韓国は輸出一本で食べている国で、その輸出を支えているのは製造業です。いまだに製造業が主力となっているので韓国は不利だ、という主張が韓国メディアから出ています。
なんの話かというと、二酸化炭素削減の件です。
製造業の割合が高い方が二酸化炭素の削減は難しい?
『G20』(主要20カ国・地域首脳会議)と『COP26』(第26回気候変動枠組条約締約国会議)が近付いており、そのためか韓国メディアでも「気候変動」「二酸化炭素の削減」「カーボンニュートラル」といった話題が増えているのです。
韓国の場合、文大統領が主導し、韓国政府が示した「2050カーボンニュートラル」のシナリオがまるで実現不可能なものなので、韓国メディアが懸念を表している面もあります。
しかし今回ご紹介するのは、ワールドワイドで二酸化炭素削減が叫ばれている中、韓国は製造業が多く、すでに製造業の脱却を進めてきた他の先進国よりも余計にしなければならない。韓国は不利だ――という主張です。
韓国メディア『ソウル経済』は、2021年10月24日、「産業の再編終えた先進国が事実上強制…製造業中心の韓国などはメガトン級悪材料」という記事を出し、韓国の立場を嘆いています。
以下に記事の一部を引用します。
(前略)
一方、専門家たちは、先進国が事実上強制している「カーボンニュートラルの歩み」に無理に歩調を合わせた場合、最終的には先進国の「はしご蹴り」戦略に乗ることになるという懸念を提起した。カーボンニュートラルが「行くべき道」なのは事実だが、サービス業を中心に産業構造を改編した先進国と、製造業を中心とする韓国のような中進国の立場は大きく異なるからである。
(後略)
あれだけ「韓国 = 先進国」にこだわる韓国メディアが、しおらしく韓国のような中進国と述べている点に驚きを禁じ得ませんが、要は「もはや製造業を中心として国が成立していない先進国が韓国にカーボンニュートラルを強制するが、先進国と同じレベルで二酸化炭素の削減を求められても困る」と、ここにきて困っているのです。
韓国を成立させているのは、自動車、鉄鋼、石油製品、家電などの輸出ですが、これらの製品を生み出すためには、工場や高炉、発電所などを稼働させなければなりません。その過程で大量の二酸化炭素を発生させます。
これを削減しろといわれても……というわけです。
先進国はGDPに占める製造業の割合が低いのか?
当該記事ではGDPに占める製造業の割合を比較しています。これが面白い点です。
つまり、二酸化炭素削減にばかり注力すると製造業により大きな負担がかかり、するとGDPに占める製造業の割合の大きな韓国では、経済成長が縮んでしまう可能性があるといいたいわけです。
以下に記事の一部を引用します。
(前略)
『経済協力開発機構』(OECD)によると、韓国の製造業が国内総生産(GDP)に占める割合は、1991年に27.6%、2019年27.5%で30年足踏み状態だ。一方、カーボンニュートラルを叫んいる欧州連合(EU)と他の先進国は、過去30年余りの間に産業構造の転換を実質的に成し遂げた。
グローバルな製造大国と呼ばれる、ドイツのGDP比製造業の割合は、同期間に24.8%から19.1%に低下し、金融大国であるイギリスも同じ期間16.3%から8.7%に低下した。
ファッションと観光部門の絶対強者であるフランス(15.9% → 9.8%)、イタリア(19.1% → 14.9%)も製造業への依存度が30年間で大幅に低下した。
(後略)※データ引用元は同上
先進国は製造業のGDPに占める割合が上掲のとおり低くなったので、その分、韓国より二酸化炭素削減も楽だというのです。
まとめると以下のようになります。
ドイツ:24.8% ⇒ 19.1%
イギリス:16.3% ⇒ 8.7%
フランス:15.9% ⇒ 9.8%
イタリア:19.1% ⇒ 14.9%
韓国:27.6% ⇒ 27.5%
韓国メディアの記事にしては「日本が登場しないな」と思われるかもしれません。記事の後段で日本も登場するのですが、『OECD』の元データを見ていただいた方が早いでしょう。
日本も製造業の対GDP比率は低下しています。アメリカはもっと低く、2019年には「10.9%」にまで下がっているのです。
もし「対GDP比で製造業の割合の高い国の方が二酸化炭素の削減は大変」というのが本当なら、確かに韓国の方が大変ということになります。
しかし、本当に問題なのは、無茶なシナリオを立てて実現不可能なプランへ産業界を駆り立てている御国のトップではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)