これもまた補助金を巡る戦いといえるかもしれません。
「K-なんとか」は「国家戦略技術」です
次期主力産業、またインフラ基盤として「水素社会を実現をするための関連技術」をどう扱うかで、韓国の産業通商資源部(経産省に当たる)と企画財政部(財務省に当たる)が激突しています。
何をもめているかというと、「国家戦略技術」に認定するかどうかです。
文在寅大統領は何かというと「K」を付けて国家ぐるみで応援するものを認定、推すのが好きな人ですが、先に文大統領が大々的に公表した「K-半導体」「K-バッテリー」「K-ワクチン」は国家戦略産業と認定されています。
認定されると、研究開発(R&D)費用や設備投資にかかる資金に対して最高水準の税額控除を受けられるという特典があるのです。
お金を出すのではなく税額控除というのがケチっぽいですが(もっといえばアメリカ合衆国に工場建てた方がもっと大きなメリットが得られるという考え方もあります:例えば『サムスン電子』)、それでもこれは大きなメリットです。
韓国には水素関連の基礎技術はありません
で、水素関連技術もこれに含めて大きく育てたい、というのが産業通商資源部の立場。(実現できるかどうかはともかく)すでに「水素経済履行基本計画」を策定しています。
このトラタヌの計画を実現するためには、とにかく基礎技術を開発しなければなりません。はっきり言えば韓国には水素関連の基礎技術はないに等しい※ので、とにかく税額控除でもなんでも与えて、企業を釣らなければならないのです。
鳴り物入りで喧伝した水素シティー「江原テクノパーク」の水素製造設備は『現代ロテム』が納入していますが、これは日本の『大阪ガス』から技術移転を受けて製作できたもの。『韓国エネルギー技術研究院』が200億ウォンかけて開発したという国産技術は役に立ちませんでした。
この産業通商資源部に対して、企画財政部は「お金の権限を握っている省庁」ですので、考え方がシビアです。限られてた予算の中で対処しなければならないので、あれもこれもに控除を与えるわけにはいきません。税収が減るからです。
企画財政部にとっては、合衆国中国の間で綱引きが行われている「サプライチェーンの組み替え」に対応するのが先です。
韓国企業は中国に深入りしており、そのリスクを減らすため、半導体・バッテリー・ワクチン(バイオ)などを支援する方が優先度が高いのです。
この企画財政部の視点に立ってみると、そもそも水素関連技術がないわけですから、「なぜないものを支援する話になるのか」「ないものは認定できないだろう」となります。
韓国メディアは嘆きますが……
――というわけで、残念ながら水素関連技術は韓国の国家戦略技術には認定されませんでした。
この顛末に対して、例えば韓国メディア『ソウル経済』は「国家戦略から水素技術が抜け落ちた」と嘆きの記事を出しています。
気持ちは分からないではないですが、ないものを、例えば「K-水素」などと呼ぶこのはおかしな話です。
文大統領が「K-水素だー」などと言い出せばまた別でしょうが、韓国が水素社会実現に向けて本腰を入れるのはずいぶん先になるものと思われます。
(吉田ハンチング@dcp)