2022年12月12日、中国の王毅外相と韓国の朴振(パク・ジン)外交部長官がオンライン会談を行いました。
Money1でも何度もご紹介していますが、アメリカ合衆国は半導体をテコに、ホンイキで中国を潰すつもりです。日本も合衆国から半導体製造装置について中国に渡すなと要求しています。
「半導体を渡さない戦術」は中国に相当な危機感を与えており、合衆国の同盟国の中で最も弱い環である韓国に圧力をかけています。柔らかい言い方をすれば「懐柔」です。韓国の方が優位なので「すり寄り」といってもいいですが。
今回の中韓外相会談の内容が傑作で、中国外交部は以下のようなプレスリリースを出しています。
2022年12月12日、王毅・中国共産党中央委員会政治局委員(国務委員兼外相)は、韓国の朴振(パク・ジン)外相とビデオ会談を行った。
王毅は、少し前に習近平主席と尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領がバリ島で会談を成功させたことは、中韓関係の発展における次のステップに明確な方向性を与えたと述べた。
現在の国際・地域情勢は複雑で進化しており、中国は韓国側と協力して、両国首脳の重要な合意を効果的に実施し、両国と人民の改善のために中韓関係を促進することを望んでいる。
王毅は、第20回中国共産党全国代表大会の主な成果と意義を紹介し、中国は引き続き平和的発展の道を揺るぎなく追求し、対外開放の国家基本政策と互恵・Win-Winの開放戦略を堅持し、これは各国にとって大きな利益であり、中韓関係の発展にも新しいチャンスをもたらすと強調した。
また王毅は、今年は中国と韓国の国交樹立30周年に当たり、
「中国は韓国と善隣友好の一般的方向を堅持し、戦略的コミュニケーションを強化し、Win-Winの協力に焦点を当て、中韓関係の健全で安定した発展を促進し、生産とサプライチェーンの安全で円滑な流れを確保し、国際自由貿易体制を守り、地域と世界の問題で協調と協力を強化したい」
と述べた。
王毅は、合衆国がいわゆる半導体・科学法(CHIPS and Science Act:いわゆるチップ法)とインフレ削減法(略称「IRA」)を策定し、また「WTOの規則に違反した」とのWTO裁定を拒否したことについて立場を表明し、合衆国の行為は明らかに中国や韓国を含む全ての国の正当な権利と利益を損ない、米国がまさに国際規則の建設者ではなく、破壊者であることを再び証明したと強調した。
全ての国は、この反グローバリズムの固定観念と一方的ないじめに立ち向かい、真の多国間主義を堅持し実践するために協力し合うべきである。
朴振(パク・ジン)は、韓国は第20回共産党大会の成功裏の開催を祝賀し、中国が引き続き繁栄発展を続け、北東アジア地域と世界の平和と安定を促進するためにより大きな貢献をすることを期待する、と述べた。
「先日、バリ島で行われた両首脳会談は、相互尊重と互恵に基づく韓中協力の新時代の幕開けとなる一里塚となった。双方は、中国と協力して、両首脳の重要な合意を実行し、ハイレベルのコミュニケーションを強化し、経済・貿易協力を深め、人文交流と人民接触を促進し、両国関係をより高いレベルに押し上げることを希望する」と述べた。
また、朝鮮半島情勢や国際的・地域的な共通の関心事について意見交換を行った。
⇒参照・引用元:『中国 外交部』公式サイト「王毅同韩国外长朴振举行视频会晤」
中国を潰すために合衆国が定めた「CHIPS法」と「IRA」について非難し、「中国や韓国を含む全ての国の正当な権利と利益を損なう」と韓国を「仲間」として強調しています。
まるで「お前もそう思うよな。な、スネ夫」というような言葉であり、誰がどう見ても「韓国を中国側に立たせたい」という発言です。
「合衆国を刺激しないようにしようっと」な韓国
スネ夫が「……うん」と答えたのかどうかが気になりますが、韓国の外交部は
以下のようなプレスリリースを出してます。
面倒くさい方は飛ばしてもOKです。
□朴振(パク・ジン)外交部長官は、12月12日(月)午後、王毅中国国務委員兼外交部長と約1時間15分間ビデオ会談を行い、
▲中韓関係
▲朝鮮半島問題
▲地域・国際情勢など相互の関心事について議論した。
□両長官は先月、G20計器開催された中韓首脳会談が相互尊重・好恵・共同利益に立脚した新たな中韓の協力時代を開く重要なマイルストーンとなったと評価し、両首脳が合意した両国関係の発展方向に応じた後続措置を円満に履行していくために緊密に協力することにした。
○両長官は習近平錫の訪韓など、正常間交流勢いが続くように緊密に連携していくことにした。
また、両長官は外交長官相互訪問を含め、2+2次官級外交安保対話、外交次官戦略対話、人文交流促進委員会、1.5トラック対話など多様なレベルで高位級交流をスピード感よく推進していくこととする一方、両国外交部間「中韓未来発展のための共同行動計画」の採択のための協議を加速していこうという意見を共にした。
また、両大臣は、
▲サプライチェーンコミュニケーションの拡大
▲中韓FTAサービス投資公式交渉の早急な再開
▲航空便増編、人的交流拡大、文化コンテンツ交流の活性化など、さまざまな分野で実質協力の可視的な成果を達成するために積極的に協力していくことにした。
□両大臣は朝鮮半島の問題についても意見を交換した。
朴長官は今年、歴代最多回数の弾道ミサイル発射など北朝鮮の挑発に懸念を表し、北朝鮮が核実験をはじめとする追加挑発を控え、非核化対話の道に出るようにするのは、中韓の共同利益として、中韓での緊密な協力が時より必要な時期だと強調した。
また、朴長官は、中国側が韓国の「大胆な構想」など、北朝鮮との対話努力を積極的に支持してくれることを期待すると述べた。
◦王委員は、今後朝鮮半島問題に対して建設的な役割を果たしていくと述べた。
□両長官は、地域・国際問題に関する相互関心事項についても意見を交換した。
◦両長官は、経済回復、気候変動など多様なグローバルイシュー関連対応に広範な共同利益があるという点に共感し、両国が関連分野で緊密に疎通・協力していくことにした。
ご覧のとおり、韓国側は合衆国の「CHIPS法」「IRA」については全く言及しておりません。それらしい記載は「サプライチェーンコミュニケーションの拡大」だけです。
韓国は自国産の電気自動車の販売に関わるとして「IRA」を問題視し、合衆国との交渉を執拗に続けています。中国が応援して圧力をかけてくれるならありがたい話でしょうが、「中韓外相会談で中国の合衆国非難に同調したと取られるのはさすがにヤバイ」と考えたものと見られます。
一応、自国の立ち位置は理解している模様で「ジャイアンにはうんって言ってないってば」という感じでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)