韓国の外貨準備高は、経済危機時に耐えられるだけあるのか、は気になるところです。
そもそも『韓国銀行』が公表している分だけ本当にあるのかはひとまず置いて、いくらあれば経済危機にも対応できるのか、です。
韓国の外貨準備は全然足らない!という主張
2021年08月26日、韓国の世宗大学のキム・デジョン経営学部教授が、韓国の貿易学会で「ポストコロナと韓国の新通商戦略」という論文をオンラインで公表した、と明らかにしました。
この中で、キム教授は「韓国の外貨準備は全く足らない。もっと外貨準備高を増やさないと危ない」と主張しています。
いくらいるのかというと、キム教授によれば「9,300億ドル」です。
2021年07月末時点で韓国の外貨準備高は「4,587億ドル」でした。教授の主張から「4,713億ドル」も足りません。
簡単にいえば、キム教授は外貨準備高を倍に増やせといっているのです。
その根拠としているのが、韓国のGDPの拡大です。
韓国のGDPはかつての危機時より増大し、2020年基準で約1兆6,300億ドルです。ドルが足らないと危機に陥る世界の他の国と比較して、韓国も同様の目に遭う可能性があるとしています。注目しているのは外貨準備高のGDP比です。
キム教授の表組を以下に引きます(スマホでは表組は横にスクロールできます)。
GDP(億ドル) 外貨準備高(億ドル) 外貨準備高/GDP スイス 7,480 10,846 145% 香港 3,470 4,916 142% シンガポール 3,400 3,984 117% 台湾 6,026 5,433 90% サウジアラビア 7,698 4,459 58% ロシア 14,800 5,917 40% 韓国 16,300 4,586 28% インド 26,899 5,880 22% ブラジル 19,093 3,565 19% ⇒データ引用元:『世宗大学』公式サイト「世宗ギムデジョン教授「為替急騰、IMF外国為替危機、テーパリング備えよう」韓国銀行基準金利1.25%まで上げること」
上掲のとおり、韓国の外貨準備高はGDPの「28%」しかありません。
また、為替レートが急騰してドルが不足している国について以下のように述べています。
(前略)
2021年の為替レートが急騰してドルが不足している国は韓国を含む、トルコ、インド、インドネシア、ブラジル、そして南アフリカ共和国である。
(後略)
「ドルが足らない」とはっきり言っていますが、大丈夫なのでしょうか。
9,300億ドル要る根拠は『BIS』
なぜ必要な外貨準備高が9,300億ドル要るか、については以下のように計算根拠を示しています。簡単にいえば、『BIS』(Bank for International Settlementsの略:国際決済銀行)基準に照らせば、です。
韓国の適正な外貨準備高
IMF:1,500億ドル
輸入金額3カ月分IMFの新提案:6,810億ドル
輸出金額5%+短期外債30%+外国人株式資金15%+「M2」5%
(上記の100~150%)ギドッティ=グリーンスパン・ルール:4,500億ドル
輸入金額3カ月分+短期外債(3,000億ドル)『BIS』基準:9,300億ドル
輸入金額3カ月分+短期外債+外国人株式投資の1/3+居住者外貨預金(700億ドル)※データ引用元は同上/筆者意訳/?な点がありますがキム教授のママ/また「IMFの新提案」としているのは「Assessing Reserve Adequacy Matrix:ARAM」のことです。ちなみに、変動相場制の国の場合には、「5%×輸出額 + 5%×広義マネーサプライ + 30%×短期対外債務 + 15%×その他負債」で計算します。ここで計算される外貨準備高は必要最低限のものです。キム教授が引いている「ギドッティ=グリーンスパン・ルール」、いわゆる「GGルール」は「ある基準以上の確率で、1年以内に新たに資金を借りる必要のない相当額の外貨準備を保つ必要がある」という考え方です。
とりあえず、上掲のとおりの根拠でキム教授は「9,300億ドル要る」としています。
日本は日韓通貨スワップを拒否したし
興味深いのは、韓国に高いリスクがあり、なにがなんでも外貨準備高を積み増さなくてはならない、としていることです。
キム教授の指摘するのは以下のようなことです。世宗大学のプレスリリースから以下に引用します。
(前略)
キム教授は、「米韓通貨スワップの有効期限が迫り、日韓通貨スワップは拒否され、短期外債の割合は上昇しており、貿易依存度は世界第2位の65%、新興国国家の不渡りなどで国際金融市場の不確実性が増加している」と述べた。韓国の外貨準備高は、経済規模に比べて非常に不足している。
韓国はGDP1.6兆ドルの28%にとどまっている。
外貨準備高/GDP比率は、スイス145%、香港140%、シンガポール117%、台湾90%、サウジアラビア58%である。キム教授は「韓国を含む外貨準備高/GDP比率が30%以下である国は、非常に危険である。為替レートの急騰が最もいい信号である」と指摘した。
日本は韓国が要求した日韓通貨スワップ締結を拒否した。
強大国とは実利外交をしなければならない。
国防のように、国際金融市場でも、私たちが自力で経済を守ることができるように、第1の盾となる外貨準備高を確保しなければならない。
(後略)※データ引用元は同上
なぜか日韓通貨スワップが拒否されたことがリスクに入っていますが、これは、かつて麻生外相が述べたとおり「韓国は国同士の約束を守らない」と見なされたためです。ですから、韓国が「実利外交」をするかどうかは関係ありません。
韓国が約束を守ることを実証すればいいだけの話です。
ともあれ、キム教授によれば、ウォン安が進むのをいいシグナルとして、韓国には危機が迫っていることが分かり、また外貨準備高は現在のレベルは全然足りないそうです。
(吉田ハンチング@dcp)