またか――なのですが、韓国では石油精製企業の業績が悪化しています。
2024年第3四半期時点で韓国大手4社の営業利益は以下のようになっています。
『SKイノベーション』:-6,166億ウォン
『S-OIL』:-5,737億ウォン
『GSカルテックス』:-5,002億ウォン
『現代オイルバンク』:-2,634億ウォン
小計:-1兆9,539億ウォン※ただし『現代オイルバンク』は精製部門の業績
全滅で赤字です。
なぜこんなことが起こるのかというと、原油価格が下がっているのが原因です。以下のWTIの日足チャートをご覧ください(チャートは『Investing.com』より引用/月足:以下同)。
韓国の石油精製会社は、仕入れた油を精製して製品にして販売。精製マージン(石油製品価格-原油導入価格)で儲ける仕組みです。
原油価格が急落すると、保有する在庫の評価が下がり、「在庫評価損」が発生します。
大幅に下落すると、精製会社が保有する在庫の価値が大きく目減りし、短期的に損失を被ることになるのです。
また、原油を精製して得られる利益(精製マージン)も低下します。原油価格が低迷すると製品価格も下がりますが、精製マージンが縮小します。
精製マージンが縮小すると、収益が大幅に減少し、業績悪化につながるのです。
原油の価格が下がって石油製品価格が下がると、儲けがなくなっていくのです。
上掲の赤丸で囲った部分は、コロナ禍で石油製品の需要が激減し、原油価格が急落、在庫がじゃぶじゃぶたまり、精製マージンがマイナスになるという悪夢のような状態に陥りました。
Money1でも記事にしましたが――生産すればするだけ赤字で、上掲4社は一日最大700億ウォンの営業損失を出す――という異常なサイクルに入りました。
その後、原油価格が上昇して石油製品価格も上昇、なんとか会社は吹き飛ばずに済みました。
※2024年04月にはWTI先物価格が一時マイナスになるという異常状態が現出しました。麻生閣下が記者会見で「誰もWTIについて聞かねえのか。マイナスだぜ?」言ったのは、このときです。
今また業績が傾いた状況になっています。
気になるのは、大統領に再選されたトランプさんが「石油生産だー!」と力が入っていることで、そうなると原油価格はもっと下がる可能性が出てきます。
アメリカ合衆国のインフレ抑制にはいいかもしれませんが、韓国の石油精製企業にとってはまた頓死状態に陥るかもしれません。
※ただし原油価格が下がりすぎると合衆国のシェールオイルは採算が合わなくなる。
(吉田ハンチング@dcp)