先に外国人投資家が韓国『サムスン電子』の株式をどんどん売っており、そのため韓国メディアに「外国人投資家が『サムスン電子』を見捨てたのではないか」という観測が出ている件――をご紹介しました。
見捨てたも何も、最も流動性の高い株式をトレンドに従って売買しているに過ぎないのですが、今度は韓国の個人投資家の動向について興味深い動きが出ています。
ここまで『サムスン電子』を買い越してきた個人投資家が11月には「売り越し」に転じたのです(売り越しは買収よりも売却の方が多い状態です)。
最高値をつけた月に大量の資金を投入して……
まず、以下の『サムスン電子』(普通株)の推移をご覧ください(チャートは『Investing.com』より引用)。
韓国株式市場もコロナ禍による暴落で2020年03月に天底となりました。
『サムスン電子』の株価は、2020年03月23日の「4万2,500ウォン」(約4,122.50円)を天底に順調に回復し、2021年01月11日に天井の「9万1,000ウォン」(約8,827.00円)をつけます(全てローソク足の実体線の価格:以下同)。
天底から天井まで株価は2.14倍になりました。
ここまでの右肩上がりの上昇を見て「もうかる」と思ったのでしょう、新規の個人投資家が急増し、01月に大量の資金を投入しました。
しかし、往々にして素人が資金を投入するときは天井なのです。以降、『サムスン電子』の株価は右肩下がりに転じます。
2021年11月12日の終値は「7万600ウォン」(約6,848.20円)。天井の「9万1,000ウォン」(約8,827.00円)から「22.4%下落」しています。
最高値からの下落で「ナンピン」も限界
この下落で個人投資家の売買動向に変化が現れました。11月には個人投資家は売り越しに転じたのです。
『サムスン電子』株式:2,594億ウォンの売り越し
2021年01~11月12日までの『サムスン電子』株式の、個人投資家による買い越し金額は「35兆1,324億ウォン」(約3兆4,078億円)に達しています。
この純買収金額と比較すれば、純売却金額は少ないですが、これが個人投資家の売買動向の変化ではないかと捉える向きもあります。01月に大量の資金を投入して『サムスン電子』株式を購入した個人投資家がまだ売却していないとすれば、含み損を抱えていることになります。
その中には「ナンピン」(ナンピン買い)を行ってきた投資家もいるでしょうが、それももはや限界なのではないか――という観測です。
株式を取引されない方には縁遠い言葉ですが、「ナンピン」というのは、株価が下がって含み損を抱えたときに、さらに買い増しして株式の平均取得単価を下げる手法です。
例えば、『サムスン電子』の株式を9万ウォンで1,000株持っていたとします。
株価が8万ウォンまで下がった際に、損切りで売却するのではなく、さらに8万ウォンで1,000株買ったらどうなるでしょうか。
⇒平均取得単価:9万ウォン
⇒株価8万ウォン時:含み損11.1%
9万ウォンで1,000株保有
8万ウォンで1,000株保有
計:2,000株
⇒平均取得単価:8万5,000ウォン
⇒株価8万ウォン時:含み損5.9%
このようにナンピンを行うと平均の取得単価を下げ、全体での含み損の率を下げることができるのです。
もちろんこれは、将来株価が上がるだろうという見込みの下に行う売買手法です。上記の例でいえば、株価が9万ウォンまで戻り、そこで売却できれば、
2,000株保有
9万ウォンで全部売却
⇒ 5,000ウォン × 2,000株 = 1,000万ウォン
と1,000万ウォンのもうけになります。
もちろん、このナンピンは株価が上がるという目算があって行うものであって、さらに株価が下がった場合、損失を増やしただけという目も当てられないことになります。
現実には『サムスン電子』の株価は下がっており、そのためナンピンを行って『サムスン電子』株式に付き合ってきた個人投資家はもはや限界なのではないか――という指摘が出るわけです。
上掲のチャートのとおり、『サムスン電子』の株価は2020年11月の水準にまで戻りました。現在はヨコヨコで推移していますが、これがさらに下に抜かれると阿鼻叫喚になることは火を見るよりも明らかです。
さて、韓国の国民株といわれる『サムスン電子』の株価はこの先どうなるでしょうか。
※アイキャッチの写真は『サムスン電子』本社ビル
(柏ケミカル@dcp)