韓国の次期大統領選挙まで1カ月余りとなりましたが、政府与党『共に民主党』の李在明（イ・ジェミョン）さんが興味深い発言をしています。
2022年02月02日、李在明（イ・ジェミョン）さんは、大統領になったらまず行うことを聞かれて「50兆ウォン以上の緊急財政命令に署名する」と答えました。
日本では全くといっていいほど知られていませんが、韓国の憲法第76条には、大統領が非常時に国会の承認の得ずに法的拘束力のある命令（これが緊急命令）を出せる――と規定されています。
以下が憲法第76条です（面倒くさい方は斜め読みで大丈夫です）。
대한민국헌법
大韓民国憲法제76조
第76条① 대통령은 내우ㆍ외환ㆍ천재ㆍ지변 또는 중대한 재정ㆍ경제상의 위기에 있어서 국가의 안전보장 또는 공공의 안녕질서를 유지하기 위하여 긴급한 조치가 필요하고 국회의 집회를 기다릴 여유가 없을 때에 한하여 최소한으로 필요한 재정ㆍ경제상의 처분을 하거나 이에 관하여 법률의 효력을 가지는 명령을 발할 수 있다.
①大統領は、内外為替・天変地異または重大な財政・経済上の危機において、国家の安全保障または公共の安寧秩序を維持するために緊急な措置が必要で、国会の集会を待つ余裕がないときに限り、最小限に必要な財政・経済上の処分をしたり、これに関して法律の効力を持つ命令を出したりすることができる。
② 대통령은 국가의 안위에 관계되는 중대한 교전상태에 있어서 국가를 보위하기 위하여 긴급한 조치가 필요하고 국회의 집회가 불가능한 때에 한하여 법률의 효력을 가지는 명령을 발할 수 있다.
②大統領は、国家の安全衛生にかかわる重大な交戦状態において、国家を補うために緊急な措置が必要で、国会の集会が不可能なときに限り、法律の効力を有する命令を発することができる。
③ 대통령은 제1항과 제2항의 처분 또는 명령을 한 때에는 지체없이 국회에 보고하여 그 승인을 얻어야 한다.
③大統領は、第1項及び第2項の処分又は命令をしたときは、遅滞なく国会に報告し、その承認を得なければならない。
④ 제3항의 승인을 얻지 못한 때에는 그 처분 또는 명령은 그때부터 효력을 상실한다. 이 경우 그 명령에 의하여 개정 또는 폐지되었던 법률은 그 명령이 승인을 얻지 못한 때부터 당연히 효력을 회복한다.
④第3項の承認を得なかったときは、その処分または命令は、その時から効力を喪失する。この場合、その命令により改正または廃止された法律は、その命令が承認を得なかった時から当然効力を回復する。
⑤ 대통령은 제3항과 제4항의 사유를 지체없이 공포하여야 한다.
⑤大統領は、第3項及び第4項の事由を遅滞なく公布しなければならない。
⇒参照・引用元：『韓国 法制処』公式サイト「大韓民国憲法 第76条」
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による
李在明（イ・ジェミョン）さんの「緊急財政命令を出す」発言は、「憲法第76条の第1項に則って50兆ウォン以上の財政出動を行えと命令する」という意味です。
もともと李在明（イ・ジェミョン）さんはベーシックインカムなど、ばらまき政策に熱心な人ですが、国民がベーシックインカムについて否定的と見るや、公約から直ちにこれを除きました。個人事業主の皆さんが困っていると聞くと補正予算を組めと声高に叫びました。
今回の「緊急財政命令を出す」という発言も、真正のポピュリストである李在明（イ・ジェミョン）さんらしい発言です。
しかし……です。
第76条第1項をよく見てください。「国会の集会を待つ余裕がないときに限り」と発動条件が制限されています。
確かにコロナ禍は天変地異の条件を満たしているかもしれませんが、現在、韓国では普通に議員の皆さんが集まって国会を開催できています。
ですので、国会を無視して「大統領が緊急命令を出す」などということは、完全に憲法に違反する行為です。
どうも李在明（イ・ジェミョン）さんという方は法を自分の都合の良いように解釈する癖（へき）がありますので、韓国の皆さんは注意すべきでしょう。李在明（イ・ジェミョン）さんが大統領になった暁には、日本も気を付けなければなりません。
(吉田ハンチング＠ｄｃｐ)
