韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が国会で可決した「穀物管理法改正案」に対して拒否権を発動する、という話が出ています。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の拒否権発動は、大統領になってから初めてのこと。韓国メディアでは「拒否権第1号」という報道が出ています。
なぜ大統領が拒否権を発動するのかというと、背景には韓国でお米が余っているという実情があります。
韓国最大野党の『共に民主党』の賛成多数で可決された「穀物管理法改正案」ですが、以下のような条項が骨子です。
簡単にいえば、お米の価格を安くならないにするための法律です。なぜ安くなるかといえば、韓国では、お米の消費量が右肩下がりで、常に生産量が需要を上回っている状態になっているためです。
この法律に、大統領が拒否権を発動する理由は以下の2つです。
①WTO協定違反の可能性
②お米を強制的に購入する費用が巨額になる
①ですが、余剰米の政府購入義務化は、WTO協定が定めるところの「補助金」違反に当たる可能性がある――という理屈です。
韓国は自分で先進国であると連呼する割には、WTOの中では「開発途上国」の地位にとどまっており、開発途上国への優遇措置が受け続けています(これは中国も同じ)。
WTOは、農業補助金総額(AMS)を1兆4,900億ウォンと規定しています。
ところが、農食品部の試算によれば、2026年にはお米の買取にかかる金額は1兆ウォン、2030年にはリミットに近い1兆4,000億ウォンに達します。
しかも上掲の「1兆4,900億ウォン」は開発途上国なら――という条件です。先進国に地位変更するとこうはいきません。そのため、韓国政府はWTO協定違反と指弾されて国際的な制裁を受けることになるかもしれない――と反対しているのです。
また、この法律がそのまま運用されると、「政府が買い取ってくれるなら」とお米の生産が増えるのではないか、とも予想しています。
②は、毎年お米を購入するのが1兆ウォンを超えることになるという試算があるためです。この負担が政府にとっては過剰だとしています。
韓国政府は毎年、すでに購入した100万トン以上のお米を保管・管理するためだけに3,000億~4,000億ウォンの予算を使っています。
この法案が国会を通過した当日、農食品部のチョン・ファンギュン長官は緊急記者会見を開き「改正案を受け入れることは難しい」と表明しました。
ただし、韓国もご多分に漏れず農家の所得が減少しているので、この法律は農家を守るためのもの――という面があり、全否定することもできないのが現実です。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が本当に拒否権を行使するのかは、まだ分かりません。もし行使したら、朴槿恵(パク・クネ)大統領の2016年以来のことになります。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は04月04日の閣議までは、関連各所の意見を聞くとのこと。
さあ、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領はどう判断するでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)