韓国の銀行でNPLの売却金額が、このままだと上半期だけで2兆ウォンを超えるという興味深いデータが報じられています。
NPLというのは「Non-Performing Loan」の略で不良債権を意味します。銀行から見ると、回収困難な債権です。
このNPLを束ねて売却するということは商売の一つとして成立しています。日本でも不動産担保付きの不良債権などが売買されています。
バブルが崩壊した後には、簿価の5~10%でNPLを購入し、売却して尋常ではない利益を得るという業者も出現しました。
韓国の銀行(5大銀行はじめ国策銀行、地方銀行など含む)のNPL売却額は、第1四半期で7,107億ウォン。第2四半期には「1兆3,828億ウォン」が追加で売却されると見込まれています。
合わせれば「上半期で2兆ウォンを超える」わけですが、これは異常な額です。
なぜなら2022年の1年間でのNPL金額は「2兆2,828億ウォン」だからです。半年で昨年1年間の売却額に匹敵する金額になります。
なぜここまでNPLの売却額が増加しているのかというと、先にご紹介した「延滞の増加」があるものと推測できます。金利が上昇し、元利払いが滞る借り手が増加しているのです。
もう一つは、銀行側が健全性を確保し、信用リスクを避けるために速攻で売却にかかっているからです。
『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「韓国で取り付け騒動が起こったら、アメリカ合衆国の100倍早く預金が引き出されるだろう」と述べていますが、「あの銀行は不良債権比率が増加しているぞ」などと指摘されたくないのです。
いずれにせよ、NPLの売却が急増するなどというのは決していいことではありません。不良債権化する貸し付けが増加していることを示しており、銀行側がそれを不安に思っていることの現れだからです。
韓国の金融当局は、ますます金利を上げにくくなっています。このような状況では、恐らく基準金利は上げられません。
05月03日(現地時間)には、アメリカ合衆国『FOMC』(Federal Open Market Committeeの略:連邦公開市場委員会)で政策金利が決定されます。
2023年04月20日09:27現在、『Fed Watch』がどうなっているかというと……。
「5.00~5.25%」になる(=25bp上げる)という予測が83.3%です。
韓国の願いも虚しく、合衆国は政策金利を上げるでしょう。韓国の金融に与える影響が注目されます。
(吉田ハンチング@dcp)