韓国銀行「日本の経験から学ぶことが出発点」⇒ 中国も「われわれは日本の失敗を研究しているから大丈夫」と言ってましたがドボン状況です

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李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁が就任してから『韓国銀行』の出す研究リポートは非常に興味深いものになりました。

「BOKイシューノート [第2025-14号]日本経済から振り返る教訓」も非常に良い内容です(リリースは2025年06月05日)。

先に、『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁が「韓国はこれまで10年以上も構造改革を怠ってきた」と述べたことをご紹介しましたが、そのため韓国経済は袋小路に陥っています。

このリポートは、袋小路を突破するために「日本のバブル崩壊」を分析し教訓を引き出そう――という主旨です。

中国とかいう国が同じようなことを(「日本のバブル崩壊を研究したのでわれわれは失敗しない」)言っていたのですが、今や不動産市場が崩壊し、世界の工場といわれた製造業も「トランプ高関税」によって青息吐息になっています。

今回の論文の序に当たる部分、なぜ日本の分析を行うのか――を述べた部分について、長いですが以下に引用してみます。

韓国経済はこの半世紀、世界がうらやむほどの大きな成功を収めた。

そして今、一世代に一度は経験するであろう内外的な激変の現場に立っている。

まず、対外的に見ると、これまで順風で韓国の成長を支えてきたグローバル通商秩序は、今や逆風に変わりつつある。

国家間の先端技術覇権競争が激化しており、地経学的安全保障を重視する保護貿易主義が徐々に強化されている。

例えば、アメリカ合衆国は自国中心の経済秩序を強化する過程で中国と対立しており、中国は先端⋅ 汎用技術に基づく生産自立と内需回復に集中している。

また、内部的には、過去に熱かった成長エンジンが長期間蓄積された構造的な問題が表面化し、急速に冷え込んでいる。

人口の高齢化がどの先進国よりも早く進行しているため、2021年UN統計から人口縮小社会に突入した(人口Onus時代)。

その結果、人口の潜在成長率への寄与度(BOKイシューノート,24.12月)は2000年代の0.7~0.9%pから21年以降0.2~0.3%pに大幅に低下した。

加えて、民間債務の累積に基づく不動産への過剰な資金流入現象が続いた結果、高生産性分野への資源配分が不十分で、韓国経済の生産性の増加速度が著しく鈍化しているのが現実だ。

では、韓国経済はこのような内外の挑戦をどのように突破していくのか?

本稿では、私たちと同じような成功経験と構造変化を経験した日本の経験から学ぶことがその出発点であると判断した。

そして、韓国経済の高い位相を考慮し、日本経済がグローバルベンチマーク成長モデルとして定着した
後、バブル崩壊後、長期間低成長を経験したという点に注目した。

日本が対内外環境が急変する当時の状況の中で下した社会的意思決定が、今日、振り返ってみるとどのような結果につながったのかを見て、その過程での成功は成功のまま、失敗は失敗のまま学べば、韓国経済が進むべき方向を見極める上で現実的なアドバイスを得ることができるからだ。

バブル崩壊前後の日本は、長期の低成長・低物価を生み出した負債・人口・技術の三つの側面からの構造変化に直面していた。

つまり、

❶資産市場発の負債累積、
❷人口高齢化、
❸グローバル水平分業化

という三角波が重なる状況であった。

もちろん、日本社会内でこのような構造変化がもたらす危機に対する警告の声がなかったわけではないが、これに対応した構造改革は、過去の成功体験の記憶、 利害関係者の強い政治的反対などで適切に実施されなかった。

このような構造的問題は構造改革だけが解策であるが、補完手段である経済政策に相当部分依存した結果、❹政府の財政余力は枯渇し、❺金融政策の有効性も長期間制約されるしかなかった。

そして、数十年の長期低迷を経てようやく労働力確保女性・高齢者・外国人、デジタル転換、先端産業(半導体など)の再構築などで目に見える成果を出し、再跳躍を図っている。

私たちが今置かれている状況も大差ない。

不動産発の家計債務が懸念される水準まで累積した結果、民間レバレッジ比率(GDP比)は2023年時点で207.4%に達しており、IMFが示す日本のバブル期の最高値(1994年・214.2%)に近づいている。

また、人口の高齢化スピードは日本よりも速い。

さらに、わが国は2000年以降、グローバル水平分業体制に積極的に参加し、中国向け・IT輸出を軸に成長してきたが、その基盤であるグローバル通商秩序が根本から揺らいでおり、中国特需も消滅しつつある。

こうした構造変化に積極的に対応しなければ、わが国も近いうちに財政健全性が悪化し、人口高齢化が進み、通貨政策の運用が制約を受け、家計債務の累積が進む状況に陥らざるを得ない。

また、韓国は2000年以降、グローバル水平分業化に積極的に参加し、対中国・IT輸出主導で成長してきたが、その根幹であるグローバル通商秩序が根本的に揺らいでおり、中国特需も消滅しつつある。

このような構造変化に積極的に対応しなければ、韓国も近いうちに財政健全性が悪化人口高齢化し、金融政策の運用が制約(家計負債の累積)される状況に陥るしかない。

では、私たちは日本の経験から何を学び、どのような方向に政策を進めるべきなのか。

本稿では、5つの教訓に注目し、政策の方向性を提示した。
(後略)

⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「BOKイシューノート [第2025-14号]日本経済から振り返る教訓」

日本の成功は成功のまま、失敗は失敗のまま学べば……として、韓国経済を再び上昇トレンドに戻すため(あるいは下りの速度を抑えるため)の提言を行っています。

非常に面白い論文ですので、「何を提言しているのか」については上掲のURLにアクセスして、原文をぜひお読みください。

問題は、「考えたこと」と「できること」は全く別の話だ――という点です。

「日本のバブルを研究したのでわれわれは失敗しない」としていた中国が現在どうなっているのか――を見れば誰でも分かることです。

まあ中国は、「中国共産党の指導が失敗」と認定されるとメンツ丸つぶれとなるので、「経済がどん底で大失敗」とは絶対に認めないのですが。

(吉田ハンチング@dcp)

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