韓国には「国家情報院」(略称「国情院」)という機関があります。
国家の安全保障や国家を脅かすような犯罪の捜査などを行う大統領直属の諜報機関。簡単にいえば「スパイ組織」です。韓国という国を維持し、守るために非常に重要な機関なのですが、さる2022年6月24日に、同機関の1級保職局長全員に「待機発令」が下されたことが明らかになりました。
新人事の発表の直前で要職全員に待機命令
韓国では先の大統領選挙で尹錫悦(ユン・ソギョル)さんが選ばれ、2022年5月10日に第20代大韓民国大統領に就任。
現在、関係各所の人事の選出と発表が行われている最中です。「国家情報院」に関しても新人事の発表が06月14日に行われましたが、その直後に院内各部署の局長27人全員に待機命令が下されたことになります。
この処置に対し、韓国国内では「文在寅前大統領の息がかかった職員を排除することが狙いなのでは」といわれています。つまり「スパイ探し」をしているというのです。
国家情報院とは?
そもそも国家情報院は、 1961年に朴正煕(パク・チョンヒ)政権によって設立された韓国中央情報部(KCIA)を始まりとする諜報機関。1973年に起こった「金大中事件(金大中さんを東京から拉致)」や、1979年の朴正煕(パク・チョンヒ)暗殺事件など、さまざまな大事件に関わった名高い組織です。
KCIAは1981年に「国家安全企画部」となり、1999年に金大中政権によって廃止され、大統領直属の「国家情報院」として生まれ変わりました。
金大中大統領は「南北首脳会議」を実現させ、「6.15南北共同宣言」を実現しました。この功績が高く評価され、ノーベル平和賞に選ばれるという快挙を成し遂げました。
これまでに韓国が獲得したただ一つのノーベル賞です。
金大中大統領は不正送金をはじめとする悪行に手を染めていましたが、退任後も収監されることはありませんでした。韓国の大統領はほとんどが退任後に逮捕・収監されていますが、金大中さんは収監を免れた数少ない例です(ただし3人の息子は収監されています)。
これは「さすがにノーベル賞を受賞した人物を牢獄に送るわけにはいかないだろう」という忖度が働いたためといわれています。
ノーベル平和賞が欲しかった文在寅前大統領
金大中さんはノーベル賞を受賞したことで収監を免れましたが、文在寅前大統領がここに目を付けたのではないか、と推測されます。
文前大統領には、発電会社のトップに辞任を要求した事件や、住居購入時に用途変更を行って巨額の利益を得たことなど、さまざまな疑惑が突き付けられています。退任後に調査が行われ、逮捕・収監された朴槿恵元大統領や李明博元大統領と同じ道をたどる可能性は高いのです。
そのため、大統領に就任中には検察関係者に親文政権の人間を配するなど、捜査されないよう努力(?)してきました。しかし、それで安全とは限りません。
そんな中で一打逆転の手段として目を付けたのが「ノーベル平和賞」です。「在任中に『終戦宣言』を結ぶことができれば、ノーベル平和賞に選ばれ、金大中と同様に収監されないのでは」と文政権は考えていたのではないでしょうか。
文在寅前大統領のシンパやスパイを排除
その証拠に、文前大統領は「大韓民国国家情報院」のトップに北朝鮮とつながりの深い朴智元(パク・チウォン)さんを就任させました。
同氏は、過去に北朝鮮の金正日総書記に5億ドルもの巨額を送るなど、いわゆる「北朝鮮とズブズブ」な人物。北朝鮮との首脳会談を実現するための切り札でした。
しかし、文前大統領の目論見はあえなく失敗し、終戦宣言を出せないまま退任。
朴智元さんも「国家情報院」を去りますが、まだその内部には文前大統領の息がかかった職員、さらには北朝鮮とつながりのある人物がいる可能性があります。
そのため、要職に就いている人間を待機させ、「身体検査」を行っているのではとうわさされているのです。「国家情報院」という、政権の重要な部分を支える機関にスパイがいてはたまったものではありませんからね。
今後も文政権の負の遺産の排除が続くと見られていますが、国家情報院のドタバタがどのように決着するのかに要注目です。
(大西トタン@dcp)