韓国では保守派と左派の戦いが熾烈になっています。
政権与党だった『共に民主党』が強行に通過させた「検察から捜査権を完全に剥奪する法案」(正確には刑事訴訟法・検察庁法の2つの法律に対する改正案)ですが、尹錫悦(ユン・ソギョル)新政権側も着実に反撃を進めています。
なにせ、尹錫悦(ユン・ソギョル)さん自身が「文在寅の積弊は清算されなければならない」と述べています。任期末に無理やり通した「検察から捜査権を完全に剥奪する法律」もまた積弊の一つというわけです。
秘蔵っ子の韓東勳(ハン・ドンフン)さんを法務部長官にしたのを皮切りに、この韓東勳(ハン・ドンフン)さんが打てる手を全て実行するつもりです。
憲法違反で法律を無効にしてやる!
先にご紹介したとおり、「合同捜査団」を結成するという「検察の捜査力を強化する方向」で動いているのも一つですが、「検察から捜査権を完全に剥奪する法律」が憲法違反である――という件に対応するべくTF(タスクフォース)を結成するつもりです。
もともと大検察庁(全国の検察庁を指揮・監督する)は法案の段階から「違憲である」という見解を示していたのですが、法案が通過する前に警察庁からは「違憲とは考えない」という意見表明がなされていました(これもあって尹政権は警察庁の統制に乗り出していると考えられます)。
2022年05月25日には、「朝鮮半島人権と統一のための弁護士会」が「検察から捜査権を完全に剥奪する法律は違憲」とし、憲法裁判所による審査を求めました。
ただし、先には「社会正義を望む全国教授の集会」なども「違憲審査」を憲法裁判所に求めたのですが、憲法裁判所は事前審査の段階で却下しています。
岡田正則先生・河明鎬先生の論考から引きますと「憲法裁判所は、法院の提案による違憲審判、弾劾裁判、政党解散の審判、国家機関相互間、国家機関と地方自治体および地方自治体相互間の権限争議に関する裁判、ならびに法律が定める憲法訴願審判を管掌する(憲法111条1項)」ものです。
また「⑥違憲が決まった法律または法律の条項は、将来に向けて直ちに効力を喪失する(憲法裁判所法47条2項)」と定められていますので、仮に、憲法裁判所がこの「検察から捜査権を完全に剥奪する法律」の審議を行い、「違憲」と判断したなら、法律を直ちに無効にすることが可能――と考えられます。
⇒参照・引用元:『早稲田大学』公式サイト「韓国における憲法裁判所および行政法院の機能と役割」
で、法務部では同法の違憲対応TFの編成に入っています。
2022年05月26日、このチームのヘッドに「ソウル高検」の金ソクウ検事(部長級)が内定したと確認されました。この金検事は、かつて「統合進歩党の解散」(上掲のとおり憲法裁判所は政党の解散についても対象事案とします)について憲法裁判所の審議対応TFで活躍したことがあります。
このTFは、『共に民主党』の強行採決によって公布され、09月の施行を控えている「検察から捜査権を完全に剥奪する法律」に対して憲法違反訴訟を準備すると見られます。
また、法務部は「検察から捜査権を完全に剥奪する法律」が施行された場合に備えたTFも準備していると報じられています。
尹政権はとことん「検察から捜査権を完全に剥奪する法律」と戦うつもりなのです。「法律を通過させたからといって逃げ切れると思うなよ」という意思表示です。
下手なドラマよりも面白い戦いが韓国では進行中なのです。
(吉田ハンチング@dcp)