韓国の外貨準備高が『韓国銀行』が公表している数字だけ本当にあるのか、については疑念が呈されたりします。
これは、1997年アジア通貨危機の際に「ふたを開けたらなかった」ということが現実にあったためです。
韓国の外貨準備は誰が保有している資産なのか
まず、基本的な話ですが『韓国銀行』が毎月月次で外貨準備高を公表していますが、この外貨資産はそもそも誰が管理しているのでしょうか。つまり、誰が保有している外貨資産が外貨準備になるとして計上されているのでしょうか?
2021年08月27日、『韓国銀行』の外資運用企画チームのオ・ヨンギル次長がオンライン学習で「外貨準備運用の現状と今後の課題」という講義を行いました。
なにせ外貨準備を実際に運用している方が自ら講義を行うわけで、今回の講義は大変に興味深いものでした。まず、以下をご覧ください。そもそも外貨準備って何?という話です。
Reserve assets are those ①external assets that are ② readily available to and ③ controlled by monetary authorities
準備資産とは、①対外資産で、②金融当局がいつでも使用可能な、③金融当局がコントロールできるものです。
보유목적
保有目的for ④ meeting balance of payments financing needs, for ⑤ intervention in exchange markets to affect the currency exchange rate, and for ⑥ other related purpose (such as maintaining confidence in the currency and the economy)
④国際収支の資金需要に応えるため、⑤為替相場に影響を与えるべく為替市場への介入のため、⑥その他関連する目的(通貨や経済への信頼性の維持など)のためにあります。
⇒引用元:『韓国銀行』公式サイト
上掲はオンライン学習で使われたスライドですが、『韓国銀行』のオ次長は『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)の定義を引いて上記のように説明しています。
で、次のスライドです。
1) 정의
1)定義①대외자산(external assets) : 비거주자에 대한 청구권
①対外資産(external assets):非居住者に対する請求権
②언제든 사용가능한(readily available) : 유사시 현금화에 제약이 없고(liquid), 일반적으로 신용도가 높아야 함(high quality)
②いつでも使用可能な(readily available):有事の際に現金化に制約がなく(liquid)、一般的に信用度が高い(high quality)
③통화당국이 통제가능한(controlled by monetary authorities)
③通貨当局が統制可能な(controlled by monetary authorities)
:韓国の外貨準備高は『韓国銀行』と政府が保有∙管理※データ引用元は同上
このスライドの③に明確に書いてあります。韓国の外貨準備は、『韓国銀行』と政府が保有する対外資産(external assets)だ、と。
では、以下をご覧ください。『韓国銀行』が公表した「International Investment Position」(対外資産負債残高:略称「IIP」)です。
⇒引用元:『韓国銀行』公式サイト
この資料のExternal Assets(対外資産)を見てみると、政府と中央銀行すなわち『韓国銀行』のExternal Assetsを足すと「4,871億ドル」になりますが、これが外貨準備(Reserve Assets)の金額「4,461億ドル」と合いません。
なぜこれは合わないのでしょうか(先にご紹介しましたが上掲のとおり『韓国銀行』の保有する対外資産と外貨準備はほぼ一致するのです)。
上掲は『韓国銀行』が公表した2021年03月末時点での韓国の外貨準備高です。IIPで示されているとおり、4,461億ドルになっていることが分かります。(当たり前ですが)IIPのReserve Assetsが外貨準備であることは確かです。
しかし、この金額は『韓国銀行』と政府のExternal Assetsを足したものとは合いません。
で、最初の疑問に逆もどりです。
韓国の外貨準備は誰が保有している外貨資産のことを指しているのでしょうか。オ次長の説明どおり、『韓国銀行』と政府が保有しているのなら、なぜIIPの数字と合わないのでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)