韓国でのメディア報道を萎縮させるとして、今や世界的に注目されている「言論仲裁および被害救済などに関する改正案」。いわゆるメディア規制法の現状です。
あとは本会議にかけるだけ、だったが……
2021年08月には、政府与党『共に民主法』が数を頼みに委員会で強行採決し、あとは本会議にかけるだけとなりました。本改正法は先にご紹介したとおり、恣意的に報道を制限することを可能にする法律で、しかも罰則規定が重く、事実上「報道の自由」に制限をかけるもの。
「先進国では類を見ない悪法」とまで呼ばれる始末です。
もちろん韓国が先進国かどうかには異論もありますが、一応『OECD』(Organisation for Economic Co-operation and Developmentの略:経済協力開発機構)に加盟していますし、まだ民主主義国にとどまっているのですから、言論の自由の価値が何にも代え難いものであることは分かっているはずです。
しかし、当の政権与党が「先進国では類を見ない報道の自由を制限するような法律」を推進しているのです。
で、08月には、『共人民主党』と最大野党『国民の力』との間で、「09月27日に国会本会議に上程する」こと前提で、「そこまでは協議を続ける」ことを約し合意書を交わしました。
2021年09月27日、与野党で12:00から1時間30分、15:30から再び協議が行われましたが、全く溝は埋まりませんでした。
09月29日には、本会議で処理することに失敗しました。まだもめているのです。
大統領府は発言を避ける卑怯な態度を貫く
このような混乱の中、青瓦台・大統領府は我関せずの卑怯な態度を取り続けています。文在寅大統領としてはこの悪法を通したいからです。その一方で国民の非難にさらされることは避けたいので、文大統領はじめ青瓦台・大統領府は全く音無しの構えを貫いているのです。
09月24日、青瓦台・大統領府のパク・スヒョン国民疎通首席はYTN『ザ・ニュース』に出演して、メディア規制法について「大統領府が立場を明らかにすることは非常に適切ではない」と述べました。
何が適切でないのか全く分かりません。
国民の関心も高く、成立するかどうか世界的に注目されている悪法ですから、国のトップである大統領こそ自分の判断を述べねばならないでしょう。
韓国では成立した法に対して拒否権を発動することが可能です。
しかし、拒否権は行使しないでしょう。恐らく文大統領は、成立したら世界中から浴びることになる批判を立法府に押しつけて自身は何もしないつもりです。
というわけでメディア規制法の行方はまだ霧の中です。しかし、文在寅がこのような国民の基本的な権利を制限するような法律に対して何も言わないトップであったことは記憶されるべきです。
(吉田ハンチング@dcp)