韓国の国産戦闘機「KF-21 ポラメ」の件です。
そもそも韓国の国産戦闘機開発計画は、2001年にまでさかのぼります。金大中(キム・デジュン)大統領が国産宣言を行ったのが始まりで、以下のように進行してきました。
2010年:KF-Xプロジェクトの基本戦略を承認
2011~2012年:研究開発を実施
2013~2014年:EMDプログラムの実現可能性分析
2015年:EMDの契約を締結 (エンジニアリング、製造、開発) プログラム
2016年:プログラムキックオフミーティング
2017年:KF-Xプログラムの開発企業の指定
2018年:予備設計レビュー
2019年:クリティカルデザインレビュー(最終デザイン決定)
2020年:KF-Xプロトタイプ#1の最終組み立て開始
2021年:プロトタイプ#1ロールアウト
2022年:初飛行
2023年:開発完了(本当に完了するのか)
現在までに試作初号機から6号機までの6機が完成しており、各種飛行試験が行われています。問題は、共同開発に名を連ねていたインドネシアが予定どおり開発分担金を支払うかどうかです。
インドネシアは、そもそも総事業費「8兆8,000億ウォン」の約20%「1兆7,338億ウォン」を負担するという話でした。費用負担の代わりに試作機1機と技術資料を受け取り、インドネシアで48機を現地生産する計画だったのです。
ところが、インドネシアはフランスのラファール戦闘機の購入を決めるなど(後述)、KF-21から手を引く構えを見せています。
インドネシアはこれまで「2,783億ウォン」しか支払っておらず、残りの約1兆ウォン(インドネシア分担分が減額されたのでこの金額)をいまだに「支払う」と公表していません。
2022年11月:94億ウォン
2023年02月:417億ウォン
小計:2,783億ウォン
インドネシアはやっぱり「音なしの構え」
韓国も焦って、2023年10月04日、オム・ドンファン防衛事業庁長をインドネシアに派遣したのですが、なんの情報も出てきません。空振りだったものと推測されました。
案の定、2023年11月02日、国防調達計画局(DAPA)が「インドネシアは約束どおりの10月末までに支払い計画を提出しなかった」と発表しました。
Money1でもご紹介しましたが、インドネシアは「06月末までに支払いスケジュールを通知する」と言い、これがスルーされた後、「10月末までに計画を提出する」としていたのですが、今回もやっぱりバックれたのです。
オム・ドンファン防衛事業庁長は、国会の監査で「ジャカルタが約束を破り続けるなら『共同プロジェクト』を振り出しに戻す以外の選択肢はない」と述べました。
また「(ジャカルタが支払いの約束を守らないことは)両国空軍のための先進的な多用途戦闘機開発へのコミットメントに対する信頼を損なう」とも。
DAPA関係者は「ジャカルタの支払い計画を待つ間、インドネシアとのパートナーシップをどうするかについてさまざまな可能性を検討している」と述べました。
一応、DAPAは支払い問題を解決するため、今年末までにインドネシアとの共同プロジェクトに関する基本合意を改定する予定とのこと。
「プランB」ってなんだ?
インドネシアは、2022年02月、フランスからダッソー・ラファール戦闘機42機を購入する81億ドルの契約を結びました。
06月には、カタールから12機の中古のフランス製ミラージュ戦闘機を購入。
08月にはアメリカ合衆国『ボーイング』社から第4.5世代戦闘機F-15EXを24機購入する覚書に調印しています。
このような経緯を見ると、KF-21はもう必要ないのではないかとも思わされます。
なにせ、「ステルス化が完了すればF-35以上の戦闘機になる」などと言っているのは韓国の専門家だけで、「今さら第4.5世代の戦闘機を購入してどうするんだ」というのが、多くの識者が指摘するところです。
このような現状ですので、韓国メディアでは「Bプランが必要だ」との報道が出ていますが、そんなものがあるかどうかです。
一応、『THE KOREA ECONOMIC DAIRY』の報道では――KF-21の開発企業である『KAI』は「インドネシアからの拠出金がなくても財政難にはならない」とし、同社関係者は、「『プランB』があり、いつ実行に移すか検討している」と述べた――そうです。
また、「業界関係者によると、ポーランドやアラブ首長国連邦を含む幾つかの国がKF-21プロジェクトに関心を示しており、韓国との提携の可能性を探っている」としています。
本当でしょうか。
いずれにせよ、先にご紹介したとおり、初期量産数が半減される可能性が高まるなど、KF-21の向かう先は曇天になってきました。
(吉田ハンチング@dcp)