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韓国「ウォンは基軸通貨になれる」と主張。なれる理由が噴飯物

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あの韓国『全国経済人連合会』がまたエライことを言い出しました。「ウォンは基軸通貨になれる」というのです。

韓国、あるいは韓国メディアでは「基軸通貨」を米ドルだけではなく、ハードカレンシーとして捉えているようで、EUのユーロ、日本円、イギリスのポンドなどは基軸通貨を呼称します。

ウォンのSDRバスケット入りを推進すべきだ!と主張

2022年02月14日、韓国のシンクタンク『全国経済人連合会』は「ウォンの基軸通貨編入を推進すべきである」というプレスリリースを出しました。

この「基軸通貨」編入というのは、『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)のSDR通貨バスケットに編入されるべき」という意味です。

『全国経済人連合会』はSDR通貨バスケットに採用されたら「世界に認められる基軸通貨になった」という認識のようです。

それはそうかもしれませんが(前記のとおり韓国・韓国メディアではドル以外のハードカレンシーも基軸通貨と捉えているので)、「また大きく出たな」という話で驚きを禁じ得ません。鉄骨でアタマでも打ったのでしょうか。

「SDR通貨バスケット」とは?

まず「SDR通貨バスケット」とは何かですが、Money1では何度もご紹介していますので、ご存じの方はこの小見出しの段落を飛ばして次の小見出しまで進んでください。

まず「SDR」です。SDRとは「Special Drawing Right」の略で「特別引出権」と訳されます。

『IMF』に加入した国は出資比率に合わせて、SDRが割り当てられます。いざというときにはこれを外貨に換えて使うことができるのです。

SDRというのは、一種の「仮想通貨」(暗号資産ではありません)のようなものです。ドル・ユーロ・ポンド・円・人民元の5種類の通貨から組成されます(この5つの通貨を入れて組成するのでSDRの通貨バスケットといいます)。

『IMF』はSDRを組成するためにそれぞれの通貨のウエイトを以下のように定めています。

2016年10月01日~
ドル:41.73%
ユーロ:30.93%
人民元:10.92%
円:8.33%
ポンド:8.09%

⇒引用元:『IMF』公式サイト「Press Release: IMF Executive Board Completes the 2015 Review of SDR Valuation」

今回の記事では「2016年10月01日以降」に注目ください。

なぜこんなことをするかというと、価値をできるだけ変動させないためです。

1億ドル借り、返す段になってドルが極端に強くなっていたらどうでしょうか? 返済する1億ドルを集める(両替する)のにそれ以外の通貨はより多く必要になります。お金の貸借に為替レートが大きな影響を与えないように、SDRという仮想通貨のようなものを用いるのです。

そのため、SDRの価値は日々変動します。

以下は2022年02月11日時点でのSDRの価値です。

⇒引用元:『IMF』公式サイト「SDR Valuation」

上掲のとおり、02月11日時点では「1SDR = 1.402270ドル」となっています。

ちなみに『韓国銀行』が毎月公表する外貨準備の内訳にも「SDR」が含まれています。

韓国は『IMF』に加盟して当然SDRの分け前をもらっています。2021年08月23日には『IMF』は追加で約6,500億ドル分のSDRを加盟国に分配しました。この分で韓国も追加で恩恵を受けました。

上掲のSDR’sを横に見ていただくと、2017~2020年SDRは「34億ドル」で変更ないのに、2021年に急に「154億ドル」に急増しています。

この増加が「分け前をもらった分」というわけです。

韓国の外貨準備が増えます、という話。『IMF』からSDRの分け前117億ドル
外貨準備高が増えるという、韓国にとってはいい話です。1997年の「アジア通貨危機」で大変な目に遭ったためか、韓国ではしばしば『IMF』(InternationalMonetaryFundの略:国際通貨基金)は「死神」と呼称されますが、この死...

「ウォンが採用されるべき5つの理由」とは?

で、『IMF』のSDR通貨バスケットは、基本5年ごとに通貨の構成や比重について見直しを行うのです。

2015年11月には(よせばいいのに)「SDR通貨バスケットへの人民元の採用」を決めました。

2021年に人民元採用後初めての執行理事会開催予定だったのですが、コロナ禍によって流れ、2022年中開催となっています。

韓国の『全国経済人連合会』は、今年の会合でウォンがSDR通貨バスケットに採用されるよう働きかけるべきとして声を上げたのです。

『全国経済人連合会』は「ウォンがSDRバスケットに採用されるべき理由」として、以下の5つを挙げています。

①韓国の経済的地位
韓国はGDP世界第10位の国であり、外貨準備高は世界第9位と経済規模が大きい。

②『IMF』の設立目的に適合
韓国は自由市場経済体制の導入、貿易開放も拡大などで、この数十年間でGDPが1,092倍増加し、世界でも珍しい経済発展を成し遂げた。

特に、世界で初めて援助受益国から供与国へ跳躍した韓国の発展は、『IMF』が追求する設立目的とも一致する。

『全国経済人連合会』の解釈する『IMF』の設立目的は「持続可能な経済成長」「貧困減少」「国際貿易活性化」とのこと(筆者注)

③韓国の輸出規模
韓国の輸出額は最近5年間(2016~2020年)通貨発行主体別基準で世界5位を占め、『IMF』が提示したSDR編入要件のうち「輸出条件」)を満たした。既存のSDR編入国を除けば世界1位に該当する。

④自由な通貨使用条件に適合
過去『IMF』は、人民元の「自由な通貨使用条件」の充足根拠として、国際決済手段としての使用も増加、外国為替市場での取引活性化などを提示した。

『全国経済人連合会』は、国際貿易でのウォン決済比重とウォン資産に対する対外需要が持続的に増加し、外国為替市場でのウォン取引比重も2015年人民元がSDRに編入される当時の人民元水準に近付いたと指摘する。

『全国経済人連合会』は、人民元審査当時と同じ基準を適用すれば、ウォンも「自由な通貨使用条件」に合致する通貨であると主張する。

⑤政府のウォン国際化のための努力
韓国政府は今まで国際協力、国内制度改革などを通じてウォンの国際化を積極的に推進してきた。

グローバル金融危機とコロナ19パンデミック時には、米ドルと通貨スワップを通じてウォンの為替レート安定性を維持し、カナダ、中国、スイス、インドネシア、オーストラリアなどとも通貨スワップ締結を拡大した。

それだけでなく、韓国政府は域外外国為替市場許容、国内外国為替市場開場時間延長、国内外国為替市場取引参加者範囲拡大検討・推進などでウォン取引の市場アクセス性の向上にも積極的に努力中だ。
(後略)

⇒参照・引用元:『全国経済人連合会』公式サイト「全経連、ウォンの基軸通貨編入根拠提示『ウォンがIMF特別引出権(SDR)通貨バスケットに含まれる5つの根拠』」

と5つの理由を述べていますが、は「韓国の理解がどうか」という話ですし、は「努力しているから認めろ」という内容でお話になりません。「努力が褒めてもらえるのは小学生まで」です。大人なら結果を出してから言いましょう。

ましてや「米ドルと通貨スワップを通じてウォンの為替レート安定性を維持し」という部分は大笑いです。

ドル不足でドボン寸前だったのをFRB(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)が提供したドル流動性スワップで救われたのが本当です。自らの努力が実ったわけではありません。

合衆国の思惑で助かっただけです。しかもそのスワップラインも、2021年12月31日に終了してもうありません。

そもそも韓国のウォンは取引量が少ない!

GDP世界第10位の国、輸出規模第5位などと書いていますが、最も重要なのはです。

世界で広く使われているのか、これからそうなるのか、という点です。世界で広く使われる通貨だからこそ通貨バスケットに採用される、されなければならない、からです。

2015年は大失敗なことに、中国の経済が拡大し人民元の使用も広がるという思い込みだけで採用してしまいました。これは合衆国の大チョンボです(次の改訂では絶対に放り出すべき)。

それはともかく、3年ごとにラスボス『BIS』(Bank for International Settlementsの略:国際決済銀行)が公表している「世界の為替取引量」のデータを見てみましょう(2019年12月08日)。

ウォンは……。

ベース通貨別取引量のシェア(2019年)
米ドル:88.9%
ユーロ:32.3%
日本円:16.8%
英ポンド:12.8%
豪ドル:6.8%
カナダドル:5.0%
スイスフラン:5.0%
人民元:4.3%
香港ドル:3.5%
ニュージーランドドル:2.1%
スウェーデンクローネ:2.0%
韓国ウォン:2.0%
シンガポールドル:1.8%
メキシコペソ:1.7%
インドルピー:1.7%
露ルーブル:1.1%
南アフリカランド:1.1%
トルコリラ:1.1%
ブラジル・レアル:1.1%
台湾ドル:0.9%
タイバーツ:0.5%
インドネシアルピー:0.4%
マレーシアリンギット:0.1%
その他:7.6%

⇒データ出典:『BIS』「Triennial Central Bank Survey of Foreign Exchange and Over-the-counter (OTC) Derivatives Markets in 2019」

上掲のとおり「2%」しかありません。

このような取引量のシェアなのに、なぜ韓国のウォンをSDR通貨バスケットに採用しなければならないのでしょうか?

『全国経済人連合会』のは、「中国の人民元が採用されたときの使用水準にウォンも近付いている」としています。

人民元が採用されたときシェアは「2.2%」でした。韓国は2%で近いから採用されるべき――だそうです。

まさに噴飯ものの主張です。

2015年の人民元には輝ける未来があるように見えたのです。

それこそ中国の拡大するGDP、輸出入規模に期待して、人民元を「自由に使用できる通貨としての条件を満たした」と強弁して採用してしまったのです。とんでもない失敗でした。

翻って、2022年の韓国ウォン。

輝ける未来などあるでしょうか?

No」です。もう何度だっていいますが、これから韓国の経済成長率は0%時代に突入します。世界は、これからますます韓国のウォンなど使わなくなります。

『全国経済人連合会』は「韓国は世界最貧国からグローバル経済大国に成長した国」と書いていますが、日本よりもずっと早く老いて、韓国はグローバル経済大国などではなくなります(今もそうでしょうか?)。

ですので、『IMF』が韓国のウォンをSDR通貨バスケットに採用する可能性など皆無でしょう。

韓国は従中国なので蚊帳の外

あと『全国経済人連合会』は大事なことを忘れています。『IMF』は合衆国のものであり、現在合衆国は中国との対立を深めています。

『IMF』が「中国の属国になろうとしている韓国」を一顧だにするわけがありません。

『全国経済人連合会』は非常に興味深いリポートを出してくれるありがたいシンクタンクですが、時におっかしな主張もします。今回のリポートはその一例ということができるでしょう。

なにせ、『全国経済人連合会』は「『IMF』の管理下に入ったことがあるから、『MSCI』は韓国を先進国に入れなければならない」という意味不明なリポートを出したことがあります。

「韓国を先進国に入れろ」と要求!「韓国は『IMF』に助けを求めた経験があるから」と意味不明な主張
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(吉田ハンチング@dcp)

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