韓国政府「融資を増やせ」と「融資を増やすな」を同時に言う ⇒ 8.13「不動産市場安定のための金融総合対策」の危うい中身。

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2026年08月13日、韓国政府は「不動産市場安定のための金融総合対策」を公表しました。

面倒くさい話なのですが、これだけはご紹介しておかなければなりません。


↑参照・引用元:『韓国 金融委員会』公式サイト「수도권 23만호+α 추가 공급, 주택 공급 촉진 및 청년 등 실수요자 금융지원 강화」

大統領に成りおおせた李在明(イ・ジェミョン)さんへの支持が下落傾向にあるので、これを回復するための緊急措置といえます。

そもそも「韓国では政治的でないものなど何もない」のですが、誰もが関心を持つ不動産対策で得点を稼ぎたいという動きに他なりません。

この「不動産市場安定のための金融総合対策」はPDFで22ページもある長い文書なので、和訳してこれを全部読んでいただくと読者の皆さまが大変なので、要旨をまとめます。


端的にいえば、アクセルとブレーキを同時に踏もうという

❶住宅を建てる側には大量の金融資金を供給する
❷住宅を買う側の投機的な借り入れは引き続き抑える
❸ただし青年・実需者には例外的に支援する
❹そのため家計融資の総量枠そのものは1.5% ⇒ 3%へ拡大する

という、「供給金融は緩和、投機需要金融は抑制実需金融は選別緩和」という政策です。

金融委員会自身が、緩和と抑止の二方向を同時に進める政策として説明しています。

なぜ突然こんなことを言い出したのか?

まず、なぜ08月13日に突然こんな対策を出したのか?――です。動機は極めて政治的なものですが、この金融対策は単独で出されたものではありません。

同日、国土交通部が「伝貰チョンセ月貰ウォルセおよび売買市場安定のための住宅迅速供給方案」を発表しています。

政府は2022年以降の住宅供給縮小を問題視(住宅供給が縮小すれば当然ながら価格が上昇します)。

2026~2030年の5年間に首都圏で135万戸を着工する従来目標に加え、新規宅地10万戸を含む23万戸+αを追加供給する方針を打ち出しました。

つまり、金融委員会の今回の対策は、この住宅大量供給計画に「カネを付ける」政策なのです。

その中身は大きく次の4本柱です。

❶住宅供給金融
PF保証・資金供給を26.3兆 ⇒ 47.8兆ウォン+α

「PF」は「プロジェクト・ファイナンス」の略です。

❷PF不良処理
正常化ファンド、シンジケートローン等を拡充

❸住宅購入需要
伝貰融資、DSRなどを使って投機需要は抑制

❹家計融資総量
年間増加率目標を1.5% ⇒ 3%へ引き上げ

不動産市場安定のための金融総合対策の8つのポイント

08月13日に公表された今回の「不動産市場安定のための金融総合対策」の狙いを8つのポイントでご紹介します。少し長くなりますが、面倒くさい方は飛ばしながら気になる箇所だけでもご覧ください。

まず「❶」です。

「PFへの金融支援を26兆3,000億 ⇒ 47兆8,000億ウォン+αに拡大」ですが、これはかなり大きな措置です。

具体的には、PF保証を2026年に23兆ウォン、2027年に33兆ウォン集中的に供給します。保証手数料30%引き下げ措置も2027年末まで延長し、早期着工案件についてはさらに10%引き下げます。

狙いは明白です。

土地や事業計画はある

しかしPF資金が付かない

着工できない

という案件に資金を流して、実際の住宅着工に持っていくわけです。


「❷止まってしまったPF案件も再生する」も大きなインパクトがあります。

正常案件だけではありません。

政府は韓国資産管理公社(略称「KAMCO」)のPF正常化ファンド3兆ウォンを呼び水にして、

銀行・保険業界のシンジケートローン:5兆ウォン
金融業界独自ファンド:10兆ウォン

まで拡充し、工事が止まった事業場の再開を支援します。

つまり、新規住宅への融資だけでなく、

PFが詰まって工事が止まった住宅案件を金融の力で再始動させる

ところまで踏み込んでいるのです。


「❸PF規制そのものも延期する」という点も重要です。

韓国政府はPFの健全性を高めるため、住宅事業者に自己資本をもっと入れさせるPF自己資本比率規制を導入する予定でした。

ところが今回、

2027年導入予定 → 2029年導入

と、2年間延期します。

理由は住宅供給です。今ここで自己資本規制を強化すると、資金力の弱い事業者がPFを組みにくくなり、住宅供給をさらに減らしてしまうためです。

これは明確な規制緩和です。


「❹再開発・再建築の「移住費融資」も出しやすくする」という点も見逃せません。

再開発・再建築では、既存住民が工事中に別の住宅へ移らなければならないため「移住費融資」が必要になります。

政府はこの移住費融資のLTV算定方式を2026年08月31日から変更します。

従来の資産評価だけでは十分な移住費を借りられないケースがあるため、

従前資産評価額と従後資産評価額のうち、大きい方

を使えるようにします。さらに2027年1月には追加移住費融資保証商品も新設します。


「❺中小建設会社などにも保証を付ける」としてもいます。

中小型建設会社を中心に、再開発・再建築などの整備事業融資保証商品を2027年01月に新設します。

さらに、住宅とオフィステルなどが混在する事業場の保証制度を合理化し、本PFへの移行・早期着工を促します。

また金融委員会は金融機関に対して、住宅供給分野へのPF資金供給を増やすよう促し、会社債やPF-ABCPなどについても市場安定プログラムを通じて資金調達を支援するとしています。

「PF-ABCP」は「Project Finance Asset-Backed Commercial Paper」
の略で、日本語にすれば「プロジェクトファイナンス資産担保CP(コマーシャルペーパー)」です。韓国住宅金融公社(HF)は、「PF事業に必要な資金を調達するため、施行会社に対する貸出債権を基礎資産として発行される、通常3カ月満期の企業手形」と定義しています。

有名な「レゴランド事件」はまさにこの「ABCP」を巡って発生しました。

ところが、「❻住宅を買うための借金は締める」のです。

ここから方向が逆になります。

政府は住宅供給側には大量にカネを流す一方、個人の住宅購入需要については、

「一貫した需要管理基調の下で投機的融資需要の遮断を継続する」

と明記しています。

具体的には、

伝貰融資管理の強化
DSRの所得算定基準の合理化
金融機関に対する資本規制強化
過度な住宅関連融資の抑制

を進めます。

したがって、

「住宅供給金融を増やす=住宅ローンを何でも自由に借りられるようにする」

ではありません。

むしろ政府が狙っているのは、

建設資金 → 出す
実需資金 → 出す
投機資金 → 出さない

という選別なのです。


ここが今回の施策について最も分かりにくかったところかもしれません。

❼家計融資総量目標は1.5% ⇒ 3%

――に拡大するのです。つまり、家計への資金の貸し出しを2倍にするとしています。

政府は2026年の家計負債総量増加率の管理目標を、

従来:1.5%

今回:3%

へ倍増させました。

金融委員会は、その理由を、

住宅供給拡大および青年・実需者支援の必要性など最近の状況変化を勘案

したため、としています。そして増加した融資余力は「住宅供給促進、青年の住居安定、実需者の困難解消など政策的目的に活用する」と明記しています。


「❽青年・実需者には『3点セット』を支援する」ともしています。

政府は、青年層について「青年住居支援3点セット」を導入するとしています。金融委員会はこれを、投機需要抑制を維持しながら青年など実需者に対する「ピンポイント支援」を強化するものと位置付けています。

つまり、一般的な住宅信用を全面緩和するのではなく、政策対象を指定して資金を流す発想です。

以上を一本につなげると、8月13日の「金融総合対策」の構造はこうなります。

住宅不足・PF停滞

住宅供給を増やしたい

PF保証・資金供給
26.3兆 ⇒ 47.8兆ウォン+α

PF自己資本規制も2年延期

移住費融資も出しやすくする

止まったPF案件にも正常化資金を投入

建設・着工を増やす

ところが同時に、

住宅価格が上がるのは困る

投機的住宅ローンは抑制

伝貰融資・DSR等の管理を継続

ただし青年・実需者は救済

そして、この二つを同時にやるために、

家計融資総量増加率1.5% ⇒ 3%

へ引き上げた、という構造になっているのです。

果たして狙ったとおりうまくいくかな?

今回の金融委員会の政策は「融資を増やせ」と「融資を増やすな」を同時に言っています。

アクセルとブレーキを同時に踏むような――と上記したのはそのためです。

ただし、韓国政府の狙いは「住宅を造るためのカネと実需者のカネは増やせ。しかし住宅価格を押し上げる投機資金は増やすな」です。

Money1でもしつこくご紹介してきたとおり、建設業が長く低迷しており、トンネルからまったく抜け出る兆しが見えません。

今回の政策は、PF問題がまだ片付いていないのに、PFを再稼働させようというものでもあります。建設業を活性化して、住宅問題も解決しようという企図があるでしょう。

狙いは分からないでもないですが、いかにも左派・進歩系「頭でっかち」の人士が考えたプランのように見えます。経済的無知蒙昧な李在明(イ・ジェミョン)さんもそうですが、この人たちは「市場」をなめています。

「市場はオレのいうことを聞くべき」と考えており、「市場をコントロールできる」と思い込んでいるのです。上に政策あれば下に対策あり――とはよくいったもので、突破する方法を見つけるものです。何より、PF問題を再稼働しようというのか、という危うさがあります。

李在明(イ・ジェミョン)が主導した8.13不動産対策が家計負債に壊滅的な打撃を与えた――と後年評価されないかが見ものです。

2026年08月から、家計融資、住宅価格、PF残高・延滞率、PF-ABCP、着工戸数を月次・四半期で追跡すれば、政府の狙いどおり「供給だけ増えて投機信用は抑制」という器用なことが本当にできたのか、かなり早い段階から兆候が見えてくるはずです。

(吉田ハンチング@dcp)

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