中国は、アメリカ合衆国が提唱する「Chip4(チップ4)」を恐れています。
「中国に半導体が入ってこなくなったらおしまいだ」と自らの弱点を分かっているからです。
中国は世界最大の半導体輸入国である
中国は世界最大の半導体輸入国です。2020年規準でも、HSコードによる集計「集積回路」(コード:8542)の輸入金額は「3,524億ドル」。同集計ベースで輸入品目の第1位、全輸入品目に占める割合は「17.1%」に及びます。
ちなみに、中国を回すのに必須の石油(石油および歴青油)は、同集計で「1,761億ドル」で、同シェアは「8.5%」です。
つまり、中国はもはや石油よりも半導体がないと国が回らない状況といってもいいのです。
だからこそ、中国を締め上げるのに半導体を押さえるというのは効果的ですし、中国は「Chip4」を恐れているのです。
ここに韓国が中国に優位に立てる余地があります。「なんだったら半導体を止めましょうか」と中国を脅せます。技術的に中国が追いつくまでは。
もっとも輸出先がなくなると困るので、それを覚悟した上での最終的な恫喝になりますが。これは台湾も同じです。
「中国を締め上げろ」同盟への参加はできないと言う韓国
中国政府が韓国政府に対して「『Chip4』に参加して、合衆国のいうサプライチェーンの組み換えに参加するな」としつこく恐喝するのは、そのためです。
「特定の国を排除するためのものではない」などときれいごとがいわれたりしますが、これは半導体戦争の一環で、もちろん目的は中国を締め上げることにあります。
その「Chip4」ですが、韓国政府は参加に二の足を踏んでいます。
先にご紹介しましたが、協議の前に準備協議会を開こうと合衆国に提案しています(韓国メディアでは「提案した」と確定情報になっています)。
上掲の記事でご紹介したとおり、韓国メディアによれば韓国政府は、
②中国に対する輸出規制には言及しない
という大原則を、合衆国・日本・台湾と韓国の間で共有したいという願望を掲げているのです。
合衆国からすれば、何をしに「Chip4」に入るつもりなのか、と問いたいところでしょう。
韓国はナニしに「Chip4」へ?
この「何をしに」が大事なところで、例えば『東亜日報』の2022年08月09日付け記事には、以下のような興味深い部分があります。
(前略)
韓国は合衆国にとって「半導体が不足する状況」を解消できる投資パートナーであると同時に、中国にも核心半導体を供給している。政府はこのような韓国の状況を交渉材料として活用し、合衆国と中国の双方を説得しなければならない。
なにより、「Chip4」同盟に参加しても、韓国企業が中国内の施設へ追加投資が可能になるように、合衆国の「対中制限措置」を緩和する必要がある。
このような説得作業なしに合衆国の牽制で中国内の工場を維持、保守する作業が全面中断される場合、韓国企業の対中国投資は水疱に帰してしまう。
緻密な戦略なしに「Chip4」同盟に飛び込むと、リスクが大きくなるだけである。
(後略)
同記事では、中国を怒らせるとまたTHAAD事態のようなことになるので、中国を怒らせないようにすべきとし、その上で「合衆国の対中国制限措置が緩和されるように、合衆国を説得すべき」としています。
これが、韓国が「Chip4」で果たすことだそうです。いわば中国への制裁措置を緩和する、中国の代弁者になることを意味しています。
その目的は、
・韓国企業の対中国投資が無駄にならないため
です。合衆国からすれば「知るかー」ですが、韓国の皆さんは一つ重要なことを忘れています。
合衆国が怒って「韓国を半導体サプライチェーンから外そう!」となった場合、どうなるかです。
合衆国から敵認定された方が恐ろしいのでは……
合衆国・日本・台湾の同盟に加われず、反同盟者と認定された場合、ありとあらゆる制裁が加えられる可能性があります。システム半導体、設計技術、ソフト・ツール、素材、製造装置、アナログ半導体などが入手できなくなったら、韓国企業に何ができるでしょうか。
例えば、台湾と日本が「車載用半導体を韓国に輸出しない」としたら、韓国の自動車メーカーは一発でアウトです。韓国は半導体強国なんて誇りますが、車載用半導体はその98%を輸入に頼っているからです。
韓国が決めることなので、どうなるのかまだ分かりませんが、合衆国の立場からすると「中国に味方するヤツはいらないよ」となりそうな気もいたします。
恐らく現時点では、韓国の物言いに呆れているでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)