かねてからご紹介しているとおり、韓国『産業通商資源部』のサイトには、「ソウルブレイン社、最高レベルの高純度フッ酸(12N)大量生産能力の確保(原文韓国語:筆者意訳)」というプレスリリースがあります。
以下がプレスリリースの掲載されている箇所です。
以下が表示されるプレスリリースです。大きく、ソウルブレイン社が「最高レベルの高純度フッ酸(12 nine)を大量生産できる能力を確保した」と書かれています。
⇒参照・引用元:『韓国産業通商資源部』「ソウルブレイン社、最高レベルの高純度フッ酸(12N)大量生産能力の確保(原文韓国語:筆者意訳)」
http://www.motie.go.kr/motie/ne/presse/press2/bbs/bbsView.do?bbs_seq_n=162526&bbs_cd_n=81¤tPage=1&search_key_n=&cate_n=&dept_v=&search_val_v=
このプレスリリースは、産業通商資源部の成允模(ソン・ユンモ)大臣が、ソウルブレイン社のプラントを2020年01月02日に訪問したことをきっかけに出されたものですが、訪問については、リリースの下部になっており(同リリースをスクロールしてみてください)、同部がいかにこの部分を重要視しているかが分かります。
ただし、このように重視し大きく扱っているにも関わらず、英語版のプレスリリースにはそれがありません。
同部の「英語版」のプレスリリースのページにいってみると、以下のようにそもそも文書がないのです。
韓国語で出したプレスリリースの英語版をいちいち作成するのが面倒なのかもしれませんが、上掲のとおり、2019年12月27日のリリースの次は2020年01月02日、その次は01月07日とリリースが飛んでいます。
またその01月02日のリリースも、「世界的に貿易課題があるにも関わらず、2019年の韓国の貿易額は3年連続で1兆ドルに達した」というもので、フッ化水素酸とは関係のないものです。
ただし「Photo News」というカテゴリーの中に「Minister Sung visits Korean hydrogen fluoride manufacturer」(韓国のフッ化水素製造企業を成大臣が訪問)という記事はあります(この記事は韓国語版の「Photo News」にもあります)。
この短い記事を以下に引用します。
Trade, Industry and Energy Minister Sung Yun-mo (center) made an on-site visit to the plant of Soulbrain, a Korean manufacturer of hydrogen fluoride, located in Gongju, South Chungcheong Province on January 2, in order to encourage the firm’s achievement in contributing to the domestic supply of high purity hydrofluoric acid to local chips and display makers.
01月02日、「産業通商資源部」の成允模(ソン・ユンモ)大臣は、韓国のフッ化水素製造業者であるソルブレイン社のプラントを訪問した。同社のプラントは忠清南道の公州市にある。ソウルブレイン社は、国内の半導体メーカー、ディスプレーメーカーへの高純度フッ化水素酸の供給に寄与しており、成大臣の今回の訪問は、同社プラントの業績に称揚するためのものだ。
The Ministry said since Soulbrain expanded the production volume through establishment and enlargement of related facilities, domestic supply stability for hydrofluoric acid has been secured.
産業通商資源部は、ソウルブレイン社が関連施設の建設と拡大を通じて生産量を拡大したことで、フッ化水素酸の国内供給が安定的になったとした。
Minister Sung said this is considered the first achievement of domestic self-reliance accomplished through the cooperation between business and government in response to Japan’s export regulation of three major materials.
これは、日本による3つの重要素材の輸出規制に対抗して、企業と政府の協力を通して達成された最初の独立独行の業績と考えられる、と成大臣は述べた。
The government will continue to work closely with domestic players to decrease Korea’s dependence on Japan for supplies of materials, parts and equipment.
韓国政府は国内企業と密接に動くことを続け、素材やパーツ、機材の供給における「韓国の日本依存」を減少させるだろう。
⇒参照・引用元:『韓国産業通商資源部』「Minister Sung visits Korean hydrogen fluoride manufacturer 」
http://english.motie.go.kr/en/pc/photonews/bbs/bbsList.do?bbs_seq_n=937&bbs_cd_n=1¤tPage=1&search_key_n=&search_val_v=&cate_n=
上掲のとおり、「Photo News」の記事内には「12 nine」といった、ソウルブレイン社が製造するフッ化水素酸がどのレベルの高純度なのかの記載はありません。韓国語版の「Photo News」の中にも同様の記事はあるのですが、フッ化水素酸の純度についての言及はありません。
ソウルブレイン社が日本企業に匹敵するような高純度のフッ化水素酸の製作に成功し、かつ大量生産の技術を確保したのであれば、この成果を英語で世界に喧伝しないのは不思議なことです。それこそサプライチェーンに変化をもたらすでしょうし、同社への投資を呼び込むことにもなるはずですが。
(柏ケミカル@dcp)