2023年01月11日、韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は「外交部・国防部業務報告」を受ける会議を行いました。
第20代大統領室からこの会議における尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の発言についてのプレスリリースが出ていますが、これが異例の長文です。
日本・アメリカ合衆国との協力関係についての言及もあり、また特筆すべきは合衆国との核シェアリングについて明確に打ち出したことです。
非常に長いのですが、以下に全文を引用してみます。核関連については後半部分になりますので、スクロールしてください。
面倒くさい方は強調文字・アンダーラインの部分だけでもお読みいただければ幸いです。
ユン・ソクヨル大統領は1.11.(水)大統領府迎賓館で外交部、国防部から2023年の業務計画を報告してもらいました。
以下は、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の締めくくりの発言です。報道の参考にしてください。
「外交と安全保障、防衛は、その国家政府のアイデンティティを最も顕著に示す分野と言えます。
韓国のアイデンティティは私たちの憲法にあります。
私たちの憲法は自由を志向し、自由を保障するために意思決定方法について民主主義を採択しています。また、自由民主主義をしっかり守るために権力分立という共和主義を採択しています。
そして、経済的自由を保障するために、当然の帰結として自由市場経済という、その価値をまた私たちは選んでいます。
自由には基本的人権と法律が続きます。
自由というのがただ自由ではなく、自分の人生をきちんと実現できる基本的な権利を保障し、私の自由と他人の自由の接点、および共通になる部分を、私たちは法によって得、法に従って私たちの関係、秩序が形成されるような体制を私たちは持っています。
私たちの安全保障と同盟、また安全保障の協力というのも、全世界においてこのような価値を共有する国家同士を優先します。
たとえ価値が異なっても、現実的な国益があるときは、互いに協力することができます。
しかし、この同盟、そして非常に緊密な協力というのは、まさにこのようなその国家のアイデンティティ、価値を共有する国家同士が成し遂げられることです。
今、世界でWTO体制が少し弛緩し、ブロック化がさらに強化されています。
国家同士のあらゆる安全保障、そこに基づく経済、またそこに基づく先端科学技術、今や保健協力まで、それが一つのパッケージ化されています。今、突然に起こったことではありません。
昔もそうだったし、今はいろいろな地政学的な要因、サプライチェーンの妨害などでさらに強化されるということになっていますが、それは最も基本的なものです。
ウクライナとロシアを比較してみると、ロシアが軍事戦力とか、さまざまな点で圧倒的に優位でした。
しかし、実際に今戦争が起きてから1年たちました。特定の時点で、昨年戦争が始まった時にはロシアが勝っていましたが、価値を共有する国々が着実に支援し、また侵略した国家に関する多様な経済制裁をとりました。
戦争はしょせんある一定の時間の過程ですが、結局は経済が支えなければなりません。国際社会に依存してバランスをとり、膨張させ、結局は違法な挑発と戦争がいかに無益であることを感じさせてくれるのです。
戦争は平和を破るものですが、その戦争にどのように対応するかということが、再び平和を守る基盤となるのです。
私は、私たちの国防安全保障、特に外交、外交も結局は韓国のアイデンティティ、私たちが志向する憲法価値を対外的に表現する行為が私は外交だと思います。
そして、私たちが守らなければならない価値、その価値のために命まで捧げることができる。それがまさに防衛であり、私たちの安保だと私は思います。
先ほどハン・キホ議員からも軍の精神武装こそ重要であると強調していただきました。
それは、今軍で表現するものもそうですが、結局、将兵と国民と私たちが守らなければならない価値、それが私たちの敵対している相手に比べてはるかに優越的な価値だということに確信を持つのが、まさに精神武装だと思います。
それを基に戦えば無条件に勝つ、そんな軍隊ができると思います。
国防については、昨年も多くの基調変化と準備があり、私も昨年一年うまくやってきたと思いますが、北朝鮮は私たちいわゆるウクライナ戦争のような長期戦争全面戦を繰り広げるのは容易ではありません。
なぜなら、私たちが志向する価値がはるかに優れているからです。現在は経済的または戦力面で北朝鮮よりも私たちがよいのですが、それよりもこの国がまさに普遍的価値を志向する国であるのがよい点です。
私たちが徹底した全体主義国だとすれば、私たちが北朝鮮を侵略するとき、国際社会は誰を助けますか? ダメでしょう。今は反対で、全面戦、長期的な戦争ではなく、自分たちの道徳的価値的な劣等感そして対称戦力における劣等な状況があります。
非対称的で、非正規的であるので、場合によってはソフトテロ、韓国社会を乱す政治的な策謀によって虚を突く、そのような挑発がたくさんあると私は思います。
どのような形態の挑発が来るのかということは軍事的にも見なければなりせんが、北朝鮮の経済、社会、政治に対する精密な分析を持って挑発がどのように行われるか、我々が予想をし、それに沿ったシナリオを我々が準備をする。
また、そのシナリオに沿って作戦体系を作り、私たちの将校に対する訓練というのも、ただのトレーニングではなくエクササイズ(exercise)にならなければなりません。
どのような実際の状況に実際の状況が起きたと仮定し、どのように対応するかという、そのようなエクササイズ(exercise)にならなければならない。
私たちは今、1年6カ月しかならない兵士たちの服務期間ですが、入所した初日から除隊するその日まで、本当に寸暇を惜しんで高度な科学的な教育をさせ、練習させなければならないと思います。
苦労する訓練ではありません。科学的な教育をしなければなりません。それで私はさっき私たちの将兵に対する教育は最も重要な作戦だと言いました。作戦というのは、予想シナリオなしで成し遂げられるのではありません。
ただのマンネリズムに陥って行われる教育ではなく、私たちの将兵、私たちの兵士に対する教育が、例えば体力を鍛えなければならないとすればただ苦労させるだけではなく、スポーツを通じて体力を鍛え、技術的な何かが必要、自分が守っている地域に対する状況を正確に知る必要があれば、そのようなデータをデジタル化してシミュレーションをさせ、また自分たちが例えばある作戦や展示に部隊が別の位置に移動するのであれば、移動が予想される地域の状況をまたデジタルで勉強し、学習させる。将兵と兵士に対する教育が科学化され、それが重要な作戦体系にフィードバックされなければなりません。
何よりも兵士たちをよく養わなければなりません。出てくる給食がおいしい、国家は私たちを本当に大事にしている、と私たちの青年が感じます。
他の全ても重要ですが、よく食べて、そして大単位部隊よりも小規模に見て、各地で働く人々が不快にならないように、食事によく気遣うことが私たちの青年に本当の愛国心を呼び起こすことができるようになるという点に、国防関係者の皆さん、よく気を付けてください。私たちの力にとても重要なのことです。
先ほど外交部長官は、外交部海外公館を韓国経済外交、韓国輸出の拠点基地にする、とおっしゃいました。
このような精神で外交部が仕事をすれば、まさに外交部が韓国政府が志向する経済外交をきちんと履行していくことができると思います。
外交部の海外公館は、外交部の支部というより、韓国の政府の支部です。
そのため、単に自分が外交部所属公務員だとは思わず、海外公館に勤めている人は、韓国政府の代表という、そんな気持ちで、いかなる政府の仕事でも国防に関すること、また輸出産業に関すること、教育、文化と関係することと、どんな部分でも力を尽くしてください。
また、大きな公館ではさまざまな省庁がコラボレーションできるように組織構成になることを願っています。
今さっきおっしゃったとおり、安保、経済通商、保健医療、先端技術、これらが一つのパッケージで動きながらブロック化される傾向が非常に強くなっているため、今はもういわゆる自由貿易体制下のように企業がやるべきことと言われても、企業が自分で走るのは難しい状況です。
政府が輸出相手国政府を相手にしないと、企業は一人で行って作業しにくい。
だから、政府が韓国企業の海外進出、輸出のために政府が積極的な役割を果たしてください。政府だと思うよりも私たちも企業の戦略部署という、そんな気持ちになってください。
これがまさに一体だという意味です。公務員が仕事をするとき、私もその企業の企画部署の職員だという考えを持って、仕事をし助けてくれないか。そう思っています。
私たちの国防についても、私は産業部・中期部の業務報告を受けた時にこんな話をしました。
例えば、アメリカ合衆国太平洋艦隊の空母と航空機が海洋を横切るのを見るとき、私たちはそこに数万の企業を見なければなりません。
それをただ武器だと思うだけではなく、それは巨大な企業です。そこには国防技術を専門的に扱う企業があり、一般的な先端技術を扱う企業もあり、企業が介在しているのです。
F-35、F-22が飛んでいるのは企業があるからです。国防と安全保障ということも私がいつも申し上げます。国家政策をただ公務員がトップダウンで行うとは考えてはならず、民間企業、次に市場をどのように造成し、市場をどう管理していくのか。
政府が政策的に達成しようとする目標にうまく誘導し、引きずっていくかを考えなければなりません。
イ・グァンヒョン総長は本当に最高の人材が国防科学者になるべきだと言われましたが、そうするためには私たちはこの市場をうまく利用しなければなりません。
科学技術市場をうまく活用しなければならず、また民間分野において、ADDと民間防衛産業企業、また他の企業との関係設定が非常に洗練され、市場に対する正確な理解に基づいてなされなければなりません。
国防技術、武器技術というのは特許権の保護を受ける技術ではありません。その国の軍事機密です。特許権を侵害すると訴訟を起こしますが、軍事機密を流出すると刑務所に行くことになります。
しかし、それをあまりにも強く維持していると民間分野の参加を誘導することはできません。だから、こういう部分についても、私たちが市場のメカニズムをうまく活用しながら、私たちが維持しなければならない技術に対するセキュリティーと防衛をよく守り、コラボレーションをうまく行って、法的・制度的なシステムが作られてこそ、最優秀な人材が国防科学分野に身を投じることができます。
私たちが行うという意志を持つことも重要ですが、市場メカニズムを我々がうまく活用しなければならず、国際間でコラボレーション、特に合衆国の防衛産業市場、アメリカの軍事・科学技術との協力は重要です。そのために、その国のシステムをよく学ばなければならないと思います。
ただ私たち同士だけで知恵を出し合うのではなく、世界最高のこのような強力な戦力を生み出すアメリカがどんなシステムを持ってこれを運営するのか。よく見なければなりません。そして、どのような技術に対する保護と防衛分野をどのように管理しているのかをよく研究してください。
そして私は、私たちの3軸体系がもう少し補完されなければならないと思います。3軸システムで一番大切なのは私はKMPR(Korea Massive Punishment& Retaliationの略:引用者注)※だと思います。
※「Korea Massive Punishment& Retaliation」は「大量反撃報復概念」と訳されます。
大量反撃報復能力を備えても、その訓練を怠れば攻撃自体を行うのは難しいです。もちろん、攻撃を行う兆しが確実なときに先制的に撃ち、ミサイルを撃たれたら撃墜することも重要ですが、どんなに洗練された科学技術であっても途中で100%防ぐのは難しいのです。
そのため、KMPRをしっかりと機能させ、まずは挑発心理自体を押さなければならないと思います。北朝鮮の核に対する確固たるKMPRとはなんでしょうか? それは、韓国と合衆国による強力な拡張抑制と合衆国の核資産の運用における共同企画と共同実行、つまり核資産運用における緊密な協力です。
そのような話は、先にド・ゴールがパリを守るためにニューヨークを諦めることができるのか、と言った例があります。当時はロシアではなくソ連の問題でしたが、北核の脅威というのは韓国だけの脅威ではありません。
合衆国が韓国を守ってくれるかどうかの問題ではなく、今や韓国、日本、合衆国にいわゆる「コモン・インタレスト(common interest)」ができました。
これが韓国だけ、例えばNPT体制を守るために韓国君が私たちを信じていれば私たちが守ってあげるといった概念ではなく、北核は合衆国にも脅威となっています。
今や韓国や日本、アメリカは北核に対してみんな同じ脅威を一緒に背負っています。だからこそ、ジョイントプランニング(joint planning)、ジョイントエグゼキューション(joint execution)が可能になるのです。
もちろん、今より問題が深刻になれば、韓国に戦術的核を配置するかどうか、私たち自身が独自の核を保有することもできます。
もしそうなら、長い時間はかからず、私たちの科学技術でも時間が経てば、より早い時期に私たちも持つことができます。
しかし、常に現実的に可能な手段を選択することが重要です。韓国の安全保障を合衆国が守るという概念ではなく、相互の安全保障利益において共通の利害関係が正確に一致すると見ています。そんな次元で議論が進んでいます。
とにかく、核だけでなく、私たちの攻撃用、防御用ミサイル、ミサイル防御も重要ですが、KLMDミサイルは、事実上ミサイルで攻撃するより防御するコストは10倍になります。10倍です。ミサイルの価格も異なり、監視偵察の資産と打撃資産が連動して正確に撃つようにすると、膨大な費用がかかります。
しかし、攻撃するにはそれほど費用はかかりません。だから北朝鮮はコストが少ない攻撃だけに重点を置いています。私たちのようにミサイル防衛システムを備えることは容易ではありません。
その上、私たちも膨大な量の火力が強いミサイルを、実弾の向上を常に行わなければなりません。攻撃されれば100倍、1,000倍撃つことができるKMPR能力をしっかりと構築することが攻撃を防ぐ最も重要な方法だ、と私は考えています。
あそこには核があり韓国にはないと言われるが、挑発に対する自衛権の行使はしっかりと行う、と私は常に立場を明らかにしています。
そして、それに対応するのに、同じ程度のレベルではなく数倍、数十倍のレベルで私たちは対応する。確実なKMPRだけが挑発を抑え、それだけが私たちの正当な自衛権、効果的な自衛権行事になると見ています。
日本も、もう頭の上にIRBMが飛んでいるような状況から防衛費を増額し、いわゆる反撃概念を国防計画に入れていませんか?
それに誰が何と言えますか?
平和憲法を採用する国がなぜそのようなことをできるのかというが、頭の上をミサイル飛び回り、核が来ることかもしれないのに、それを防ぐことは容易ではありません。
だから、米韓間での合衆国の核資産運用に関する協力は、まさに確固たるKMPRという次元で、それだけでなく北核対応というのは核だけに対応するのではなく、私たちがミサイル攻撃の力量を、しっかりした攻撃力量を持っていればミサイルそれだけでなく、核もむやみに撃たれません。
戦争というのは、核というのは全面戦を意味するのに、政治的な、経済的な相当な利益がなければ行わないでしょう。ただ撃つのですか?
韓国防総省と合同参戦で予想される挑発シナリオなどを準備するとき、軍事的にだけ見ないでください。確実に作戦体系を立て、エクササイズを行っていただきますようお願いします。効果的な自衛権行使になると見ています。
2023年新年、頑丈な、一寸の隙もない安全保障と大韓民国の領土を全世界に拡大する、経済領土に拡張する、このようなグローバル中枢外交が、国民に素敵なこととして披露できるよう皆さん一緒に頑張ってください。
ありがとうございます」
⇒参照・引用元:『韓国 第20代大統領室』公式サイト「尹錫悦大統領、外交部・国防部業務報告における統括発言関連書面説明」
というわけで、韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は北朝鮮の核に対して、合衆国の核兵器を「資産」と呼び、これを利用すること、また核兵器の保有について言及しました。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が「日本の反撃能力の保持」について理解を示した――という報道が日本で出ていますが、今回の大統領発言の焦点はそこではなく「韓国の核保有」について明確に示唆したことにあります。
(吉田ハンチング@dcp)