韓国は、2019年07月に日本が行った「輸出管理強化」に反発して「素材・部品・装備の国産化」を声高に叫んでいます。
この動きは以降も途切れることなく、「日本には二度と負けない」と発言した文在寅政権は「素材・部品・装備の国産化」に資金を投じ続けています。
日本からの輸入が難しくなった半導体製造に関わる3つの素材
産業通商資源部は2021年01月26日に「第6回素材・部品・機器の競争力強化委員会開催」というプレスリリースを出しました。これは2021年に「R&D2.2兆ウォン、事業化2,500億ウォンへの投資」を宣言すると同時にこれまでの成果を確認した資料です。
中に、日本が輸出管理強化を行った半導体製造に関わる3つの素材についても報告されています。以下です。
『ソウルブレイン』フッ酸液の生産能力2倍に拡大し、『SKマテリアルズ』フッ化水素国内生産に成功
フォトレジスト
『デュポン』開発と生産設備の投資誘致、ベルギーのC社製品の代替投入など
フッ化ポリイミド
『コーロンインダストリー』生産・輸出、『SKC』工場新設テストと代替材料(UTG)投入
この中で「フッ酸」(フッ化水素の溶液)で取り上げられているのが、常に問題になる『ソウルブレイン』(SoulBrain)です。先にご紹介したとり、同社が12nine(純度99.9999999999)のフッ酸の大量生産能力を確保した――と産業通商資源部自身が2020年01月02日に発表しています。
『SKマテリアルズ』の方は、5nine(99.999%)なので「できるかもね」あるいは「できたかもね」で済むのですが、12nineの芸術品のような超高純度となると疑うしかありません。本当にできたのか?と。
焦点は「独自に作れたのか?」という点です。
上掲の「フォトレジスト」を見ていただきたいのですが、『デュポン』の生産工場を誘致した、と書いていますね。
つまり、海外企業が韓国に工場を造ってそこで国内需要がまかなえるなら、それでも韓国の「素材・部品・装備の国産化」だと考えてるふしがあります。日本から輸入しなくて済むのであれば、です。
「12nineにフッ酸を独自開発した」とは誰も言っていない
で、『コリア・エレクトロニクス』に2020年04月10日付けで面白い記事が出ているのです。「[特集]『12ナインフッ化水素』で名を上げたソルブレイン社」という記事です。
その中に非常に興味深い部分があります。一部を以下に引用します。
(前略)
ソルブレイン社は94年にステラケミファ社と「FECT」という会社を合弁で設立している。中央日報が昨年8月に報じたところによると
「全体生産量の約70%は日本のステラケミファから高純度フッ化水素を輸入した後、添加剤などを混ぜてサムスン電子が希望する条件に合う製品を提供する。残りの30%程度は中国から原材料(無水フッ化水素)を輸入して純度を高める精製作業をして納品する」と伝えている。
ステラケミファから輸入を担当するのがFECT社の役割のようだ。
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による(以下同)
さらに次のように続きます。
(前略)
ソルブレインの12ナインフッ化水素については、同社の独自開発のように報じられているが、それ以外の可能性についても考えられるだろう。
(後略)
つまり、誰も『ソウルブレイン』が12nineのフッ酸を独自開発したなんて言っていない、というわけです。01月02日の通商産業資源部のプレスリリースでも
①最高レベルの高純度フッ酸(12Nine)を、
②大量生産できる能力を確保した。
と書いてあるだけです。量産できるようになったとはありますが、12nineのフッ酸製造技術を独自に開発したとはどこにも書いてありません。
つまり『ソウルブレイン』は基本的にブレンダーであって、オリジナルの超高純度のフッ酸は日本の『ステラケミファ』から合弁会社『FECT』社に入り、これを『ソウルブレイン』がブレンドして『サムスン電子』などに出荷しているとしたら、辻褄が合うのではないでしょうか。
『コリア・エレクトロニクス』が「それ以外の可能性についても考えられるだろう」としているのは、そういうことではないでしょうか。
⇒参照・引用元:『韓国 産業通商資源部』公式サイト「第6回素材・部品・機器の競争力強化委員会開催」
(柏ケミカル@dcp)