米国「中国は偽情報の流布に数十億ドルを投資してきた」中国「米国こそウソの帝国だ」

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2023年09月28日、アメリカ合衆国国務省は「中国共産党が行っているプロパガンダ」に対して厳しい報告書(Fact Sheet)を出しました。

タイトルは「How the People’s Republic of China Seeks to Reshape the Global Information Environment」(中華人民共和国はいかにして世界の情報環境を再構築しようとしているのか?)。

以下にサマリーを全文和訳します。

中華人民共和国はいかにして世界の情報環境を再構築しようとしているのか?

本日、国務省は、中華人民共和国(PRC)がいかにして世界の情報環境を自国に有利なように再構築しようとしているかについて、画期的な報告書を発表した。

北京は、自国のプロパガンダを促進し、検閲や偽情報の拡散を容易にするグローバルな情報エコシステムを構築するために、数十億ドルを投資してきた。

すなわち、

プロパガンダと検閲の活用
デジタル権威主義の推進
国際組織と二国間パートナーシップの悪用
共闘と圧力のペアリング
中国語メディアのコントロール

である。

これら5つの要素によって、北京はグローバルな情報環境を自国に有利になるように変化させることができる。

もし成功すれば、PRCの努力は世界の情報状況を一変させ、偏見と格差を生み出し、各国が自国の経済的・安全保障的利益を北京に従属させるような決定を下すように仕向ける可能性がある。

中国による情報操作が世界に与える影響

中国共産党は、コンテンツやプラットフォームに対して、公然・非公然の影響力を強めている。

国営放送の『中国中央電視台』(China Central Television)は、1,700の外国の報道機関やメディアグループにビデオ映像やテレビ原稿を無料で提供している。

多くの場合、中国国営メディアによって制作されたコンテンツは、外国政府によるものであることが分かるようなブランディングを施されることなく、現地のメディア向けにリパッケージされている。

外国メディアの所有権を制限するタイの法律を回避するため、中国の大手テクノロジー企業はタイ人が運営する現地法人を設立し、月間3000万人のアクティブユーザーを持つタイで最も人気のあるニュースサイトを買収した。

PRCは『StarTimes』を通じて、アフリカにおけるデジタルテレビサービスの大手プロバイダーとなった。

ケーブルテレビのサービスプロバイダーを支配することで、PRCは基本パッケージから欧米のニュースチャンネルを除外し、視聴者がアクセスできる放送局を決定する力を得ている。

2021年現在、約100人のインフルエンサーが、複数のソーシャルメディア・プラットフォーム上で、少なくとも2ダースの言語で、数十カ国の合計1,100万人以上のフォロワーに向けて、中国の公式メッセージを発信している。

中国共産党は世界の表現の自由を制約している。

スペインを拠点とする非政府組織『Safeguard Defenders』による、複数の司法管轄区にまたがる中国の公安当局とつながりのある53カ国100カ所の「海外警察サービス局」の存在と活動を詳述した報告書を、1,000を超える中国寄りのアカウントが葬り去ろうとした。

2021年9月、リトアニアの国家サイバーセキュリティセンターは、中国企業『Xiaomi(シャオミ)』が製造した携帯電話には、少なくとも449のフレーズのリストを検閲するデフォルト機能があると報告した。

リトアニアの報告によると、この「機能」はヨーロッパに出荷された携帯電話では無効だったが、遠隔操作で有効にすることができたという。

北京は、『WeChat』『WeiXin』(中国語話者の間で世界的にも中国国内でも人気のあるアプリケーション)を使って、海外での議論を検閲している。

中国国外の『WeChat』登録ユーザー間の通信は、『WeiXin』に機密コンテンツをより迅速に認識させることで、中国の国内検閲能力を直接向上させる「広範な」監視を通過する。

2019年9月、『ファーウェイ』のフランス法人は、社内に中国共産党委員会が存在することからファーウェイは「国家と(中国共産党の)支配下にある」と発言したフランスの研究者と彼女をホストにしたトークショーに対して名誉毀損訴訟を起こし、最終的に2022年7月に取り下げた。

中国共産党はデジタル権力者の新興コミュニティを推進している

中国は、監視を支援するためにデジタル・エコシステムを輸出している。

2021年06月現在、163の世界的なスマートシティ-公安プロジェクトには、新疆で事業を展開する中国企業が関与している。

2019年現在、PRCの情報統制は102カ国に広がっている。

このうち11カ国では、中国の情報統制戦術が最も深く拡散した結果、中国の情報統制法および技術が模倣され、あるいは完全に複製された。

北京からの支援を受けて、外国政府は『ファーウェイ』の数億ドル相当のシステムを使用して警察活動を支援し、さらには国内の政治的野党メンバーの電子通信や携帯電話の位置情報を傍受している。

2021年11月には、少なくとも18カ国が『ファーウェイ』製のミドルボックスを使用し、一部のオンラインネットワーク上のインターネットトラフィックを促進・検査し、特定のサイトへのアクセスをブロックした。

『TikTok』の所有者である『ByteDance(バイトダンス)』は、北京に対する潜在的な批判者(おそらく中国国外も含む)が同社のプラットフォームを利用するのをブロックしようとしている。

2020年後半の時点で、『ByteDance』は、『TikTok』を含む全ての『ByteDance』プラットフォームからブロックまたは制限されている可能性が高い人々を特定する内部リストを定期的に更新している。

⇒参照・引用元:『アメリカ合衆国 国務省』公式サイト「How the People’s Republic of China Seeks to Reshape the Global Information Environment」

中国は数十億ドルを投じて偽情報を流布してきた――と指摘。合衆国のこの公表に対して、中国は当然ながら猛反発しています。

以下は、中国の外交部が土曜日だというのに出したプレスリリースです(2023年09月30日19:16付け)。外交部が記者からの質問に答えた形になっています。

質問:
合衆国国務省は28日、中国が数十億ドルを投じて世界中に偽情報を流しているという報告書を発表しました。

中国の「グローバルな情報操作」は、単なる外交問題ではなく、グローバルな情報空間の完全性に対する挑戦です。このまま放置すれば、将来的に世界的な表現の自由の激減につながりかねない。これに対する中国の対応は?

回答:
合衆国国務省が発表した関連報告書は、事実を無視し、白黒をひっくり返しており、それ自体が誤った情報である。

実のところ、世論の武器化は合衆国の「最初のイニシアティブ」である。

上記の報告書を作成した合衆国国務省の関連機関は、実際には「グローバルな関与」という名の「プロパガンダの浸透」であり、偽情報の発信源であり、「認知戦争」の司令塔である。

冷戦時代にメディアを買収して世論を操作する「モッキンバード作戦」※1の立ち上げから、新世紀に入って「洗濯洗剤」※2や「ホワイト・ヘルメット」※3を使ったイラクやシリアへの侵略戦争の開始、そして「世紀の嘘」の捏造まで。

合衆国が正真正銘の”嘘の帝国 “であることは、事実が何度も証明してきた。ランド・ポール上院議員らも、合衆国政府が世界史上最大の虚偽情報発信者であることを認めている。

恐らく合衆国の一部の人々は、十分な噂を作れば情報戦争に勝てると考えているのだろう。

しかし、世界の人々の目は肥えている。

合衆国がいくら他国に「偽情報の流布」というレッテルを貼ろうとしても、「皇帝の新しい服」を織るために嘘に頼り、他国の信用を落とすことで覇権を維持する合衆国の醜悪な振る舞いに、世界のより多くの人々が気付きつつあるという事実は変えられない。

⇒参照・引用元:『中国 外交部』公式サイト「外交部发言人就美国国务院发表涉华报告答记者问」

中国は自分のことを棚に上げて、合衆国こそがウソを流布しており、今回の報告書もウソであると述べています。

※1冷戦初期に始まったとされるCIAの作戦。プロパガンダ目的で合衆国内の報道機関を操作するという内容。

※2対イラク戦争を開始するに当たり、コリン・パウエル国務長官、元統合参謀本部議長が国連安全保障理事会で、「証拠」として白い粉の入ったチューブを取り出したことに起因。

パウエルさんは「サダムが使用したこの少量の炭疽菌は、何万人もの人々を殺す可能性があります」と述べました。

※3「ホワイト・ヘルメット」は「シリア民間防衛隊」が被っていたもの。

シリア内戦で傷ついた人々の救助活動を行っていたのですが、アサド政権支持者から「ホワイト・ヘルメットを被った人たちが人命救助を行っているのはウソだ」という情報が流布されました。

最後の文は、以下のように「合衆国 ⇒ 中国」に入れ替えることができます。

中国がいくら他国に「偽情報の流布」というレッテルを貼ろうとしても、「皇帝の新しい服」を織るために嘘に頼り、他国の信用を落とすことで覇権を維持する中国の醜悪な振る舞いに、世界のより多くの人々が気付きつつあるという事実は変えられない。

なるほど、合衆国も中国と同様にウソの帝国かもしれません。

しかし、決定的に違う点があります。

合衆国の場合、報道の自由がありますから、ついたウソは後から暴くことができます。中国の場合にはできません。報道の自由、思想・信条の自由がないので、ウソを暴くことができませんし、中国共産党が「ウソをついた」と認めることもありません。

どっちがマシか?――という話になります。

(吉田ハンチング@dcp)

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