もう05月半ばになり、次のアメリカ合衆国『FOMC』(Federal Open Market Committeeの略:連邦公開市場委員会)が意識されるよう時期になりました。
06月・07月にも合衆国は連続で政策金利を「0.5%」上げるだろうと見られています。
さて韓国。合衆国との金利差が拡大すると資金流出が懸念されます(もう始まっていますが)。
『韓国銀行』が05月に規準金利を上げるかどうかが注目されるのですが、尋常ではないインフレに襲われている韓国としては資金流出を防ぐこともそうですが、インフレストップのためにも金利上昇もやむを得ないところ。
しかし、これを行うと異常な速度で増えた家計負債に甚大な影響を与えます。家計の利払い金額が増加してドボンになる家計が増えます。すると、銀行が不良債権を増やすことになります。
この点について、2022年05月12日、あの『全国経済人連合会』が興味深いリポート※を出しています。
実は「金利の上昇は家計よりも企業により大きな被害を与える――というのです。曰く「企業負債の方に与える影響の方がより大きく、ローンの延滞率が上昇する」としています。
企業の延滞率は家計の倍上がる!
最初に結論を書いてしまうと、同リポートでは「(規準金利を上げて)企業ローンの金利が1%が上昇する時、企業ローン延滞率は約0.2%増加する。家計ローン延滞率は、家計ローンの金利が1%上昇する時、約0.1%増加する」と推計しています。
つまり、ローンの金利が同じ1%上昇しても、ローンの延滞率は家計で「0.1%」、企業は「約0.2%」上昇する。
つまり、延滞率は企業の方が家計の約2倍上がるわけです。
『韓国銀行』の規準金利の上昇の決断が「家計負債の時限爆弾」に点火することになるのではないか、と懸念されてきたのですが、実は企業負債の方にも気を付けないと危ない――とこのリポートは告げています。
『韓国銀行』は金利差拡大も許容するか?
『全国経済人連合会』のこのリポートは、結論として以下のように述べています。
(前略)
高い物価上昇率の持続のため、今後『韓国銀行』の追加的な基準金利引き上げは避けられないと判断するが、合衆国のビッグステップのような大きな引き上げに追従する必要はないと指摘する。経済主体が金利引き上げに適応できる時間が必要なため、あまりにも速い速度の金利引き上げは得よりも害が大きくなるという分析である。
家計と企業の消費および投資萎縮、金融健全性の低下、それに伴う景気萎縮の加速化などの副作用を減らすことができる水準内で金利引き上げ速度を調整するように報告書は注文する。
合衆国の金利引き上げ速度が速すぎると、短期的に米韓政策金利の逆転も許容できなければならないと強調した。
(後略)
短期的に米韓の金利差が逆転しようとも、それは許容すべきである――と述べています。
この提言は、李昌洋(イ・チャンヤン)『韓国銀行』新総裁の発言にも符合します。
先にご紹介したとおり、政府・企業・家計の三部門で、増加速度で見るとまだましなのは企業負債だけです。しかし、規準金利の上昇は家計負債よりも企業負債の方により大きな影響を与えるとのこと。
実際、韓国の企業の資金調達は金利上昇で困難になってきています。
さて、『韓国銀行』がどのように判断するでしょうか。次の通貨政策方向会議は05月26日です。
※この『全国経済人連合会』のリポートは「2006年第1四半期~2021年第4四半期の資料」を基に分析した結果、としています。以下を参照してください。
⇒参照・引用元:『全国経済人連合会』公式サイト「[ハン・ギョンヨン]米国金融緊縮の展開と金利政策に関する示唆」
(吉田ハンチング@dcp)