放射線漏れ事故を起こしたとされた中国の台山原子力発電所で動きがありました。
↑広州・台山原子力発電所。PHOTO(C)『EDFEnergy』
この原子力発電所は中国南部、マカオから約61km、香港から約126km西方にあります。つまり、2つの有名都市のすぐ側です。
フランス『EDF』が「オレなら止める」とリリースを出した
2021年07月22日、フランス『EDF(フランス電力)グループ』が、「フランス国内で台山原子力発電所と同様のことが起きたら、EDFは原子炉を停止することになるだろう」というプレスリリースを出しました。
『EDF』は、台山原子力発電所を建設・運営する『広東台山核電合営有限公司』の株式を30%持っています。
↑『EDF』のプレスリリース(2021年07月22日付け)。明らかに『台山核電合営有限公司』へのけん制であり、同時に『台山核電合営有限公司』が停止のリリースを出すための布石になりました(後述)
ただし、
In Taishan, the corresponding decisions belong to TNPJVC.
台山では、これに対応する決定は『台山核電合営有限公司』(TNPJVC)によって下される。
と結んでいます。
つまり『EDF』は、フランス国内の原子力発電所で同様のインシデントがあれば、オレなら原発の運転を止める。しかし、台山原子力発電所について「決定するのはアンタたちだ」と言っているのです。
また、このプレスリリースには見逃せない部分があります。
(前略)
Analysis of the data available to EDF on fuel rod loss of sealing indicates that the situation is evolving ; as such it is being continuously monitored by the operator.
(後略)EDFが入手できたデータを分析したところ、燃料棒のシーリングの破損については状況が進展しており、そのためオペーレーターが継続的に監視を続けている。
⇒参照・引用元:『EDF』公式サイト「EDF’s communication regarding the Taishan Nuclear Power Plant’s No.1 reactor」
「the situation is evolving」と書いてあります。「evolving」は「進展する」「発展する」という意味ですから、大丈夫なのか?と読む者を心配させます。
原発運営会社がやっと停止の決定を下す!
2021年07月30日、『台山核電合営有限公司』は「1号機の原子炉を停止することを決定した」と声明を出しました(下掲)。
この停止については、「1号機の運転中に少量の燃料破損が発生しているが、技術的な仕様の範囲内であり、安定した運転を続けることができる」「このメンテナンスのための停止は、中国とフランスの技術者が十分にコミュニケーションをとった上で決定された」としています。
なんらかのインシデントがあったことが「発覚」してから1カ月以上たってからの停止決定となったわけです。しかも『EDF』の説明によれば、その間に「状況は進展した」のです。
「小量の燃料の破損」といい、あくまでも「メンテナンスのための停止」と強弁していますが、実際はどうなのかが気になるところです。
中国共産党から正確な報告が出てくるとは思えないため、フランスの良心に従った報告に期待するしありません。
(吉田ハンチング@dcp)