輸出不振で貿易収支が赤字、経常収支も赤字が目立ってきた――と韓国経済がいつか来た道を歩んでいますが、韓国メディアの記事もだんだんヒステリックになってきました。
こういうのも韓国メディア十八番の「嘆き節」の一種といえるかもしれません。
『毎日経済』が韓国の輸出不振について記事を出しているのですが、世界経済における輸出シェアが2008~2009年の韓国通貨危機以来の低迷としています。
記事の根拠となっているは『WTO』(World Trade Organizationの略:世界貿易機関)のデータです。2022年の主要国輸出シェアは以下のようになっています。
アメリカ合衆国:8.3%(8.7%)
日本:3.0%(3.9%)
韓国:2.7%(3.2%)
台湾:1.9%(1.8%)
※( )内は2017年の世界シェア
アメリカ合衆国と日本は貿易収支に依存していない国なので、輸出シェアが落ちても(もちろん高い方がいいですけど)まあ、そうですか――な感じですが、韓国はそうはいきません。
輸出と貿易のもうけで食べている国なので、シェアが落ちるのは全くよくありません。上掲のとおり、( )内の2017年の世界シェアから下落しているのは、中国・韓国・台湾の中では、韓国だけです。
この2.7%(正確には2.74%)は、2008年の危機時に記録した「2.61%」以来の最低値。上掲の「2017年:3.23%」が実は韓国の最大シェアでした。以降は順調に下落しております。
以前、景気の山は2017年だったとご紹介したことがありますが(韓国企画財政部からの公表)、このWTO出典のデータは、それを裏付けているといえるでしょう。貿易の黒字で食べている国、韓国は輸出がしぼむととたんに国が傾くのです。
いい悪いはともかく、これが現実なので仕方ありません。
内需を拡大する方向に勤しむべきポイントがあったのですが、それをしなかったツケですし、人口の急減少という確定した未来が待っていますので、もう回復は不可能です。
『毎日経済』の記事が興味深いのは、この落ち込みを伝統主力産業の輸出が弱まったためとしている点です。数字を拾ってみます。
2017年 ⇒ 2022年でどのくらい輸出額が増減したかです。
石油化学:+21億ドル
自動車:+29億ドル
船舶:-57億ドル
ディスプレー:-23億ドル
無線通信機器:-22億ドル
半導体・石油化学・自動車はプラスですが、船舶・ディスプレー・無線通信機器はマイナスです。このプラスとマイナスの各産業を足し込んでみると、
マイナス:-102億ドル
収支:-20億ドル
6つの主力産業だけで収支はマイナスになるのです。
特に驚かれるのは船舶の落ち込みではないでしょうか。あれだけ「ジャックポット!」だのなんだのと騒いでいたのはなんだっんだ――と思われるかもしれません。
実は韓国造船業の夏はとうに過ぎ去っているのです。
2017年に「423億6,000万ドル」あった輸出額は、「2022年:181億9,000万ドル」と2017年と比較して57.1%も減少しています。
もう一つ指摘しておかなければいけないのは、船舶・ディスプレー・無線通信機器とマイナスとなっている産業は中国がもう自前でなんとでもできるものだということです。
船舶は中韓で安値受注合戦を繰り広げていますし、ディスプイレーは中国『BOE』の台頭によって韓国はむしろ圧されている状況。無線通信機器、すなわちスマホは、もはや中国の皆さんは韓国製をほとんど買いません。
つまり、このデータは「いかに中国によって韓国の輸出が圧迫されているのか」を示すものでもあるのです。
『毎日経済』の記事が面白いのは「専門家らは(中略)韓国がこれに対抗してバイオ、バッテリーなど有望分野に急いで輸出を多角化しなければならないと強調する」と書いていることです。
そんなことが急いできるくらいなら誰も苦労はしないのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)