韓国ではじゃぶじゃぶお金が回されています。05月末時点で「M2」※1が約3,054兆ウォンに達したのは先にご紹介したとおりですが、さっぱり実体経済に効いている様子がありません。
「あれ? エンジンかかんねぇな」みたいな状況です。
2020年07月27日、韓国メディア『ソウル経済』はこの状況を「貨幣乗数から見る」(後述)というハードコアな記事を出しました(恐らく記者がかなり数寄者なのでしょう)。
非常に興味深く、面白い試みですのでご紹介いたします。
⇒参照・引用元:『ソウル経済』「解放しても解放してもお金が回らない」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
「わしの金は何倍になるんや」でお金の回り具合を測ろう
『韓国銀行』(国策銀行含む)が市中に流したお金がどのくらいの効果を生むのかを測るのに「貨幣乗数」(英語ではmoney multiplier)という指数が登場します。
『ナニワ金融道』みたいな言い方で至極ざっくり説明すると、「わしが供給した1円は何倍になるんや」ということです。
聞いたことのある方もいらっしゃるでしょうが、銀行には信用創造という機能があって、例えばあなたが銀行に預けた「100万円」は「100万円」にとどまりません。
銀行があなたの預けた100万円をAさんに貸し付けたら、
あなたの預けた100万円
Aさんに貸し付けた100万円
で200万円のお金があることになります。
この信用創造の力を使って、基のお金が何倍になるのか、これを「貨幣乗数」と呼びます。信用乗数(credit multiplier)というのも同義です。
この数字が大きくなれば、それだけ多くの信用を作り出しているわけですから、お金が回っていることにもなるわけです。
『ソウル経済』の記事では以下ような説明をしています。
(前略)
『韓国銀行』がマネタリーベース1ウォンを供給したときに信用創造を通じて増加するM2を意味する貨幣乗数(後略)
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による
「100兆ウォン」が空回りの悪夢
で、この貨幣乗数は韓国ではどのように推移しているのか?というわけです。
2019年12月から直近2020年05月までの貨幣乗数の推移をグラフにすると以下のようになります。
「下がっとるじゃないか!」なのです(笑)。
躍起になってお金を回したにもかかわらず、いやだからこそといえるかもしれませんが、貨幣乗数は低下しているのです。02月末から05月末にかけてM2は「約97兆ウォン」増えました。ざっくり100兆ウォンです。
本来であればもっと増えていないといけなかったわけです。
つまり、お金をまく効果が小さくなっいます。創造されるはずの信用(credit)、増えるはずのお金が小さくなってきているのです。
面白くないですか?
※1
M2とは、ざっくりいうと「市中にいくらお金があるのか」を示す指数です。
M2=現金通貨+預金通貨+準通貨+CD(預金通貨、準通貨、CDの発行者は、国内銀行等<マネーサプライ統計のM2+CD対象預金取扱機関と一致>)
⇒参照・引用元:『日本銀行』「マネーストック統計のFAQ」
https://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/faqms.htm/
追記
最初の原稿では『韓国銀行』が100兆ウォン回したことになっていましたが、そうではなくM2が100兆ウォン増えましたので、誤りでした。深くお詫びし訂正いたします。M2が100兆ウォンしか増えなかった――わけです。
(柏ケミカル@dcp)