先にご紹介した「韓国の国際収支統計」における「誤差脱漏」がマイナスに大きく振れた件です。
誤差脱漏は、数字が合わないとき調整する際に用いられる項目で、この項目自体が何かの収支を表しているわけではありません。
しかし、誤差脱漏は何か数字を隠したいときに使うことが可能です。
『韓国銀行』のデータによれば、2021年の韓国の国際収支統計は以下のように締まっています。
「経常収支」「資本移転等収支」「金融収支」を合算※して「113.7億ドル」も合わないとなっています。
誤差脱漏が「-113.7億ドル」ということは、本来あるべき外貨の量より実際にある外貨の量の方が少なかった。つまり113.7億ドルなかった――という意味です。
以下は「溜池通信vol.151」に『日商岩井総合研究所』調査グループ主任エコノミスト・吉崎達彦発先生が中国の国際収支統計の疑問点について書かれた文の一部です。中国の国際収支統計における誤差脱漏についての考察部分を引用します。
(前略)
もうひとつ気になるのは誤差脱漏の項目だ。経常収支+資本収支※は、本来なら外貨準備の増加額とイコールになるはずである。
それが合わないときは、差額は誤差脱漏という項目で調整される。
しかるに中国の誤差脱漏は、いつも決まってマイナスであり、金額も150億ドル前後で安定している。
「どこかへ消えてしまう外貨が、いつも150億ドル前後ある」ということになる。
なにしろ150億ドルといえば1240億元に相当する。これは中国の国防費に匹敵する金額。
実は毎年この程度の金額が、海外に還流するような仕組みがあるのではないか、という疑念が頭をもたげてくる。
だとしたら、外貨は何に使われているのか。アングラマネーが海外の土地や金融資産を買い漁っているのか、あるいは軍部が密かに兵器を買っているのか。貿易黒字と直接投資の額が多いだけに、いささか気になるところである。
(後略)※IMF第5版基準による。資本収支は現在の第6版では金融収支に再編されています(筆者注)。
中国の事情はともかく、韓国における「誤差脱漏」についての疑念も本質は同じです。「外貨がどこかへ抜けているのではないのか」です。
(吉田ハンチング@dcp)