です。
※ただし、なにせバイデン政権なので、合衆国が弱気になって世迷い言に付き合う可能性はあります。ゼロではありません。北朝鮮を最もコントロールできたのはトランプ政権でした。クリントン、オバマの民主党政権は北朝鮮に時間稼ぎをされ、核開発を進行させただけでした。「戦略的モラトリアム」というのは、意訳すれば「ほったらかし」です。
(吉田ハンチング@dcp)