中国の「海警法」が問題となっています。日本の領土である尖閣諸島に侵入する中国海警局の船舶に武器の使用を認めるものです。
正式な名称は「中華人民共和国海事警察法」といい、2021年01月22日、第13回全国人民代表大会常任委員会の第25回会合において採択されました。
いわゆる海警法では、まず第22条に以下のようにあります。
海上において外国の団体および個人により国家の主権、主権および管轄権が不法に侵害され、または不法に侵害される危険が差し迫っているときは、海上警察機関は、この法律その他の関係法令の定めるところにより、その侵害を停止し、危険を除去するために、武器の使用を含むあらゆる必要な措置を講ずる権利を有する。
これだけではありません。武器の使用に関して定めた第6章が大問題です。長いですが、和訳を以下にご紹介します。
第四十六条
次の各号のいずれかに該当する場合には、海上警察機関の職員は、現場において警察用の武器その他の装備品または用具を使用することができる。
(1) 法令に基づき船舶に乗船し、検査し、傍受し、または接近して追尾する場合であって、船舶の航行を強制的に停止させる必要があるとき。
(2) 法律に基づき、船舶を強制的に撤去し、または強制的に曳航すること。
(3) 法令に基づく職務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
(4) その他、違法・犯罪行為をその場で弾圧しなければならない事情があるとき。
第四十七条
次の各号のいずれかに該当し、かつ、警告が効力を有しない場合には、海上警察機関の職員は、携帯する武器を使用することができる。
(1) 犯罪容疑者を乗せ、または武器、弾薬、国家機密情報、麻薬等を違法に運搬している証拠がある場合であって、船舶の停止命令に従わないとき。
(2) 外国船が不法に生産・操業活動を行うために当方の管轄水域に進入した場合であって、外国船が停船命令に従わず、その他乗船または検査に応じない場合であって、その他の措置を講じても違反行為を阻止することができないとき。
第四十八条
次の各号のいずれかに該当する場合には、海上警察機関の職員は、携帯する武器のほか、船舶に搭載する武器または航空機に搭載する武器を使用することができる。
(1) 海上テロ対策業務を遂行するため。
(2) 海上での重大な暴力事件に対処する場合。
(3) 法執行機関の船舶または航空機が武器その他の危険な手段を用いて攻撃を受けたとき。
第四十九条
海上警察機関の職員が法律に基づき武器を使用した場合であって、警告が遅すぎる、または警告がより重大な弊害につながるおそれがあるときは、直接に武器を使用することができる。
第五十条
海上警察庁の職員は、不必要な死傷者及び物的損害を回避し、または軽減するため、犯罪行為および犯罪者に対する危険の性質、程度および緊急性に照らして、武器の使用の必要な限度を合理的に判断しなければならない。
第五十一条
海上警察機関の職員による警察用武器の使用がこの法律に規定されていない場合には、人民警察の警察用武器の使用に関する規定及びその他の関係法令の規定に基づいて行うものとする。
海警が携帯する武器で対処するが、船舶に装備した兵器、また航空機の搭載した武器も使用することができるとしています。
「このような場合に該当する場合」として条件が一応示されていますが、尖閣諸島など日本の領海に侵入した中国海警局の船舶に対峙した場合、日本の艦船が引くわけにはいかないのは自明のことです。
そのため、
(2) 海上での重大な暴力事件に対処する場合。
(3) 法執行機関の船舶または航空機が武器その他の危険な手段を用いて攻撃を受けたとき。
のうち、(1)および(2)に該当すると判断して、中国側が日本艦船に武器を使用する可能性は十分にあります。また、侵略の意図を持って侵入した場合には、恣意的な判断でもって武器を使用するでしょう。しかも、船舶・航空機に搭載するどんな武器も使用してよいと定めているのです。
また、武器使用の条件として示されているものは、全て中国海警局が一方的に「該当する」と判断できます。
さらに第六十九条には以下のようにあります。
第六十九条
海上警察機関およびその職員は、海上の権利保護及び法執行の業務を遂行するにあたり、法に基づき、検察機関および軍事監督機関の監督に服する。
このように、海警局は中国軍の監督下にあることを明示しています。
ですから、海警局の日本領海侵犯は中国軍が行っているも同然なのです。
日本はこの認識の下に行動しなければなりません。「遺憾」を表明することなど面の皮の厚い中国共産党にはなんの影響も与えないのですから。
(吉田ハンチング@dcp)