ドイツ政府が重要な決定をし、中国が反発しています。
まずこちらから。2023年09月28日、中国共産党の英語版御用新聞『Global Times』に嘆き節の記事が出ました。一部を以下に引用します。
連邦開発省(BMZ)は火曜日(2023年09月26日:引用者注)、ドイツは2026年以降、中国への振興融資を行わず、中国を発展途上国として扱わないことを確認した。
『Reuters(ロイター)』によると、ドイツ開発省は09月中旬、中国財務省に対し、中国への振興融資を永久に停止するという連邦政府の決定を伝えたという。
ドイツ開発相のスヴェンヤ・シュルツェ氏は「われわれは、もはや中国を発展途上国として扱わない。しかし、中国は重要なパートナーであり、今もそうである」と述べた。
この動きは、中国との「デカップリング(切り離し)」を強化し、中国を狙った経済・貿易障壁を作ろうとする、一部のドイツの政治家のアメリカとの連携を反映していると、世界戦略に関する独立系アナリストのChen Jia氏は水曜日に『Global Times』紙に語った。
(後略)⇒参照・引用元:『Global Times』「Germany’s end of promotional loans undermines China-EU cooperation: experts」
なんの話かというと、これまでドイツは中国が発展途上国だというので、経済振興のための融資を行ってきたのですが、以降はこれを出しません――と中国に伝えた、というのです。
同記事では「中国への振興融資を永久に停止する」と強い表現を使っています。「効いている」というわけでしょう。
記事内に登場する「BMZ」というのは、日本語では「連邦経済協力開発省」と訳されます。
このBMZは1961年に設立され、二国間援助(資金協力、技術協力)および国際機関を通じた援助についてついて所管する政府機関です。
日本の財務省の資料によると「ODA予算については、6割がBMZに計上されている」となっています。つまり、ドイツが他の振興国を支援する際には、このBMZがキーになるのです。
↑Svenja Schulze(スヴェンヤ・シュルツェ)さん。ドイツ連邦経済協力・開発大臣です。BMZ公式サイトより/スクリーンキャプチャー
BMZの現Topがスヴェンヤ・シュルツェさん。BMZは以下のようなプレスリリースを出しています。
詳細な内容はないものの、『Global Times』の記事によれば「中国財務省に対し、中国への振興融資を永久に停止するという連邦政府の決定を伝えた」となっていますので、これに先立って「もうお金を出しません」と中国政府に正式に伝えたようです。
ODA予算の多くを握るBMZがそう決定したので、2026年以降は「中国の経済発展を支援する」というドイツ政府からの資金投入はなくなります。
中国商務部・外交部が必死になって外国からの投資を呼びかけている今、EUを牽引するドイツにこのような決定を下されてはたまったものではないでしょう。
ですから、上掲のように御用新聞『Global Times』が「アメリカとの連携(後述)を反映している」などと批判しているのです。
しかし、「中国はもう発展途上国じゃない」というドイツの主張は今に始まったことではありません。
以下はBMZの公式サイトに掲載されている「中国との協力」ページの記載です。
これによると、「2010年以降、BMZは事実上、中国を発展途上国として扱うことをやめ、中国が国際秩序の枠組みの中で責任を負い、地球規模の問題の解決に貢献することを要求している」となっています。
中国が泣こうが喚こうが、お金をやってはなりません。
下掲記事でご紹介したとおり、アメリカ合衆国では「中国を発展途上国として扱わない」という主旨の「PRC Is Not a Developing Country Act」が2023年05月27日に下院を通過しています(「415 対 0」の圧倒的賛成多数!)。
当然のことしょう。同法案では「合衆国国務省が国際機関において“中国の発展途上国としての地位を剥奪する”ように動く」と規定しています。
日本も合衆国・ドイツに続き「中国はもはや発展途上国ではない」と明確に発言すべきです。無法者国家に育った中国を優遇してやる必要などありません。
(吉田ハンチング@dcp)