いわゆる「徴用工問題」を巡って韓国で気になる動きが出ています。
先の慰安婦合意(2015年12月28日の日韓外相会談でなされた)は年末に電撃発表されて日本国民を驚愕させましたので、岸田文雄政権が韓国に妙な妥協を行わないか油断はできません。
韓国メディア『ハンギョレ』の記事から一部を以下に引用します。
『日帝強制動員被害者支援財団』が定款に「被害者賠償」を追加する手続きを踏んでいることが23日確認された。
これまで政府が日帝強制動員問題の有力な解決策の一つとして検討してきた「併存的債務買収」を実現するための事前準備手続きに入ったという分析が出ている。
『ハンギョレ』取材を総合すれば、財団は去る21日、理事会を開き定款に「被害者賠償」に関する条項を追加することに決めた。
財団は来週中にも上級機関である行政安全部に定款承認申請をする予定だ。
この財団は2014年に強制動員被害者支援のために設立された。
「併存的債務引受案」とは、財団が日韓両国企業の自発的寄付を受けた後、この金を使って企業である『日本製鉄』、『三菱重工業』に代わって強制動員被害者に支給する方式をいう。
現在、『日帝強制動員被害者支援財団』の定款には「被害者に賠償できる」という内容がない。
財団理事会は、定款の変更を通じて財団が併存債務の買収を実施する法的根拠を設けたものとみられる。
(後略)
『日帝強制動員被害者支援財団』が2022年12月21日に定款の変更を行ったことを確認した、としています。定款に「被害者に賠償できる」という条項を加えたとのこと。
これは、いわゆる代位弁済を行うための準備だと考えられます。
記事内で「併存的債務引受」と説明されていますが、「併存的債務引受」というのは「債務者の債務を免脱させずに、引受人が債務者の債務と同じものを引き受ける」契約――と説明されます。
つまり、『日帝強制動員被害者支援財団』が債務を引き受ける器に使うと目論んでいるようです。『日帝強制動員被害者支援財団』に日韓企業がお金を出し、これで自称徴用工被害者に支払うというスキームと見られます。
↑『日帝強制動員被害者支援財団』のホームページ。Googleの自動翻訳なので日本語がヘンなところがありますがご寛恕ください。
問題は、そもそも1965年の日韓請求権協定で日本の朝鮮半島に対する債務はすっかり片付いたという認識であるのに、併存的債務引受の契約をどうやって結ぶのかです。
債権者をA、債務者をB、新たな債務者になる引受人をDとします。
債権者はこの場合、自称徴用工の人です。
債務者はこの場合、日本企業です。
引受人はこの場合、『日帝強制動員被害者支援財団』です。
債務の引き受け方によって2パターンに分かれます。
①Bの債務をすっかりDが引き受けると免責的債務引受
②Bも債務者として残ってDが債務者として加われば併存的債務引受
この場合は②を目論んでいるわけです。
これを実現するためには、A、B、Dで合意が必要です。必要と考えられる合意のパターンは以下の3つ(ただし日本の民法上からの考察)。
①A・B・Dの合意
債権者と債務者・新債務者が三者で合意する。
②A・Dの合意
債権者と新債務者が二者間で合意する。債権者からすると「新たに来たあんたが払ってくれるんだな」になる。
③B・D間で合意してAに承諾を得る
債務者と新債務者の間で合意すれば契約は成立するがAの承諾がないと効力がないと考えられる。
日本からすると可能性があるのは②だけです。
なぜなら、そもそも日本企業には債務などないからです。1965年の日韓請求権協定で全て片付いたというのが日本の立場。
法律の建て付けとして、併存的債務引受の引受人(すなわち『日帝強制動員被害者支援財団』)が、債務者(訴えられた日本企業)と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する――という契約を結ばなければならない①と③は論外です。
債務があると認める契約などできるわけがありませんし、してはなりません。
このようなことを認めたら、「1965年の協定で朝鮮半島に対する債務は全て片付いたわけではなかった」となります。日本政府は日本企業に債務があったと認めるつもりなのでしょうか。もし岸田政権がそのような動きに出たら、絶対に許すべきではありません。日本国民は声を上げるべきです。
ですので、②の債権者と新たな債務者が合意をして、旧債務者・日本企業の知らないところで債務が返済されるという建て付けしかあり得ません。もちろん債務者にされた日本企業はお金を出す必要などありません。
国際法を破って勝手に債務者にされたのですから。
ただし、②の場合には自称徴用工が求めている「日本政府・日本企業による謝罪」はあり得ません。債権者と新債務者との合意で行われることなので。ですから、韓国政府が自称徴用工の人を説得しなければならないでしょう。もちろん自業自得で日本の知ったことではありませんが。
まだ『日帝強制動員被害者支援財団』の定款変更だけですが、要注目の動きといえます。
(吉田ハンチング@dcp)