韓国で短期資金調達市場が凍りついて企業がお金の調達に困難を極めています。資金調達がつかず、債務の償還期限に間に合わなければデフォルト(債務不履行)です。
連鎖倒産がドミノ式に発生でもしたら、一気に経済が傾くかもしれませんので(もう傾いていますけどね)、資金需要が高まる年末は一つの勝負どころです。
韓国メディア『ソウル経済』に面白い記事が出ています。
最近の金融当局は、資金梗塞の震源地である不動産PF(プロジェクトファイナンス)で発行されたABCP(Asset-Backed Commercial Paper:資産担保コマーシャルペーパー)を凝視しているというのです。
ガン見というやつです。
記事の一部を以下に引いてみます。
11日、金融圏によると、最近の金融当局はPF ABCPの基礎資産まで覗きながらモニタリングを続けている。
不動産金融比重が大きい中小型証券会社を中心として、現場検査を通じて追加的な流動性リスク暴露の可能性をチェックしているのだ。
PF ABCPは、通常、不動産開発事業に関連した分譲事業収益などを基礎資産として発行する場合が多いが、施行会社や資産管理会社の信用度は低く、証券会社が信用補強に乗り出す場合が大半だ。
もし該当事業がきちんと進捗しなければ、信用供与をした証券会社の健全性まで毀損する可能性がある。
先月末基準証券会社の不動産PF信用供与規模は21兆ウォン、施工社信用供与規模は15兆3,000億ウォンに達する。
(後略)
この説明部分はとても大事で、急所を突いています。
先にもご紹介しましたが、CP(Commercial Paperの略:約束手形の一種)というのは普通無担保で発行されます。そのため、どの企業でも発行できるというわけではないのです。
無担保ですので、償還が必ずされるという信用のおける企業しか難しいのです(それでも高利になる)。
そのため、ABCP(Asset-Backed Commercial Paper:資産担保コマーシャルペーパー)という、資産を担保にした(これがAB = Asset-Backed)CPが登場するのです。
ただし、不動産開発PFの場合、発行されるABCPの場合、その担保資産というのが、「将来発生するキャッシュフロー」だったりします。
「このレゴランドという遊園地を造れば、月10万人お客さんが来ます。1人当たり5万ウォンずつ取れば月に50億ウォン。12カ月で600億ウォンです」
みたいなことを言って、それに乗っかった証券会社が「なら2,000億ウォン規模ABCPいけますよ。なんつってもPFに江原道が入ってるし、格付けは最高。売れないわけがありませんよ、李部長様」。
「このチャンバラ当たるでぇー」「ファイテン!」などとバカの雄叫びが深夜のソウル市のオフィスにこだましたりするわけです。
証券会社がなぜノリノリかというと、不動産PFは金額が大きくて手数料も大きくとれるからです。その上、ケツ持ちに地方政府が入っているような案件なら、いざというときも安心。
ところが、完成してみると……「全然客入んないじゃん!」と急転直下、驚愕の事態に。
「Asset-Backed」が聞いて呆れる結果になって、逃げないはずの江原道知事が「やめた!」と決断「ABCPは早期償還しないことにした!」(本当はお金がなくて「できない」)と突然言い出したりします。
バカな話ですが、これが本当にあるから困るのです。
で、韓国の金融当局が「PFの基礎資産がどんなものなのか」を調査して回っているわけです。「担保っていうけど資産はきちんと計算されているんだろうな?」です。
金融当局が「なんだこりゃ」と呆れるような甘い見込み計算が見つかる可能性があります。
11月末時点で「不動産PF信用供与規模は21兆ウォン、施工社信用供与規模は15兆3,000億ウォンに達する」とのことなので、計36兆3,000億ウォン。
信用の裏付けはあるのでしょうか。
愉快なことにならなければいいのですが……。
(柏ケミカル@dcp)