韓国では電気自動車用のバッテリーを主要輸出品目として育成し、世界トップシェアを確保しようとしています。2021年07月08日には青瓦台・大統領府から「K-バッテリー戦略」が出て、40兆ウォン(約3兆7,600億円)規模の投資を行うとしました。
上掲の記事でご紹介しましたが、文在寅政権の毎度の話で40兆ウォン出すのは企業。政府は減税措置などを行うのでみんな頑張ってね――という話に過ぎません。
それはともかく、韓国で電気自動車用のバッテリーといえば『サムスンSDI』『SKイノベーション』『LGエネルギーソリューション』の大手3社ですが、韓国メディアにこの三社が現在四重苦に直面している、という報道が出ています。
4つの苦のうち最も手強いのは……
四重苦と表現されるのは、以下の4つの「苦しみ」です。
②物流コスト
③金利
④為替レート
まず①ですが、これが最も問題です。リチウム、ニッケル、コバルトなどの希少金属を使うのですが、これらの価格はうなぎ上りに上がっています。
リチウム価格は、2021年08月17日時点でトン当たり9万2,500元、1kg92.5元ですが、これは2020年末が1トン当たり4万6,450元でしたから。ほぼ2倍の価格です。
ニッケル価格は、2021年08月17日時点でトン当たり1万9,488ドル。2020年末が1万6,550ドルでしたから、「17.8%」上昇しています。
コバルト価格は、2021年08月時点でトン当たり5万2,50ドル。同様に2020年末の3万2,000ドルと比較して1.64倍になっています。
※価格は全て『Trade Economics』チャートより
原材料が上昇したからといってすぐに製品価格に転嫁することはできませんので、韓国バッテリーメーカーの収益率を圧迫します。なにせ、これら原料価格は製品価格の40%を占めるといわれるのです。
次に②。韓国では「物流大乱」という言葉を目にしますが、コンテナ・船便不足で物流コストが急騰しています。韓国の輸出産業全体が苦しめられており、バッテリー企業も同じです。
③は金利上昇への懸念です。韓国では企業への融資でも変動金利を選択することが多く、70%に達すると目されています。金利が上昇すると、利子払いの金額が上昇して企業にとって負担増になります。当然、利益を圧迫します。
最後に④。現在ウォン安が急激に進行しており、リチウムなどの原料を全てを輸入に頼るバッテリーメーカーにとっては、ウォン安は大変困った事態です。原料価格の高騰もあって衝撃を倍加しています。
――というわけで、韓国バッテリーメーカーは4つの苦しみを背負っているという件をご紹介しました。
韓国と真正面から競合している中国メーカーには国内でリチウムが採れるなど、韓国企業と比べて有利な点があります。韓国企業の苦しい戦いはこれからも続きそうです。
(松田ステンレス@dcp)