↑「Genesis GV80 Plug-in Fuel Cell Concept」PHOTO(C)『現代自動車』
韓国『現代自動車』が水素自動車の開発を諦めたのではないか、という報道が出ています。韓国メディアの日本語版でも、例えば『朝鮮日報(日本語版)』に2021年12月28日、「【独自】現代自動車、『ジェネシス』水素車開発を中断」というタイトルの記事が出ました。
⇒参照:『朝鮮日報(日本語版)』「【独自】現代自動車、『ジェネシス』水素車開発を中断」
ことの起こりは、2021年11月の『現代自動車』の組織改編・人事異動です。それを見ると、「燃料電池車(水素自動車)を担当する部署が大幅に縮小された」ことが分かったので、第3世代の燃料電池車の開発が断念されたのではないか――という推測が出たのです。
『朝鮮日報(日本語版)』の記事では、事業内容の進捗点検で「『第3世代(水素)燃料電池』の開発成果と研究進ちょく度が当初目標に遠く及ばない」と判明したので、そのような組織改編になったとしています。
また、同紙の記事では関係者の言葉を以下のように引いています。
(前略)
現代自動車の事情に詳しいある関係者は「ジェネシス水素自動車開発は合計4年間という開発期間を目標に約1年進められた状態だったが、第3世代燃料電池問題で中断されている状態だ」「いつジェネシス水素自動車の研究・開発が再開されるのかも不透明だ」と語った。
(後略)
この報道が正しければ、『現代自動車』の高級ブランドである「ジェネシス」の水素自動車版はリリースされないことになります。
ところが、韓国メディアの中には「そうではない」と『朝鮮日報』の記事を否定する報道を出しているメディアもあるのです。例えば『AutoView』は2021年12月28日付け記事の中で以下のように書いています。
ジェネシスブランドで水素車を出さないといううわさが流れた状況で、ジェネシス側がこれを正面から反論した。
スタートはジェネシスブランドで水素車の研究を暫定中断するというニュースが出てきてからだ。
第3世代燃料電池を開発中だったが、水素自動車技術と市場性が期待に及ばないという評価で、現在進行中の研究を保留することにしたというのが主な内容だ。
現代自動車は去る11月、燃料電池担当組織を改編しながら研究成果を中間点検し、事業問題を発見したと述べている。
記事の内容に対してジェネシスは「水素電気自動車の開発を中断するという内容は間違っている」とし「開発の方向性は変わるかもしれないが、新車の開発自体を中断するわけではない」とし、ジェネシスブランドに水素自動車が追加されることを明らかにした。
これと共に「『現代自動車』グループが今年11月、組織改編と人事を通じて燃料電池担当部署の役割を大幅に縮小したというニュースが出たが、これも事実ではない」とし、「『現代自動車』グループはむしろ燃料電池を担当する組織の力をさらに強化した 」と説明した。
(後略)
注目ポイントは「開発の方向性は変わるかもしれないが」という点です。
「第3世代燃料電池」の開発がうまくいっていないので、それを搭載したジェネシスは無理なのでしょう。しかし、「第2世代燃料電池」を搭載した第2世代「NEXO(ネクソ)」はすでに販売されています。
ですから、「第3世代燃料電池」搭載は諦めて、今ある「第2世代燃料電池」を搭載したジェネシスは出るだろう――そういう意味ではないでしょうか。
また、『アジアタイムズ』には「ジェネシス水素電気自動車の放棄?現代自動車、コア部門ではなく『格上げ』」という記事が出ており、以下のように書いています。
(前略)
29日、自動車業界によると、『現代自動車』グループの水素電気自動車(FCEV)開発意志は依然として熱い。『現代自動車』グループが先月、水素燃料電池研究開発組織を拡大・改編したという部分から、そのような評価が出ている。
『現代自動車』グループは、既存の燃料電池事業部から水素燃料電池開発センターを切り離し、二つの部署に改編した。これは、当時専門性と研究・開発力を整えるための組織改編と分析された。
特に燃料電池事業部と水素燃料電池開発センターを統括する水素燃料電池担当を新設し、最高責任者に研究開発本部副本部長であるパク・ジョングク社長が座った。
水素燃料電池は水素電気自動車の核心技術に挙げられる。
業界関係者は「これより前は専務クラスの役員が引き受けたことを、社長クラスの役員が務めることになった」とし「組織の地位が格上げされたと見ることができ、『現代自動車』グループが水素電気自動車の開発を放棄したという話は論理的におかしい」とした。
(後略)
と、こちらも『現代自動車』が水素自動車を諦めたわけではない、と報じています。ただ、第3世代の燃料電池の開発が難航していることは確かなようです。
そもそも『現代自動車』が水素自動車を出せたのは、『トヨタ』が特許を公開したからです。『トヨタ』は2020年12月09日、水素自動車「MIRAI(ミライ)」の第2世代モデルの販売を開始しました。
「水素社会はまだ遠い」といわれたりして、『トヨタ』の「MIRAI」もどうなるのか分かりませんが、『トヨタ』がまた何か新規技術の特許を公開すれば、『現代自動車』の開発も進むのかもしれません。
(吉田ハンチング@dcp)